建設業許可の資格者とは|営業所技術者になれる国家資格を行政書士が解説

建設業許可の資格者とは|営業所技術者になれる国家資格を行政書士が解説

建設業許可で必要な資格者(営業所技術者・特定営業所技術者)について、なれる国家資格、2024年改正のポイント、資格がない場合の対応まで、東京の行政書士がわかりやすく解説します。


建設業許可の資格者とは|営業所技術者になれる国家資格を行政書士が解説








/ 著者: 萩本昌史(特定行政書士)






「建設業許可を取りたいが、どの資格者がいれば許可が下りるのかわからない」「会社に1級施工管理技士はいるが、これで全業種カバーできるのか?」——建設業許可の取得・維持にあたって、資格者の要件は最もよく相談される論点のひとつです。

この記事では、建設業許可で求められる資格者(営業所技術者・特定営業所技術者)について、なれる国家資格の一覧、令和6年12月の法改正による名称変更と要件緩和、資格がない場合の実務経験ルート、資格者が退職したときのリスクまで、東京で建設業許可を専門に扱う行政書士が実務の視点で解説します。最後までお読みいただければ、自社の状況に合った資格者の揃え方が明確になります。

目次





  1. 建設業許可における「資格者」とは何か
  2. 令和6年12月改正で名称変更——「専任技術者」から「営業所技術者」へ
  3. 営業所技術者になれる国家資格一覧
  4. 特定営業所技術者(特定建設業)の資格要件
  5. 国家資格がない場合の実務経験ルート
  6. 資格者の配置・兼務ルールと改正による緩和
  7. 資格者が退職したときの手続きとリスク
  8. よくある質問

建設業許可における「資格者」とは何か

営業所技術者等の役割

建設業許可を受けるためには、営業所ごとに一定の資格や実務経験を持つ技術者を専任で配置することが法律で義務付けられています(建設業法第7条第2号・第15条第2号)。この技術者が、本記事でいう「資格者」にあたります。


営業所技術者等は、請負契約が適正に締結されるよう技術的観点から見積書や契約内容をチェックし、請負契約が適正に履行されるよう現場の主任技術者・監理技術者をバックアップする役割を担います。いわば、会社の建設工事における技術的な責任者という位置づけです。

一般建設業と特定建設業で呼称が異なる

2024年(令和6年)の建設業法改正により、資格者の呼称が次のように整理されました。


許可の種類 旧称 新称(令和6年12月13日以降)
一般建設業 専任技術者(専技) 営業所技術者
特定建設業 特定営業所技術者


両者を合わせて「営業所技術者等」と呼びます。現場では今でも「専任技術者」や「専技」という呼び方が使われることが多いですが、法律上の正式名称は営業所技術者・特定営業所技術者に変わっていますので、申請書類や変更届の書き方にも注意が必要です。


建設業許可の資格者になる方法は、大きく分けて
「①国家資格」
「②学歴+実務経験」
「③実務経験のみ(原則10年)」
の3ルートです。
このうち最も確実で、証明も容易なのが①の国家資格ルートです。

令和6年12月改正で名称変更——「専任技術者」から「営業所技術者」へ

改正の背景と狙い

令和6年12月13日に改正建設業法が施行され、従来「専任技術者」と呼ばれていた技術者の名称が「営業所技術者」「特定営業所技術者」に変更されました。この改正は単なる名称変更にとどまらず、資格者の役割を条文上明確化する意味があります。


改正後の建設業法第7条第2号では、営業所技術者を「建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者」と定義しています。改正前は「契約の締結」が中心的な責任でしたが、改正により履行段階の技術管理も明示的に営業所技術者の職責となった点が大きな変化です。

「営業所技術者」と名前が変わった意味

「専任技術者」という旧称は、業務内容が曖昧で事業者ごとに解釈がばらつく面がありました。「営業所技術者」に統一することで、営業所単位で配置するという原則と、その責任範囲が明確化されています。

