建設業許可の欠格要件とは|前科・執行猶予・罰金と役員の範囲を行政書士が解説

建設業許可の欠格要件とは|前科・執行猶予・罰金と役員の範囲を行政書士が解説

建設業許可の欠格要件(建設業法第8条)は14項目。拘禁刑以上は罪名を問わず5年、罰金は対象法令が限定列挙、執行猶予は満了で解消、破産は復権すれば該当しません。役員等・令3条使用人・株主のどこまでが審査対象かも特定行政書士が解説します。

建設業許可の欠格要件とは|前科・執行猶予・罰金と役員の範囲を行政書士が解説

「昔、役員が罰金を払ったことがある」「代表が破産している」「執行猶予中の人間を取締役に入れたい」——建設業許可の相談で、切り出しにくそうに打ち明けられるのがこの手の話です。
結論から言うと、心配されている事情の多くは、条文を当てはめると欠格要件に当たりません。逆に、まったく心配されていなかった事情が引っかかることもあります。欠格要件(建設業法第8条)は「悪いことをした人はダメ」という漠然としたルールではなく、罪名・刑の種類・起算日・対象者の範囲が細かく限定された14項目のリストだからです。
このページでは、14項目を一覧で整理したうえで、実務で判断が分かれる「前科」「執行猶予」「罰金」「破産」「役員等の範囲」「株主」を条文にそって切り分けます。あわせて、許可を取った後に該当してしまった場合の2週間ルールと、東京都で提出を求められる確認書類も解説します。

この記事の結論



  • 欠格要件は建設業法第8条の14項目+申請書類の虚偽記載です。ひとつでも当たれば、他の要件をすべて満たしていても許可をしてはならないとされています。

  • 拘禁刑(旧・懲役/禁錮)以上の刑は、罪名を問わず、執行を終えた日等から5年間が欠格です。

  • 罰金の刑は、対象となる法令が限定列挙されています。建設業法、建築基準法など政令で定める7法令、暴力団対策法、刑法の傷害・暴行・脅迫・背任など。道路交通法違反や税法違反の罰金は、この列挙に入っていません。

  • 執行猶予は、猶予期間が無事に満了した時点で刑の言渡しが効力を失い(刑法第27条)、欠格要件は解消します。満了からさらに5年待つ必要はありません。

  • 破産は「復権を得ない者」だけが欠格です。免責許可決定の確定などで復権していれば該当しません。「破産したら5年間は許可が取れない」というのは誤解です。

  • 審査対象は法人本体・役員等・令3条使用人(+未成年者の法定代理人)。5%以上の株主は、株主というだけでは欠格要件の対象になりませんが、実質的な支配力があると認められれば「役員等」として対象になります。

  • 更新のときは審査範囲が狭くなります。第8条の柱書により、更新申請では第1号と第7号から第14号までだけが見られます。

  • 許可取得後に該当したら、2週間以内の届出義務(法第11条第5項)があり、許可は取り消されます(法第29条第1項第2号)。




建設業許可の欠格要件とは|「許可をしてはならない」というルール


建設業許可の要件は、大きく2つの性格に分かれます。




性格

内容

条文

備えているべき積極要件

経営体制、営業所技術者、誠実性、財産的基礎

建設業法第7条・第15条

当たってはいけない消極要件

欠格要件(14項目)、申請書類の虚偽記載

建設業法第8条

第7条は「次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない」、第8条は「次の各号のいずれかに該当するとき……は、許可をしてはならない」と規定します。どちらも行政庁に裁量の余地がない書き方であり、事情を汲んで通してもらう、という性質のものではありません。
要件の全体像は建設業許可申請の条件と要件、6要件の一覧は建設業許可の6要件で解説しています。ここでは第8条だけを深掘りします。

「誠実性」とは別の要件です

混同されやすいのですが、誠実性(法第7条第3号)と欠格要件(法第8条)は別の要件です。

  • 誠実性:法人・役員等・令3条使用人が「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」。将来に向けた評価を含む、やや幅のある基準です。
  • 欠格要件:過去の刑罰・処分・状態を、期間を区切って機械的に判定するリストです。

宅地建物取引業の免許取消しを受けて5年を経過しない者などは、誠実性の側で問題になります。一方、傷害罪の罰金は欠格要件の側で問題になります。どちらか一方をクリアしても意味がなく、両方が必要です。

