一般建設業の営業所技術者|10年実務経験の証明方法を徹底解説

一般建設業の営業所技術者|10年実務経験の証明方法を徹底解説

一般建設業の営業所技術者|10年実務経験の証明方法を徹底解説|行政書士萩本昌史事務所














一般建設業の営業所技術者|10年実務経験の証明方法を徹底解説 / 著者: 萩本昌史(特定行政書士)



「国家資格は持っていないけれど、長年この道一筋でやってきた。営業所技術者になれるはずだが、具体的に何を揃えればいいのか分からない」——建設業許可の新規取得を検討される事業者様から、最も多くいただくご相談のひとつです。


一般建設業許可の営業所技術者(旧:専任技術者)になる方法は複数ありますが、指定学科の卒業歴も国家資格もない場合、残された道は「10年以上の実務経験を証明する」ことだけです。この記事では、10年の実務経験で営業所技術者になるための要件・手続きの流れ・具体的な証明資料の集め方を、東京都知事許可の手引きに沿って詳しく解説します。特に、前職の協力が得られない場合の対処法まで実務目線で踏み込みますので、許可取得をお考えの事業者様はぜひ最後までお読みください。

目次



  1. 1. 営業所技術者とは?令和6年12月改正による名称変更も解説
  2. 2. 一般建設業の営業所技術者になる4つのルート
  3. 3. 「10年の実務経験」の正しい数え方
  4. 4. 10年実務経験の証明に必要な書類一覧
  5. 5. 前職の協力が得られない場合の対処法
  6. 6. 実務経験証明書(様式第9号)の書き方と注意点
  7. 7. よくある落とし穴と失敗パターン
  8. 8. よくある質問(FAQ)

1. 営業所技術者とは?令和6年12月改正による名称変更も解説


営業所技術者とは、建設業許可を取得した営業所ごとに配置が義務づけられる「技術面の責任者」のことです。建設工事の請負契約を適正に締結し、施工の技術的側面を管理する重要なポジションで、常勤性と専任性の両方が求められます。

令和6年12月から名称が「専任技術者」→「営業所技術者等」に変更

令和6年12月13日施行の改正建設業法により、従来「専任技術者」と呼ばれていた者の呼称が「営業所技術者等」に変更されました。東京都の令和7年度版「建設業許可申請の手引」もこの改正を反映しています。役割そのものは従来の専任技術者と同じですが、申請書や変更届の様式では新しい名称を使用する必要があるため、過去のひな形を流用する際は注意が必要です。


実務上は「営業所技術者」「専任技術者」「専技」といった呼び方が混在して使われます。本記事では読みやすさを優先して「営業所技術者」に統一しますが、建設業法第7条第2号に規定される技術者要件を指している点は同じです。

営業所技術者の3つの要件

  • 常勤性:その営業所に毎日勤務していること。遠距離通勤で常識上通勤困難な者、他社の役員を兼ねている者は原則認められません。
  • 専任性:他の営業所や他社の技術者を兼務していないこと。複数営業所の掛け持ちは不可です。
  • 技術要件:国家資格・指定学科卒+実務経験・10年以上の実務経験のいずれかを満たすこと。

これら3つのうち、ご自身の状況に合わせて最もクリアしやすいのが「10年以上の実務経験」というルートです。

2. 一般建設業の営業所技術者になる4つのルート


建設業法第7条第2号に定められた技術要件を満たす方法は、大きく4つに分類されます。ご自身がどのルートに該当するかをまず確認しましょう。


ルート 要件 必要な実務経験年数
① 国家資格 建築士・施工管理技士など、許可業種ごとに指定された資格を保有 原則不要(一部資格は要)
② 指定学科卒(大学・高専) 建築学・土木工学など指定学科を修めて大学・高専を卒業 3年以上
③ 指定学科卒(高校・専門学校等) 指定学科を修めて高校・中等教育学校・専門学校を卒業 5年以上(専門士・高度専門士は3年)
④ 実務経験のみ 資格・指定学科卒ともになし 10年以上


①~③のいずれかに該当する方は、短い実務経験または経験不要で営業所技術者になれます。しかし建設業界では資格取得が容易ではなく、また過去に建築学科や土木工学科を卒業していない方も多いのが実情です。その場合は④の「10年以上の実務経験」で要件を満たすことになります。


電気工事業・消防施設工事業は無資格者の実務経験では不可
建設業許可28業種のうち、電気工事業は電気工事士法、消防施設工事業は消防法に基づく資格規制があるため、無資格者の実務経験のみでは営業所技術者になれない取扱いが実務上定着しています。これら2業種を狙う場合、該当する国家資格(電気工事士、消防設備士甲種等)の取得が前提となります。