名称変更に伴う実務上の留意点

既に建設業許可を取得している事業者が、この名称変更のために手続きをやり直す必要はありません。ただし、次の場面では新名称を使うことになりますのでご注意ください。


  • 更新申請・業種追加・新規申請などの書類
  • 変更届の書式
  • 社内規程や業務マニュアルの見直し
  • 顧問契約書や業務委託契約書の記載

営業所技術者になれる国家資格一覧


一般建設業の営業所技術者になれる主な国家資格を、許可業種との対応で整理します。1つの資格で複数業種をカバーできるのが国家資格ルートの最大のメリットです。

施工管理技士系(最も汎用的)


資格名 対応する主な許可業種
1級土木施工管理技士 土木・とび土工・石・鋼構造物・舗装・しゅんせつ・塗装・水道施設・解体
2級土木施工管理技士(土木) 土木・とび土工・石・鋼構造物・舗装・しゅんせつ・水道施設・解体
1級建築施工管理技士 建築・大工・左官・とび土工・石・屋根・タイル・鋼構造物・鉄筋・板金・ガラス・塗装・防水・内装仕上・熱絶縁・建具・解体 等
2級建築施工管理技士(建築) 建築・解体
2級建築施工管理技士(躯体) 大工・とび土工・タイル・鋼構造物・鉄筋・解体
2級建築施工管理技士(仕上げ) 左官・石・屋根・タイル・板金・ガラス・塗装・防水・内装仕上・熱絶縁・建具
1級・2級 電気工事施工管理技士 電気
1級・2級 管工事施工管理技士
1級・2級 造園施工管理技士 造園
1級・2級 建設機械施工技士 土木・とび土工・舗装

建築士・技術士系


資格名 対応する主な許可業種
1級建築士 建築・大工・屋根・タイル・鋼構造物・内装仕上 等
2級建築士 建築・大工・屋根・タイル・内装仕上
技術士(建設部門 等) 部門により土木・鋼構造物・水道・電気・機械・造園 等(特定建設業も可)


電気・通信系


資格名 対応する主な許可業種
第1種電気工事士 電気
第2種電気工事士(免状取得後3年の実務経験) 電気
電気主任技術者(第1〜3種)(免状取得後5年の実務経験) 電気
電気通信主任技術者(免状取得後5年の実務経験) 電気通信

その他の専門資格


資格名 対応する主な許可業種
給水装置工事主任技術者(免状取得後1年の実務経験)
消防設備士(甲種特類・1〜5類) 消防施設
基礎施工士 とび土工
解体工事施工技士 解体
職業能力開発促進法の技能検定(各工事業種に対応) 対応業種(2級は原則3年の実務経験が必要)


解体工事業の注意点:解体工事業に係る国家資格のうち、土木施工管理技士・建築施工管理技士・とび技能士などは、平成28年3月31日以前の合格者は、解体工事に関する1年以上の実務経験または登録解体工事講習の受講が追加で必要です。資格証の取得時期を必ず確認してください。


消防設備士の乙種でも消防施設工事業の営業所技術者にはなれますが、乙種では実際の工事ができないため、許可は取れても工事はできないという状態になります。工事まで行うには甲種が必要です。

特定営業所技術者(特定建設業)の資格要件

特定建設業は元請責任が重いため資格要件が厳しい

特定建設業許可は、元請として下請に5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)の工事を発注する場合に必要な許可です。下請業者を指導監督する重い責任を負うため、特定営業所技術者の資格要件は一般より格段に厳しくなっています。

特定営業所技術者になれる資格

特定営業所技術者になるには、次のいずれかを満たす必要があります。


  1. 1級国家資格:1級施工管理技士、1級建築士、技術士 など
  2. 一般の要件+指導監督的実務経験2年以上:一般建設業の営業所技術者要件を満たしたうえで、元請として請負金額4,500万円以上の工事で2年以上の指導監督的実務経験があること
  3. 国土交通大臣の認定:上記と同等以上の能力があると認められた者

指定建設業は実務経験ルートが使えない

次の7業種(指定建設業)については、1級国家資格か大臣特別認定が必須で、実務経験ルートでは特定建設業の資格者になれません。

  • 土木工事業
  • 建築工事業
  • 電気工事業
  • 管工事業
  • 鋼構造物工事業
  • 舗装工事業
  • 造園工事業


特定建設業許可を取得するには、資格者の要件に加えて財産的基礎の要件(自己資本4,000万円以上、欠損比率20%未満など)も満たす必要があります。資格者だけ揃えても特定許可は取れませんので、財務面とセットで検討が必要です。