申請時には「誓約書」で自己申告します

申請の際は、法人・役員等・令3条使用人などが第8条各号に該当しないことを誓約する書面(様式第6号)を添付します(法第6条第1項第4号)。行政庁が全員の犯罪歴を照会するわけではなく、入口は自己申告です。
だからこそ、ここで事実と異なる記載をした場合の跳ね返りが大きくなります。

  • 許可申請書・添付書類に虚偽の記載をして提出:6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(法第50条第1項第1号)
  • 虚偽又は不正の事実に基づいて許可・更新を受けた:3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(法第47条第1項第5号)
  • 不正の手段により許可を受けた場合:許可の取消し(法第29条第1項第7号)→ その取消しから5年間の欠格(法第8条第2号)+ 役員等への5年間の営業禁止(法第29条の4第2項)

つまり、隠して通した場合の代償は、正直に申告して数年待つことより、はるかに重くなります。判断に迷う事情があるときこそ、当てはめを先にすべきです。

欠格要件の14項目一覧【建設業法第8条】

第8条の各号を、実務での意味づけとあわせて整理します。更新時に見られるかの列は、第8条柱書の「許可の更新を受けようとする者にあつては、第一号又は第七号から第十四号までのいずれか」という限定によるものです。

内容 期間 更新時
1号 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 復権まで
2号 不正手段による許可取得等(第29条第1項第7号・第8号)で許可を取り消された者 取消しの日から5年
3号 取消処分の聴聞通知後、処分までの間に廃業届を出した者 届出の日から5年
4号 3号の届出に係る法人の役員等・令3条使用人で、聴聞通知の日前60日以内に在任していた者 届出の日から5年
5号 営業停止を命ぜられ、停止期間が経過しない者 停止期間中
6号 営業を禁止され、禁止期間が経過しない者 禁止期間中
7号 拘禁刑以上の刑に処せられ、執行終了等から5年を経過しない者 5年
8号 建設業法・政令で定める法令・暴力団対策法違反、刑法の一定の罪等により罰金の刑に処せられ、執行終了等から5年を経過しない者 5年
9号 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(暴力団員等) 5年
10号 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの 状態が続く間
11号 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、法定代理人が各号に該当するもの
12号 法人で、その役員等・令3条使用人のうちに1号〜4号・6号〜10号に該当する者があるもの
13号 個人で、その令3条使用人のうちに1号〜4号・6号〜10号に該当する者があるもの
14号 暴力団員等がその事業活動を支配する者

これに加えて、柱書で**「許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているとき」**も許可してはならないとされています。
なお、これらは特定建設業の許可にも準用されます(法第17条)。

更新のときは審査範囲が狭まります

見落とされがちですが、新規申請と更新申請では、当てはめる号が違います

  • 新規・業種追加・般特新規など:第1号から第14号まですべて
  • 更新第1号と第7号から第14号まで

更新で外れるのは、2号〜5号(許可取消しによる5年、聴聞通知後の廃業による5年、営業停止期間中)です。ただし、これらに当たる状況では、そもそも許可自体が取り消されているか、停止処分を受けている状態です。「更新なら甘い」という趣旨ではないことに注意してください。
更新手続そのものは更新30日前を過ぎたときの緊急対応で解説しています。

誰がチェックされるのか|役員等・令3条使用人・株主の範囲

「社長は問題ないが、非常勤の取締役が」「本社の役員は大丈夫だが、営業所長が」——対象者の範囲を取り違えると、当てはめそのものが無意味になります

法人の場合

第8条第12号により、次の者が対象です。

区分 具体的に誰か 根拠
法人本体 会社そのもの(1号〜10号のうち法人に当たり得るもの) 法第8条柱書
役員等 業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者。相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対しこれらと同等以上の支配力を有すると認められる者を含む 法第5条第3号
令3条使用人 支配人、および支店・営業所の代表者(支配人である者を除く) 建設業法施行令第3条

