--> 経営業務の管理責任者の要件|常勤性の証明方法を行政書士が解説
経営業務の管理責任者の要件|常勤性の証明方法を行政書士が解説

経営業務の管理責任者の要件|常勤性の証明方法を行政書士が解説

経営業務の管理責任者の要件|常勤性の証明方法を行政書士が解説


/ 著者: 萩本昌史(特定行政書士)

建設業許可の取得で多くの事業者がつまずくのが、経営業務の管理責任者(通称「経管」)の要件と、その常勤性の証明です。「経管予定者の経験年数は足りているはずなのに、書類が揃わない」「他社の役員を兼ねていても大丈夫か」といった相談は、当事務所でも非常に多くいただきます。


この記事では、令和2年・令和6年の建設業法改正を反映した最新の経管要件と、東京都を中心とした実務での常勤性の証明方法を、行政書士の視点でわかりやすく整理します。許可申請の準備を始める前に、ぜひご一読ください。


経営業務の管理責任者(経管)とは何か


経営業務の管理責任者とは、建設業の経営について一定期間以上の経験を持ち、申請者(法人または個人)の業務全般を管理する立場にある人のことをいいます。建設業法第7条第1号および建設業法施行規則第7条で定められた、建設業許可の人的要件の根幹をなす存在です。



なぜ経管が必要なのか


建設工事は契約金額が大きく、工期も長期にわたるため、発注者保護の観点から「経営をきちんと回せる人がトップにいること」が許可制度の前提とされています。資金繰りが破綻して工事が途中で止まれば、発注者にも下請業者にも甚大な被害が及ぶからです。


このため、建設業許可を取得しようとする事業者には、建設業の経営に関する専門的な経験を有する者を必ず配置することが求められています。



専任技術者との違い


建設業許可では、経管とは別に「営業所技術者(旧:専任技術者)」の配置も必須です。両者の役割は以下のように分かれています。


役職 求められる能力 根拠条文
経営業務の管理責任者 建設業の経営に関する経験

建設業法第7条第1号
同法施行規則第7条

営業所技術者
(旧:専任技術者)

請け負う工事の技術に関する資格・経験 建設業法第7条第2号


令和6年12月13日施行の建設業法改正で、従来の「専任技術者」は「営業所技術者」に名称変更されました。改正後の用語に統一しておくと、申請書類上のミスを防げます。


経管の要件|建設業法施行規則第7条第1号


経管の要件は、令和2年10月の建設業法改正で大きく見直され、「個人で要件を満たす方式」と「チームで要件を満たす方式」の2系統が用意されました。



イ:個人で要件を満たす方式


建設業法施行規則第7条第1号イは、申請者の常勤役員等のうち1人が、次のいずれかに該当することを求めています。




  1. 建設業に関し、5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
  2. 建設業に関し、5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって、経営業務の管理責任者を補佐する業務(経営業務の補佐業務)に従事した経験を有する者
  3. 建設業に関し、6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって、経営業務を執行する権限の委任を受け、その業務を執行した経験を有する者


もっとも実務で多用されるのは①の「5年以上の経管経験」です。たとえば「他社で5年以上、建設業を営む法人の取締役として経営に携わってきた方」が、新たに自社の取締役に就任して経管となるパターンが典型例といえます。



ロ:チーム体制で要件を満たす方式


建設業法施行規則第7条第1号ロは、令和2年改正で新設された規定で、常勤役員等の1人と、それを直接補佐する者の組み合わせで要件を満たす方式です。具体的には、次の(1)(2)の組み合わせが必要となります。


区分 要件
常勤役員等 建設業の財務管理・労務管理・運営業務のいずれかに、5年以上の役員等としての経験を含む、2年以上の役員等の経験を有する者

直接補佐する者
(3名まで分担可)

申請者の元で、財務管理・労務管理・運営業務のそれぞれにおいて5年以上の経験を有する者(1人が複数業務を兼ねることも可)


「個人で5年の経管経験はないが、複数人の経験を合わせれば賄える」ケースでは、ロの方式が突破口になります。ただし補佐者の経験は「申請者である会社内」でのものに限られる点に注意が必要です。他社での財務管理経験などは原則としてカウントできません。


経管に求められる「経験」の中身


経管要件で繰り返し登場する「経営業務の管理責任者としての経験」とは、具体的にどのような立場での経験を指すのでしょうか。



該当する立場


「経営業務の管理責任者としての経験」とは、営業取引上、対外的に責任を有する地位にあって、経営業務を総合的に管理した経験を意味します。具体的には次のような立場が該当します。


  • 法人の役員:取締役、執行役、業務を執行する社員(合同会社等)など
  • 個人事業主本人:建設業を営む個人事業主としての確定申告実績がある方
  • 個人事業主の支配人:商業登記された支配人