国家資格がない場合の実務経験ルート

原則10年の実務経験で資格者になれる

対応する国家資格を持っていなくても、許可を受けたい業種について10年以上の実務経験があれば、営業所技術者になれます(建設業法第7条第2号ロ)。

指定学科卒業で実務経験年数が短縮される

学校教育法に基づく学校で許可業種に対応する指定学科を卒業している場合、必要な実務経験年数が次のように短縮されます。


学歴 必要な実務経験
大学・高等専門学校・専門学校(専門士・高度専門士)で指定学科を卒業 卒業後3年以上
高校・専修学校で指定学科を卒業 卒業後5年以上
指定学科以外の学歴、または中卒 10年以上


実務経験の証明は資格より格段に大変

実務経験ルートは、資格証1枚で済む国家資格ルートと比べて証明の手間が桁違いに大きいという現実があります。具体的には次のような資料が必要です。


  • 様式第9号(実務経験証明書):対象工事を時系列で列挙
  • 工事請負契約書・注文書・請書:契約金額・工期・工事内容が確認できるもの
  • 在籍期間を示す資料:健康保険被保険者証、厚生年金の記録、住民税特別徴収の記録、確定申告書 等


10年分の工事資料を揃えるのは、特に前職分を証明する場合には極めて困難です。実際の相談現場では、実務経験ルートでの許可取得が頓挫するケースが少なくありません前職の会社との関係が悪化している、過去の契約書が残っていない、個人事業だった時代の資料が散逸している——こうした事情で証明が詰まることがよくあります。


実務経験ルートを検討する段階で、必ず証明書類が揃うかを先に確認してください。「経験はあるはずだ」という記憶だけで申請を始めると、書類集めで数ヶ月失うことがあります。行政書士に事前相談すれば、証明可能性の見通しを立てることができます。

令和5年7月施行の実務経験要件緩和

令和5年7月1日施行の改正により、1級の第1次検定合格者(技士補)が大学指定学科卒業者と同等に扱われるようになりました。1級施工管理技士補なら、実務経験3年で一般建設業の営業所技術者要件を満たせます。

資格者の配置・兼務ルールと改正による緩和

営業所に専任勤務が原則

営業所技術者等は、その営業所に常勤して専属的に勤務することが原則です。次のような方は営業所技術者になれません。

  • 住所が営業所から通勤不可能な距離にある者
  • 他の会社の営業所技術者を兼ねる者
  • 他の法令で専任性が求められる役職(建築士事務所の管理建築士、宅地建物取引業の専任宅建士など)を他社で兼ねる者
  • 他社の常勤役員を兼ねる者

令和6年12月改正で現場との兼務要件が大幅緩和

建設業界の担い手不足に対応するため、令和6年12月13日施行の改正で営業所技術者と現場の主任技術者・監理技術者との兼務要件が大幅に緩和されました。


工事現場の状況 従来 改正後
営業所に近接する専任を要しない工事 兼務可 兼務可(変更なし)
営業所に近接しない専任を要しない工事 兼務不可 一定要件下で兼務可
専任を要する工事 兼務不可 情報通信機器の活用等の要件を満たせば兼務可


専任現場との兼務には、以下のような要件があります。

  • 営業所と工事現場の距離・移動時間が概ね2時間以内
  • 情報通信機器を活用して現場の状況を把握できる体制
  • 営業所技術者等が所属する営業所で契約が締結された工事であること
  • 人員配置計画書に営業所と現場の両方を記載


この兼務緩和は、小規模事業者にとって極めて大きい改正です。これまで「資格者が営業所に張り付いていて現場に出られない」という悩みを抱える事業者が多くいましたが、改正後は情報通信機器を活用すれば現場との兼務が可能になります。ただし要件の判断は専門的ですので、該当しそうな場合は行政書士や所管行政庁に事前に確認することをお勧めします。