押さえるべきポイントは3つです。

  • 常勤・非常勤を問いません。 名前だけ入れている非常勤取締役も、登記されていれば役員等です。
  • 監査役・会計参与は「役員等」に含まれません。 業務執行にあたらないためです(ただし東京都をはじめ、申請時に別途の資料提出を求める運用があるため、手引の該当箇所を確認してください)。
  • 肩書は関係ありません。 「相談役」「顧問」「会長」といった名称でも、取締役と同等以上の支配力を有すると認められれば役員等として扱われます。登記されていないから対象外、とは言えません。

営業所ごとに置く責任者の位置づけは建設業許可の営業所要件で整理しています。

個人事業主の場合

第8条第13号により、本人と令3条使用人が対象です。個人事業主に「役員等」はいませんので、実質的に本人と支店長クラスに絞られます。個人事業主の許可全般は建設業許可は個人事業主でも取れるかを参照してください。

株主は欠格要件の対象になるか

サジェストにも上がる論点ですが、「5%以上の株主」であることだけを理由に欠格要件の対象になることはありません
建設業法施行規則第4条第1項第7号は、法人の申請時に総株主の議決権の100分の5以上を有する株主、または出資総額の100分の5以上に相当する出資をしている者について、氏名・住所・株式数等を記載した書面(様式第14号「株主(出資者)調書」)の提出を求めています。これは株主構成を把握するための書類であり、株主本人の前科等を審査するものではありません。
ただし、次の2つの経路で株主が問題になることはあります。

  • 役員等に該当する場合:大株主が「相談役」「オーナー」などの立場で、取締役と同等以上の支配力を有すると認められるときは、名称にかかわらず役員等として審査対象になります。
  • 第14号に該当する場合:暴力団員等がその事業活動を支配していると認められる場合は、法人そのものが欠格となります。

なお、5%以上の株主に変更があったときは30日以内の変更届が必要です。届出の期限は建設業許可の変更届出書にまとめています。

前科がある場合|「拘禁刑以上」と「罰金」で扱いが違う

もっとも相談の多い論点です。ここは刑の種類によって結論が正反対になります

拘禁刑以上の刑|罪名を問わず5年

第7号は「拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者」と定めます。

  • 拘禁刑以上とは、死刑・拘禁刑を指します。
  • 罪名の限定がありません。 建設業と無関係な犯罪であっても該当します。
  • 起算日は「刑の執行を終わった日」(=刑期の満了日)または「執行を受けることがなくなった日」(=時効の完成、恩赦など)です。判決の確定日ではありません。

なお、令和7年6月1日施行の刑法改正(令和4年法律第67号)により、懲役と禁錮は廃止され「拘禁刑」に一本化されました。それ以前に言い渡された懲役・禁錮も、実務上は同様に扱われます。

罰金の刑|対象法令が限定列挙されています

第8号は罰金について定めますが、すべての罰金が対象ではありません。次のいずれかに違反・該当したことによる罰金だけが、5年の欠格事由になります。

区分 具体的な法令・罪名
建設業法 建設業法違反
政令で定める法令
(施行令第3条の2)
建築基準法(違反建築物の是正命令違反等)/宅地造成及び特定盛土等規制法(知事の命令違反)/都市計画法(第81条第1項の命令違反)/景観法(市町村長の命令違反)/労働基準法(第5条の強制労働、第6条の中間搾取)/職業安定法(第44条の労働者供給事業の禁止)/労働者派遣法(第4条第1項の禁止業務への派遣)
暴力団対策法 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定違反(一部除外あり)
刑法の一定の罪 第204条(傷害)/第206条(現場助勢)/第208条(暴行)/第208条の2(凶器準備集合及び結集)/第222条(脅迫)/第247条(背任)
暴力行為等処罰に関する法律 同法の罪

この列挙に入っていない法令の罰金は、欠格要件に該当しません。 実務上よく問題になるのが次のケースです。

  • 道路交通法違反の罰金(速度超過、酒気帯び運転など):列挙外のため該当しません。ただし、危険運転致死傷罪などで拘禁刑以上に処せられた場合は、第7号で該当します。
  • 税法違反の罰金:列挙外のため該当しません。ただし、納税証明書の提出が必要なため、未納があると別の問題になります。
  • 労働安全衛生法違反の罰金:施行令第3条の2の列挙には含まれていません。もっとも、労働基準法第5条・第6条は含まれるため、労働関係の罰金はどの条文に基づくものかを個別に確認する必要があります
  • 傷害・暴行の罰金該当します。喧嘩による略式命令の罰金でも、納付日から5年を経過するまで欠格です。

