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公開日: 2026年5月3日 / 著者: 萩本 昌史(特定行政書士)
「建設業許可を取りたいが、自宅を営業所にしてよいのか」「賃貸マンションでも許可は取れるのか」「バーチャルオフィスで申請できるのか」——建設業許可のご相談で非常に多いのが、営業所に関する問題です。
建設業許可では、経営業務の管理責任者や営業所技術者の要件だけでなく、実際に建設業の営業活動を行う営業所の実体も確認されます。単に登記上の本店があるだけでは足りず、請負契約の見積り、入札、契約締結などを行える事務所であることが必要です。
この記事では、建設業許可を取得する際に必要となる営業所の要件について、東京で建設業許可申請を扱う行政書士が、実務上問題になりやすいポイントをわかりやすく解説します。
目次
建設業許可における営業所とは、簡単にいえば、建設工事の請負契約に関する営業活動を継続的に行う事務所のことです。
具体的には、次のような業務を実際に行う場所が営業所に該当します。
法人の場合、登記簿上の本店所在地が存在していても、そこに事務所の実体がなく、建設業の営業活動を行っていない場合は、営業所として認められない可能性があります。
たとえば、次のような場所は、原則として建設業許可上の営業所とは別に考える必要があります。
建設業許可では、営業所は単なる所在地ではありません。営業所は、許可行政庁の判断、配置すべき人員、許可後の届出義務に関わる重要な要素です。
建設業許可は、営業所の所在地によって、知事許可と大臣許可に分かれます。
| 区分 | 該当するケース |
|---|---|
| 知事許可 | 1つの都道府県内のみに建設業の営業所を設ける場合 |
| 大臣許可 | 2以上の都道府県に建設業の営業所を設ける場合 |
東京都内に本店だけを置いて建設業を営む場合は、原則として東京都知事許可です。一方、本店が東京都、建設業の営業を行う支店が神奈川県や埼玉県にもある場合は、国土交通大臣許可が必要になります。
建設業許可では、営業所ごとに営業所技術者を配置する必要があります。令和6年12月施行の改正により、従来の「専任技術者」は「営業所技術者」という名称に変更されています。
複数の営業所で建設業の営業を行う場合、それぞれの営業所に、その業種に対応した営業所技術者を置く必要があります。営業所を増やすと、許可上必要な人員も増える点に注意が必要です。
主たる営業所以外の支店等で建設業の請負契約を締結する場合、その支店等には、建設業法施行令第3条に規定する使用人、いわゆる「令3条の使用人」を置く必要があります。
令3条の使用人は、その営業所において請負契約の締結等について権限を有する者です。支店長、営業所長などが該当することが多く、常勤性や権限の有無が確認されます。
建設業許可の営業所として認められるためには、実務上、次のような要件を満たす必要があります。
営業所では、建設工事の請負契約に関する実体的な業務を行っている必要があります。
具体的には、見積り、入札、契約締結、契約に関する打合せなどを行う場所であることが求められます。契約書の名義人が本店代表者であっても、その事務所で契約締結に関する実質的な行為を行っていれば、営業所に該当することがあります。
営業所には、建設業の営業活動を行うための事務所としての実体が必要です。
一般的には、次のような設備が確認されます。
注意
単に住所を借りているだけ、郵便物の受取だけ、電話転送だけという状態では、営業所としての実体がないと判断される可能性が高くなります。
営業所は、他の法人や他の個人事業主の事務所、または居住部分と明確に区分されている必要があります。
同じ部屋を複数の会社で共用している場合や、自宅の居住スペースと事務所部分が混在している場合は、営業所としての独立性が問題になります。
実務上は、次の点が確認されやすいです。
営業所として使用する場所について、申請者が使用する権限を有していることも重要です。
自己所有の建物であれば、建物登記簿謄本や固定資産税関係書類などで所有関係を確認します。賃貸物件であれば、賃貸借契約書により、事務所として使用できることを確認します。