該当しない立場


一方、次の立場での経験は原則として経管経験としてカウントされません。


  • 監査役、会計参与、執行役員(業務執行取締役ではない者)
  • 非常勤役員(東京都など多くの行政庁では、非常勤期間は経管経験から除外されます)
  • 従業員としての経験(部長・支店長など、肩書が付いていても)


「執行役員」は要注意ワードです。会社法上の「執行役」と異なり、執行役員は単なる社内呼称のため、登記もされず経管経験としては認められません。経管予定者の登記事項証明書に、必ず「取締役」「代表取締役」等の役員として登記されていることを確認してください。


「建設業に関し」とは


経管経験は「建設業」に関するものでなければなりません。建設業に該当しない事業(不動産仲介、設計のみの業務、製造業など)の経営経験は、原則としてカウントされません。


ただし、令和2年改正以降は「業種を問わず建設業の経営経験」として扱われるようになり、申請する業種と異なる建設業種の経営経験でも要件を満たせるようになりました。たとえば内装工事業の経管経験で、新たに塗装工事業の許可申請の経管になることも可能です。


経験年数を証明する書類


経管の経験年数は、申請者の自己申告だけでは認められません。客観的な裏付け資料を組み合わせて、行政庁の審査担当者に「確かに5年(または6年)以上の経験があった」と認定してもらう必要があります。



立場(地位)の証明


経験者の立場 立場の証明書類
法人役員 履歴事項全部証明書(5年または6年以上前に役員に就任していたことが分かるもの)/閉鎖事項全部証明書(古い期間を証明する場合)
個人事業主 確定申告書(B様式)の控え(税務署の収受印または電子申告の受信通知付き)×経験年数分
支配人 商業登記簿謄本(支配人登記)



建設業を営んでいた事実の証明


役員や個人事業主であったことが立証できても、その期間中に建設業を営んでいたという事実を別途裏付ける必要があります。次の資料を経験年数分(毎年1件以上)用意するのが基本です。


  • 建設業許可を取得していた期間:許可通知書または許可証明書(これだけで両方を一括で証明可能)
  • 無許可期間:以下のいずれかの資料を年ごとに揃える
    • 工事請負契約書
    • 注文書および請書(双方の対応関係が分かるもの)
    • 請求書および入金が確認できる通帳の写し
    • 工事代金の領収証


東京都では、無許可期間の経験を証明する場合、原則として「契約書」または「注文書+請書」の組み合わせが望ましいとされています。請求書のみでは「実際に工事をしたのか」が確認しにくいため、必ず通帳の入金記録とセットで提示してください。


過去の勤務先の協力が必須


経管経験を他社(前職)で積んだ方の場合、前職の会社から原本の貸出や写しの提供を受ける必要があります。退職時に揉めて関係が悪化しているケースでは、書類の入手自体が大きな壁となります。


常勤性の証明|もっとも厳しく審査されるポイント


経管要件の中で、経験年数の証明と並んで(あるいはそれ以上に)厳しく見られるのが「常勤性」です。「経管がいるはずなのに、実態は名義貸し」という許可業者を排除するため、各行政庁が独自に審査基準を強化しています。



常勤とは何か


建設業許可における「常勤」とは、原則として休日その他勤務を要しない日を除き、一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その営業所において職務に従事することをいいます。要するに「その営業所に毎日通って、その会社の仕事だけをしている」状態が求められます。



常勤性の証明書類(東京都の例)


東京都の手引きでは、経管・営業所技術者ともに、原則として次のいずれかの書類で常勤性を証明することとされています。


区分 必要書類
健康保険被保険者である場合

健康保険被保険者証の写し(事業所名と本人氏名が記載されているもの)
※協会けんぽの場合は「健康保険・厚生年金保険資格取得確認及び標準報酬決定通知書」の写しもあわせて提出

後期高齢者医療の被保険者(75歳以上)など

住民税特別徴収税額通知書(特別徴収義務者用)の写し
または賃金台帳・出勤簿の写し

国民健康保険・国民年金加入者(個人事業主等) 確定申告書(B様式)+住民票+営業所までの通勤経路を示す資料 など



住所地と営業所の距離


常勤性の審査では、住所地から営業所までの通勤可能性もチェックされます。一般的な目安は次のとおりです。


  • 片道概ね2時間以内:問題なく常勤と認められる
  • 片道2時間超:単身赴任、新幹線通勤など個別事情の疎明が必要
  • 遠隔地(同一都道府県外で通勤困難):原則として常勤と認められない


住民票と実際の住所が異なる場合は要注意です。経管予定者の住民票上の住所が遠隔地にあると、それだけで補正指導の対象となります。営業所の近くに引っ越したのに住民票を移していないケースでは、必ず住民票の異動を済ませてから申請しましょう。