起算日は、罰金の場合「その刑の執行を終わり」=罰金を納付した日です。略式命令で罰金を納めたケースでは、納付日から5年と考えます。

執行猶予がついている場合

執行猶予期間中は欠格要件に該当します。 刑の執行を終わっておらず、執行を受けることがなくなった日にも至っていないためです。
一方、猶予期間が取り消されることなく満了すれば、刑の言渡しは効力を失います(刑法第27条)。刑の言渡しそのものがなかったことになるため、満了した時点で欠格要件は解消し、そこからさらに5年を待つ必要はありません

状態 欠格要件
判決確定〜猶予期間中 該当する
猶予期間が満了した後 該当しない(満了日から取得可能)
猶予を取り消され、刑が執行された 執行終了日から5年

実刑と執行猶予で「解消までの期間」が大きく変わるのは、この違いによるものです。

逮捕・不起訴・起訴猶予の扱い

第7号・第8号はいずれも「刑に処せられ」を要件としています。したがって、

  • 逮捕されただけ(起訴前):該当しません
  • 不起訴・起訴猶予該当しません
  • 裁判中(判決確定前)該当しません(確定していないため)

該当しない以上、誓約書に反する記載にもなりません。ただし、判決の確定が申請の前後にまたがりそうな場合は、確定のタイミングによって結論が変わるため、申請時期の調整が必要です。
無許可営業の罰則そのものは建設業許可がないとどうなるかで整理しています。

許可の取消しに伴う5年|駆け込み廃業も封じられています

第2号から第4号は、過去に建設業許可の取消処分を受けた側の話です。ここは条文の作りが入り組んでいるため、順を追って整理します。

5年欠格になる取消しは2つだけ

許可の取消事由は第29条第1項に第1号から第8号まで並んでいますが、第8条第2号が拾っているのは第7号と第8号だけです。

取消事由 内容 5年欠格
第29条第1項第7号 不正の手段により許可・更新・承継認可を受けた場合 なる
第29条第1項第8号 指示処分の対象事由に該当し情状特に重い場合、または営業停止処分に違反した場合 なる
第29条第1項第1号 経営体制・営業所技術者の基準を満たさなくなった場合 ならない
第29条第1項第5号 廃業等の届出があった場合 ならない

つまり、経管や営業所技術者が不在になって許可が取り消されたケースは、5年の欠格になりません。要件を整えれば、あらためて新規申請ができます。営業所技術者が抜けた場合の対応は営業所技術者(専技)が退職したらどうするかを参照してください。

聴聞の通知後に廃業しても逃げられません

第3号は、取消処分の聴聞通知(行政手続法第15条)があった日から、処分の日または処分をしない決定の日までの間に廃業届(法第12条第5号)を出した者について、届出の日から5年間の欠格を定めています。
「取り消される前に自分から廃業すれば、取消しの記録は残らない」という発想を封じる規定です。
さらに第4号は、その廃業届に係る法人の役員等・令3条使用人であった者にも5年の欠格を及ぼします。しかも対象は「聴聞通知の日前60日以内に在任していた者」まで遡ります。通知が来てから役員を退任させても、60日の網にかかります。

役員個人にも5年の営業禁止がかかります

第29条の4第2項は、第29条第1項第7号・第8号による取消しの場合、法人の役員等および相当の責任を有する令3条使用人に対して、5年間、新たに営業を開始することを禁止しなければならないと定めています。
この営業禁止を受けている間は、第8条第6号により欠格です。別会社を作って許可を取り直す、という迂回もできません。
事業承継・合併の場面での許可の扱いは建設業の合併で許可はどうなるかで解説しています。

破産・心身の故障・暴力団関係

破産|「復権を得ない者」だけが欠格です

第1号は「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」です。破産したこと自体ではなく、復権していない状態が欠格事由です。
個人の破産では、免責許可の決定が確定した時点で復権します(破産法第255条)。多くのケースでは、破産手続の終了とともに復権していますので、申請時点で復権していれば、破産歴があっても許可は取得できます。「破産から5年」という期間の定めは、この号にはありません。
なお、法人が破産手続開始の決定により解散した場合は、破産管財人による廃業届が必要です(法第12条第3号)。