建設業許可では、営業所に経営業務の管理責任者等が常勤していることが求められます。
法人の場合は常勤役員等、個人事業の場合は事業主本人などが、建設業の経営を管理する立場として常勤している必要があります。常勤性は、健康保険、厚生年金、住民税特別徴収、雇用関係資料、通勤可能性などから確認されます。
許可を受けようとする業種に対応した営業所技術者が、その営業所に常勤し、専任で勤務している必要があります。
営業所技術者は、国家資格、指定学科卒業後の実務経験、または10年以上の実務経験などにより要件を満たす必要があります。営業所に配置される技術者であるため、他の営業所との兼任や、常勤性を欠く勤務形態は原則として認められません。
営業所技術者の詳しい要件については、関連記事「建設業許可の資格者とは|営業所技術者になれる国家資格を行政書士が解説」もご参照ください。
許可取得後は、建設業法に基づく標識の掲示が必要です。また、申請時にも、郵便受け、入口、看板などにより、外部から事業者名や営業所の所在が確認できる状態であることが望ましいです。
マンションやビルの一室を営業所とする場合は、集合ポスト、玄関扉、入口表示などに商号・屋号が表示されているかも確認しておきましょう。
次のような場所は、建設業許可上の営業所として認められない、または慎重な確認が必要になることがあります。
| 場所 | 注意点 |
|---|---|
| 資材置場 | 資材保管のみで、見積り・契約締結等を行わない場合は営業所に該当しません。 |
| 作業員詰所 | 作業員の集合・休憩場所にすぎない場合は、営業所とはいえません。 |
| 工事現場事務所 | 一時的に設置される現場事務所は、通常、建設業許可上の営業所にはなりません。 |
| バーチャルオフィス | 住所利用や郵便受取だけでは、営業所の実体がないと判断される可能性があります。 |
| 居住専用マンション | 管理規約や賃貸借契約で事務所利用が禁止されている場合は注意が必要です。 |
| 他社事務所の一角 | 独立性が不十分な場合、営業所として認められにくくなります。 |
個人事業主や小規模法人では、自宅の一部を事務所として建設業許可を申請するケースがあります。自宅兼事務所であっても、直ちに許可が取れないわけではありません。
ただし、次の点を満たしているか慎重に確認する必要があります。
注意
自宅兼事務所の場合、最も問題になりやすいのは「居住部分との区分」と「事務所使用の権限」です。とくに賃貸住宅では、契約上、事務所利用が禁止されていることがあります。
賃貸物件を営業所とする場合は、賃貸借契約書の内容が重要です。
契約書の使用目的が「事務所」「事業用」「店舗・事務所」などになっていれば比較的問題になりにくいですが、「居住用」とされている場合は注意が必要です。
使用目的が居住用の場合でも、貸主や管理会社から事務所使用承諾書を取得できれば、申請可能性が出てくる場合があります。ただし、自治体や審査担当者の判断も関係するため、事前確認が重要です。
バーチャルオフィスは、住所利用、郵便物受取、電話転送などを主なサービスとする形態です。建設業許可では、営業所に事務所としての実体が求められるため、住所利用だけのバーチャルオフィスは、原則として営業所として認められにくいと考えるべきです。
シェアオフィスであっても、専用区画があり、契約締結等の実体的な業務を継続的に行える場合は、営業所として検討できる余地があります。
ただし、フリーアドレス席のみ、時間貸し会議室のみ、郵便受取のみという形態では、営業所の独立性・継続性・実体性を説明しにくくなります。
| 形態 | 建設業許可上の注意点 |
|---|---|
| 住所利用のみのバーチャルオフィス | 営業所としての実体が乏しく、原則として不向きです。 |
| フリーアドレス型シェアオフィス | 専用性・独立性の説明が難しい場合があります。 |
| 専用個室型レンタルオフィス | 使用権原、独立性、常勤性を説明できれば検討可能です。 |
| 事業用賃貸事務所 | 最も説明しやすい形態です。 |
建設業許可申請では、営業所の実体を確認するため、次のような資料を準備します。実際に必要となる資料は、申請先の行政庁や申請内容により異なります。