他社との兼任は原則NG

常勤性の概念から、経管予定者が他社の常勤役員や常勤従業員を兼ねている場合は、原則として常勤と認められません。具体的には次のような状況がNGです。


  • A社の代表取締役として常勤しながら、B社の経管にもなる
  • 他社の従業員として給与を受け取りながら、別会社の経管になる
  • 他社の社会保険に加入しながら、別会社の経管になる


ただし、他社の非常勤役員(実態として勤務していない監査役など)を兼ねるだけであれば、所轄行政庁の判断で認められるケースがあります。この場合も、兼任先の会社の謄本や勤務実態が分かる資料の提出を求められることが多いため、事前に確認が必要です。



役員報酬・給与の支払い実態


常勤性は書類上の肩書だけでなく、実際に役員報酬や給与が支払われているかでも判断されます。新規設立法人で、まだ経管予定者に対する役員報酬の支払い実績がない場合は、株主総会議事録(役員報酬決定)や賃金台帳の予定表などで「これから常勤として給与を支払う体制」を示す必要があります。


よくある不許可・補正事例


当事務所でこれまで関わってきた事例から、経管・常勤性の論点でつまずきやすいパターンをご紹介します。



事例1:執行役員としての経験で申請してしまった


ある申請者は、前職の建設会社で「執行役員 建設事業部長」として10年以上勤務していました。本人は経管経験は十分だと考えて申請しましたが、登記されていない執行役員はカウントされず、結果として経管要件を満たさないとの補正指導が入りました。


対応策:登記事項証明書で取締役として登記されていた期間しかカウントできないため、別の方を経管として迎えることになりました。



事例2:個人事業主時代の請負契約書が紛失


個人事業主として7年間建設業を営んできた方が、法人成りに伴い建設業許可を取得しようとしたケース。確定申告書は揃っていたものの、初期の3年分の工事請負契約書が紛失していました。


対応策:当時の元請業者に依頼して、契約書の写しまたは取引履歴証明書を発行してもらい、不足期間の証明を補完しました。普段から、過去の取引書類は最低でも7年(建設業許可を視野に入れるなら10年)保管することをお勧めします。



事例3:他社の代表取締役を兼任していた


申請会社の代表取締役が、関連会社(別法人)の代表取締役も兼ねていたケース。両社で社会保険に加入しており、どちらが常勤かが争点となりました。


対応策:関連会社の代表取締役を辞任し、申請会社のみの代表に専念する体制へ変更。社会保険も申請会社で取り直したうえで、改めて申請を行いました。


よくある質問(FAQ)


経営業務の管理責任者は他社の役員と兼任できますか?
原則としてできません。経管は申請者である建設業者の常勤役員等であることが要件のため、他社(他の法人)の常勤役員や常勤の従業員を兼ねることは認められません。ただし、非常勤役員や監査役のような実態として勤務実体のないポジションは、所轄行政庁の判断により例外的に認められる場合があります。


個人事業主としての経験も経管の経験年数にカウントできますか?
カウントできます。個人事業主本人として建設業を営んでいた期間は、経営業務の管理責任者としての経験年数に算入できます。確定申告書(B様式)の事業主欄に氏名が記載されており、かつ工事を請け負っていた事実が確認できる契約書や請求書などの裏付け資料が必要です。


住所地と営業所が遠い場合、常勤性は認められませんか?
通勤可能な距離であれば認められます。一般的には住居から営業所まで概ね片道2時間以内であれば常勤と認められやすいですが、新幹線通勤や単身赴任のケースなど、個別事情に応じて住民票・賃貸借契約書・通勤定期券のコピーなどで実際に通勤可能であることを疎明する必要があります。


令和2年の改正で経管の要件は緩和されたと聞きましたが、本当ですか?
本当です。令和2年10月の建設業法改正により、従来の「個人としての経管」を置く方式に加え、「常勤役員等+これを直接補佐する者」のチーム体制で要件を満たす方式(建設業法施行規則第7条第1号ロ)が新設されました。1人で5年や6年の経験がない場合でも、複数人の経験を組み合わせて要件を満たせる可能性があります。


経管の証明書類が一部しか残っていません。どうすればよいですか?
まず手元にある資料を時系列で整理し、欠けている期間を特定してください。法人の場合は登記事項証明書(履歴事項全部証明書・閉鎖登記簿)、個人の場合は確定申告書の控えが基本資料となります。これらに加え、工事請負契約書、注文書・請書、入金が確認できる通帳の写しなどで補完していきます。資料が極端に不足する場合は、要件を満たす別の方を経管に据える方法や、令和2年改正のチーム体制方式の活用も検討すべきです。



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萩本 昌史(はぎもと まさし)

特定行政書士 / 行政書士萩本昌史事務所(東京都世田谷区)

建設業許可・消防法・防火管理・在留資格を専門とする特定行政書士。これまで多数の新規許可申請・経営事項審査を支援。複雑な経管要件や常勤性の証明についても、申請者の状況に合わせた最適なルートをご提案します。