心身の故障|令和元年に基準が変わりました

第10号は「心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの」です。建設業法施行規則第8条の2は、これを「精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」と定義しています。
かつては「成年被後見人・被保佐人」であること自体が一律に欠格事由とされていましたが、成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年9月14日施行)により、この一律の欠格条項は削除され、個別の状態で判断する現在の規定に置き換えられました
したがって、後見・保佐が開始されているというだけでは、直ちに欠格とはなりません。実務上は、医師の診断書等により個別に判断されます。

暴力団関係|9号と14号

  • 第9号:暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(あわせて「暴力団員等」と定義されます)。
  • 第14号暴力団員等がその事業活動を支配する者。役員に入っていなくても、実質的に支配していると認められれば法人そのものが欠格です。

これらは各都道府県の暴力団排除条例とも連動し、許可行政庁から警察へ照会が行われる運用になっています。

許可を取った後に該当したら|2週間以内の届出義務

欠格要件は、申請時だけの話ではありません。許可を受けた後に該当するに至った場合、届出義務と取消しがセットで発生します。

場面 義務・効果 条文
第8条第1号または第7号〜第14号に該当するに至ったとき 2週間以内に書面で届け出なければならない 法第11条第5項
届出をしなかったとき 6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 法第50条第1項第3号
第8条第1号または第7号〜第14号に該当するに至った場合 許可を取り消さなければならない 法第29条第1項第2号

2週間は、変更届の期限のなかでも最も短い部類です。実務でとくに注意したいのは次の場面です。

  • 役員が刑事事件で有罪判決を受け、確定した:本人が会社に報告しないまま時間が経過するケースが典型です。
  • 役員個人が自己破産した:会社の経営とは無関係の個人的な事情でも、復権するまでは第1号に該当します。
  • 新任役員に該当者がいた:役員就任は30日以内の変更届の対象ですが、その新任者が欠格要件に当たる場合、会社全体が第12号により欠格となります。

3つ目が実務上もっとも危険です。役員を1人増やしただけで、会社の許可そのものが取り消されます。 役員候補が決まった段階で、就任前に確認してください。役員変更の届出書類は建設業許可の変更届出書に一覧化しています。

該当してしまった場合の実務対応

該当が判明した場合、選択肢は限られます。

  1. 該当者に退任してもらう:法人の欠格(第12号)は「役員等のうちに該当する者があるもの」という構成です。該当者が役員でなくなれば、法人の欠格事由も解消します。取消処分がされる前に退任と変更届が完了していれば、許可を維持できる可能性があります。
  2. 速やかに届け出る:届出を怠ること自体が罰則の対象です。隠していても、更新時や他の届出、警察・行政庁間の照会で判明します。
  3. 廃業届と再取得の見通しを立てる:どうしても解消できない場合は、取消処分を待つより、要件を整え直したうえでの再申請を検討します。

いずれも時間との勝負になります。判断に迷う段階で相談してください。

東京都で申請するときの確認書類

東京都知事許可の申請では、欠格要件に関して次の書類を求められます(令和7年度版の手引による。申請時点の最新版で必ず確認してください)。

書類 対象者 取得先・費用の目安
誓約書(様式第6号) 申請者・役員等・令3条使用人ほか 申請者が作成
許可申請者の住所、生年月日等に関する調書(様式第12号) 法人の役員等/個人の本人 申請者が作成
令3条使用人の住所、生年月日等に関する調書(様式第13号) 令3条使用人 申請者が作成
身分証明書 役員等・令3条使用人 本籍地の市区町村。手数料は自治体により異なります
登記されていないことの証明書 役員等・令3条使用人 法務局・地方法務局の本局(支局・出張所では取り扱いなし)。1通300円(収入印紙)。郵送請求は東京法務局後見登録課のみ
株主(出資者)調書(様式第14号) 5%以上の株主・出資者 申請者が作成