営業所の所在地は、知事許可と大臣許可の区分に直結します。
たとえば、東京都内にのみ建設業の営業所がある場合は、東京都知事許可です。東京都に本店があり、神奈川県にも建設業の請負契約を締結する支店を置く場合は、大臣許可が必要になります。
一方、東京都知事許可であっても、東京都内の工事しか施工できないわけではありません。知事許可と大臣許可の違いは、工事を施工できる地域の違いではなく、営業所を置く都道府県の違いです。
注意
他県に支店や営業拠点を設けても、そこが単なる連絡所や資材置場であり、建設工事の請負契約に関する実体的な業務を行わない場合は、建設業法上の営業所に該当しないことがあります。逆に、支店という名称でなくても、実際に見積り・契約締結を行っていれば営業所と判断される可能性があります。
建設業許可を申請する前に、次の項目を確認しておきましょう。
| 確認項目 | チェック |
|---|---|
| 建設工事の見積り・入札・契約締結等を行う場所である | □ |
| 机、電話、パソコン、書類棚等の事務設備がある | □ |
| 来客や契約打合せに対応できるスペースがある | □ |
| 他社や居住部分と明確に区分されている | □ |
| 自己所有または賃貸借契約等により使用権原がある | □ |
| 賃貸物件の場合、事務所使用が認められている | □ |
| 郵便受け、入口、看板等で商号・屋号が確認できる | □ |
| 経営業務の管理責任者等が常勤している | □ |
| 営業所技術者が常勤・専任している | □ |
| 営業所の写真、賃貸借契約書、平面図等を準備できる | □ |
A. 可能な場合があります。ただし、居住部分と事務所部分が区分されていること、事務所としての設備があること、来客や契約締結に対応できること、賃貸の場合は事務所使用が認められていることなどが必要です。
A. 認められる可能性はありますが、賃貸借契約書や管理規約で事務所利用が禁止されていないか確認が必要です。居住用契約の場合は、貸主や管理会社の承諾書が必要になることがあります。
A. 住所利用や郵便物受取だけのバーチャルオフィスは、営業所としての実体を欠くため、建設業許可の営業所としては原則として不向きです。専用個室があり、契約締結等の実体的な業務を継続的に行えるレンタルオフィスであれば、個別に検討の余地があります。
A. 資材を保管するだけの場所は営業所には該当しません。営業所とは、建設工事の請負契約に関する見積り、入札、契約締結等を行う事務所をいいます。
A. その支店が建設工事の請負契約を締結する営業所であれば、大臣許可が必要になります。一方、単なる連絡所、資材置場、作業員詰所であれば、建設業法上の営業所に該当しないことがあります。
A. 原則としてできません。営業所技術者は、その営業所に常勤し、専任で勤務することが求められます。複数営業所を設ける場合は、営業所ごとに要件を満たす技術者を配置する必要があります。
建設業許可を取得するには、経営業務の管理責任者や営業所技術者の要件だけでなく、営業所そのものが建設業許可上の要件を満たしていることが必要です。
営業所として認められるためには、建設工事の請負契約に関する実体的な業務を行う場所であること、事務所としての設備があること、独立性があること、使用権原があること、必要な人員が常勤していることなどが重要です。
特に、自宅兼事務所、賃貸マンション、シェアオフィス、バーチャルオフィスを利用する場合は、申請前に慎重な確認が必要です。営業所要件に不安がある場合は、早い段階で行政書士に相談し、写真、契約書、使用承諾書、平面図などの準備を進めておくことをおすすめします。
建設業許可の営業所要件でお困りの方へ
東京建設業許可サポートステーションでは、東京都内の建設業許可申請について、営業所要件、経営業務の管理責任者、営業所技術者、必要書類の確認まで丁寧にサポートしています。
自宅兼事務所で申請できるか、賃貸物件で許可が取れるか、営業所写真の準備に不安がある方は、お気軽にご相談ください。
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