資格者が退職したときの手続きとリスク

不在期間が生じると許可取消の対象になる

営業所技術者等の設置は建設業許可の要件ですから、資格者が不在になった瞬間に許可要件を欠くことになります不在期間が継続すれば、建設業法第29条第1項第1号により許可取消の対象となります。

退職の意向が出たら即座に対応すべきこと

資格者が退職を申し出た時点で、次の対応を並行して進める必要があります。

  1. 後任の選定と資格・経験の確認:社内に該当者がいるか、いなければ採用活動
  2. 変更届の準備:様式第22号の2(営業所技術者等の変更届)、資格証写し、常勤性確認資料など
  3. 健康保険被保険者証の発行停止への対応:令和6年12月2日以降、健康保険証が新規発行されないため、標準報酬決定通知書や健康保険組合の資格証明書等で代替
  4. 退職日と新任者の就任日を連続させる:不在期間を作らない

届出期限

営業所技術者等の変更届は、変更後2週間以内に提出する必要があります(建設業法第11条第4項)。


よくある失敗は「資格者が退職してから後任を探し始める」パターンです。採用・資格確認・実務経験証明の収集だけで数ヶ月かかることが普通で、その間に許可を取り消されるリスクが生じます。資格者のリスク管理は、建設業許可の維持における最重要課題と考えてください。

よくある質問

Q.建設業許可の資格者がいなくなったらどうなりますか?
A.営業所技術者が不在になると、建設業許可の要件を欠くことになり、許可の取消事由に該当します(建設業法第29条第1項第1号)。後任が決まるまでの空白期間が生じないよう、退職の意向が出た時点で速やかに後任の確保と変更届の準備を進める必要があります。2週間以内に変更届を提出する義務もあります。


Q.資格がなくても建設業許可は取れますか?
A.はい、可能です。国家資格がなくても、許可を受けたい業種について10年以上の実務経験があれば営業所技術者になれます。また、指定学科を卒業していれば、高卒で5年、大卒で3年の実務経験で要件を満たします。ただし実務経験の証明は資格の証明より格段に手間がかかり、工事請負契約書や注文書などの裏付け資料が必要です。


Q.1つの資格で複数の業種の営業所技術者になれますか?
A.なれます。例えば1級建築施工管理技士は、建築・大工・左官・とび土工・石・屋根・タイルレンガブロック・鋼構造物・鉄筋・板金・ガラス・塗装・防水・内装仕上・熱絶縁・建具の計16業種の営業所技術者要件を満たします。1つの資格で広範囲の業種をカバーできるのが国家資格ルートの大きなメリットです。


Q.営業所技術者は他の営業所や現場と兼務できますか?
A.原則として営業所に専任で勤務する必要があるため、他の営業所との兼務はできません。ただし令和6年12月施行の改正で、営業所に近接する専任を要しない工事現場の主任技術者等との兼務は従来どおり可能です。さらに情報通信機器の活用等の一定要件を満たせば、専任を要する工事現場との兼務も認められるようになりました。


Q.特定建設業の資格者になるにはどうすればいいですか?
A.特定営業所技術者になるには、・1級施工管理技士、1級建築士、技術士などの1級国家資格を持つか、

・一般建設業の要件を満たしたうえで元請として4,500万円以上の工事で2年以上の指導監督的実務経験を積む必要があります。
・さらに土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種(指定建設業)では、実務経験ルートは使えず、1級国家資格または大臣特別認定が必須です。


Q.海外の資格は使えますか?
A.日本の建設業許可は日本の国家資格・学歴・実務経験を前提に制度設計されているため、海外の建築士資格(Architectなど)をそのまま資格証として提出しても受理されません。海外の資格や経験で営業所技術者になるには、国土交通大臣の認定を個別に受ける必要があります。


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萩本 昌史(はぎもと まさし)

特定行政書士 / 行政書士萩本昌史事務所

建設業許可・経営事項審査・入札参加資格申請を中心に、東京都・関東圏の建設業者を支援しています。新規許可取得から業種追加、決算変更届、更新申請まで、建設業のライフサイクル全般をサポート。営業所技術者等の要件診断や実務経験証明のアドバイスを数多く手掛けています。