「身分証明書」は運転免許証のことではありません

建設業許可でいう身分証明書とは、本籍地の市区町村長が発行する公的な証明書です。運転免許証やマイナンバーカードのことではありません。
建設業法施行規則第4条第1項第5号は、この書類を「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村の長の証明書」と規定しています。実際の証明書には、あわせて後見登記等の通知を受けていない旨、禁治産・準禁治産の宣告の通知を受けていない旨が記載されるのが一般的です。
本籍地でしか取得できない点が実務上のボトルネックです。役員が地方出身で本籍地が遠い場合、郵送請求で1〜2週間かかることがあります。役員が複数いる会社では、ここが申請全体の律速になります。

「登記されていないことの証明書」は法務局の本局へ

成年後見等の登記がされていないことを証明する書類で、法務局・地方法務局の本局の戸籍課で取得します。支局・出張所では取り扱っていません。手数料は1通300円で、収入印紙により納付します。郵送での請求は東京法務局後見登録課のみが受け付けています。
東京都内の会社であれば、九段下の東京法務局本局で当日取得できるため、身分証明書ほど時間はかかりません。
東京都での申請の流れ全体は東京都の建設業許可申請ガイド、必要書類の洗い出しは必要書類チェックリストをご利用ください。

よくある質問

Q. 建設業許可の欠格要件とは何ですか?

  1. 建設業法第8条が定める、これに該当すると許可をしてはならないとされる14項目の事由です。破産して復権を得ない者、拘禁刑以上の刑に処せられて5年を経過しない者、一定の法令違反による罰金から5年を経過しない者、暴力団員等などが列挙されています。ひとつでも該当すれば、経営体制や技術者などの他の要件をすべて満たしていても許可を受けられません。申請書類に重要な事項の虚偽記載がある場合も同様です。

Q. 前科があると建設業許可は取れませんか?

  1. 刑の種類によります。拘禁刑(旧・懲役/禁錮)以上の刑は罪名を問わず、執行を終えた日等から5年間は欠格です。罰金の刑は対象となる法令が限定されており、建設業法、建築基準法など政令で定める7法令、暴力団対策法、刑法の傷害・現場助勢・暴行・凶器準備集合・脅迫・背任、暴力行為等処罰法によるものだけが該当します。道路交通法違反や税法違反の罰金は列挙に含まれていないため、欠格要件には当たりません。

Q. 執行猶予中でも建設業許可は取れますか?

  1. 執行猶予期間中は、刑の執行を終わっていないため欠格要件に該当し、許可を受けられません。ただし、猶予を取り消されることなく猶予期間が満了すれば、刑法第27条により刑の言渡しは効力を失います。この時点で欠格要件は解消し、そこからさらに5年を待つ必要はありません。

Q. 建設業許可の欠格要件は役員のどこまでが対象ですか?

  1. 法人の場合、業務を執行する社員、取締役、執行役およびこれらに準ずる者が対象です。常勤・非常勤は問いません。さらに、相談役・顧問その他の名称を問わず、取締役等と同等以上の支配力を有すると認められる者も「役員等」として含まれます。加えて、支配人と支店・営業所の代表者(令3条使用人)も対象です。監査役は業務執行にあたらないため役員等には含まれません。

Q. 建設業許可の欠格要件に株主は含まれますか?

  1. 5%以上の株主であることだけを理由に欠格要件の対象になることはありません。株主(出資者)調書(様式第14号)は株主構成を把握するための書類です。ただし、大株主が相談役やオーナーとして取締役と同等以上の支配力を有すると認められる場合は「役員等」として審査対象になり、暴力団員等が事業活動を支配している場合は法人そのものが欠格となります。

Q. 罰金を払ったことがありますが、建設業許可の欠格要件に当たりますか?

  1. どの法令に基づく罰金かで決まります。建設業法、建設工事の施工や労働者の使用に関する政令で定める法令、暴力団対策法の違反によるもの、刑法の傷害・現場助勢・暴行・凶器準備集合・脅迫・背任の罪、暴力行為等処罰法の罪によるものは、罰金を納付した日から5年間欠格です。それ以外の法令による罰金は該当しません。略式命令による罰金も、対象法令であれば同じ扱いです。

Q. 自己破産していると建設業許可は取れませんか?

  1. 欠格事由は「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」であり、破産したこと自体ではありません。免責許可の決定が確定するなどして復権していれば、破産歴があっても許可を取得できます。破産から5年を待つ必要はありません。

Q. 逮捕されただけでも建設業許可の欠格要件になりますか?

  1. なりません。欠格事由は「刑に処せられ」たことを要件としているため、逮捕されただけの段階、不起訴・起訴猶予となった場合、裁判が確定していない段階では該当しません。ただし判決が確定すると、刑の種類に応じて第7号または第8号の判定に入ります。

Q. 許可を取った後に役員が欠格要件に該当したらどうなりますか?

  1. 建設業法第11条第5項により、該当するに至ったときから2週間以内に届け出る義務があります。届出を怠ると6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象です。また、法人の役員等に該当者がいる状態は法第8条第12号に当たり、許可は取り消されます。取消処分の前に該当者が役員を退任し変更届を提出すれば、許可を維持できる可能性があります。

該当するかどうか、条文に当てはめて確認します

欠格要件の相談で多いのは、「たぶん大丈夫だと思うが、確信が持てない」という状態のまま、申請そのものを何年も先送りしてしまっているケースです。実際に事情を伺うと、列挙外の罰金だった、猶予期間はすでに満了していた、復権していた——つまり最初から申請できた、ということが少なくありません。
逆に、まったく心配されていなかった新任役員の事情が第12号に当たり、会社全体の許可が危うくなっていたというケースもあります。欠格要件は、心配の大きさと実際のリスクが一致しない要件です。
当事務所では、役員等・令3条使用人の範囲の確定から、刑の種類と起算日の当てはめ、身分証明書・登記されていないことの証明書の取得代行まで一貫して対応します。まずは無料の建設業許可・要件チェックで全体の状況を確認し、具体的な事情がある方は相談・見積依頼フォームからお問い合わせください。個別の事情は外部に出しませんので、そのままお伝えいただいて差し支えありません。
新規取得をお考えの方は新規許可申請サービス、役員変更の届出が必要な方は各種変更届サービスもあわせてご覧ください。


参考にした一次資料

  • e-Gov法令検索「建設業法」(第5条第3号、第6条第1項第4号、第7条第3号、第8条各号、第11条第5項、第12条、第17条、第28条、第29条第1項、第29条の4、第47条、第50条)
  • e-Gov法令検索「建設業法施行令」(第3条=政令で定める使用人、第3条の2=法第8条第8号の法令の規定)
  • e-Gov法令検索「建設業法施行規則」(第4条第1項第3号・第5号・第7号、第8条の2)
  • e-Gov法令検索「刑法」(第27条=刑の全部の執行猶予の効力)
  • 法務省「拘禁刑創設の趣旨」(懲役・禁錮を廃止し拘禁刑を創設。令和7年6月1日施行)
  • 東京法務局「登記されていないことの証明申請について」(請求窓口・手数料300円・郵送請求先)
  • 東京都都市整備局「建設業許可申請の手引(令和7年度版)」(誓約書・調書・身分証明書・登記されていないことの証明書の提出範囲)

本記事は、建設業法(令和7年12月12日施行版)、建設業法施行令・施行規則の現行版、および東京都「建設業許可申請の手引(令和7年度版)」を2026年8月12日時点で確認して作成しています。個別の刑事事件の処分内容や、欠格要件への当てはめの最終判断は許可行政庁が行います。証明書の手数料・取扱窓口も変更されることがあるため、手続を行う際は、その時点の最新の一次資料および許可行政庁の案内をご確認ください。本記事は一般的な解説であり、個別事案についての法的助言ではありません。

更新履歴

  • 2026年8月12日:公開。建設業法第8条各号、施行令第3条・第3条の2、施行規則第4条・第8条の2を確認し、更新申請時の審査範囲の限定(第8条柱書)、罰金の対象法令の限定列挙、執行猶予満了による解消(刑法第27条)、法第11条第5項の2週間届出義務を反映。令和7年6月1日施行の拘禁刑創設を反映。

著者・監修

特定行政書士 萩本昌史(行政書士萩本昌史事務所/東京都世田谷区)
東京都の建設業許可について、新規申請・業種追加・更新・各種変更届・決算変更届・経営事項審査・入札参加資格申請を支援しています。欠格要件のように「申請できるかどうか」で止まってしまう論点は、条文への当てはめを先に行い、取得できる時期まで含めて見通しをお示ししています。
プロフィール:https://kensetsu-kyoka.tokyo.jp/profile/masashi-hagimoto/