3. 「10年の実務経験」の正しい数え方


10年の実務経験と一口に言っても、何がカウントされて何がカウントされないのか、正確に理解している方は意外と少ないものです。ここでは実務経験の定義と、数え方のルールを整理します。

実務経験として認められる業務

実務経験とは、許可を受けようとする建設工事に関する「技術上の経験」を指します。役職や肩書は問われず、以下はすべて実務経験としてカウントできます。

  • 現場での作業(見習い、職人として)
  • 現場監督・主任技術者としての管理業務
  • 建築士・土木設計技術者としての設計業務
  • 積算・施工図作成など技術関連業務

一方、経理・営業・総務・人事といった技術と関係のない業務は、たとえ建設会社に勤めていても実務経験として認められません。この点は建設業法施行規則および各都道府県の運用で共通しています。

数え方の3つの重要ルール

ルール①:1業種につき1期間しか使えない
10年の実務経験は、1業種の証明にしか使えません。例えば「令和元年から令和10年までの10年間」を内装仕上工事業の実務経験として使った場合、同じ期間を塗装工事業の実務経験として重複利用することはできません。複数業種で営業所技術者になりたい場合、原則として業種ごとに10年ずつ、合計20年以上の期間が必要になります。
建設業許可実務ガイドライン


ルール②:12か月未満の空白期間はカウント外
実務経験は1年単位でカウントします。工事と工事の間に12か月未満の空白があっても継続期間としてみなされますが、12か月以上の空白があれば、その空白期間は通算されません。例えば令和1年に工事A、令和2年に工事B(間に3か月の空白)なら継続ですが、工事と工事の間に1年以上のブランクがあると別々の期間として扱われます。


ルール③:常勤で勤務していた期間のみカウント
アルバイト・パート・非常勤の期間は原則としてカウントされません。厚生年金の加入記録や健康保険の被保険者記録で「常勤性」を別途証明することが求められます。


過去に複数の会社を渡り歩いた場合でも、各在籍期間を通算して10年以上あれば要件を満たせます。ただし各社ごとに実務経験証明書と確認資料(後述)を揃える必要があるため、会社数が多いほど準備の手間は増えます。


4. 10年実務経験の証明に必要な書類一覧

10年の実務経験を証明するには、「実務経験証明書」と「確認資料」の2系統の書類を揃える必要があります。これらは建設業法第7条第2号ロ、および建設業法施行規則第3条を根拠としています。

(1) 実務経験証明書(様式第9号)

営業所技術者となる本人の実務経験を、当時の雇用主(使用者)が証明する公式書類です。以下の内容を記載します。


  • 証明される本人の氏名・生年月日
  • 使用者(当時の会社)の名称・住所
  • 職名(現場監督、職人など)
  • 実務経験の期間(年月日)
  • 従事した工事の名称(1年につき1件以上)
  • 使用者の証明印(代表者の記名押印)

(2) 工事内容を裏付ける確認資料

東京都の手引きでは、実務経験を証明する期間内に実際に工事を行っていたことを示す資料として、以下のいずれかを1年につき1件以上提出することを求めています。


パターン 必要書類 補足
パターンA 代表者印等のある請負契約書または注文書 押印ありの契約書・注文書があれば単体で足りる
パターンB 押印のない契約書・請書・見積書・請求書 + 入金確認資料 通帳の写しなど、代金が実際に入金された事実が必要
パターンC 建設業許可通知書の写し(在籍期間分) 勤務先が当時建設業許可を持っていた場合に限る



(3) 在籍・常勤性を示す資料

上記に加え、本人が当該期間その会社に常勤で在籍していたことを示す資料が必要です。


  • 厚生年金保険の被保険者記録照会回答票(年金事務所で取得)
  • 健康保険の資格確認書または資格取得等確認通知書
  • 住民税特別徴収税額通知書
  • 源泉徴収票や給与明細書


令和7年12月以降の常勤性確認資料の変更点
健康保険証の廃止に伴い、令和7年12月以降は「マイナンバーカード(マイナ保険証)」「資格確認書」が常勤性確認の中心資料となりました。申請者本人または従業員がマイナンバーカードを未取得の場合、資格確認書の発行には一定の日数がかかるため、申請スケジュールに余裕を持たせる必要があります。


5. 前職の協力が得られない場合の対処法


10年実務経験の証明で最も難関となるのが、「前職の会社が実務経験証明書に押印してくれない」「契約書や請求書の写しを貸してくれない」というケースです。退職時のトラブル、会社の倒産、代表者の交代など、原因は様々ですが、このような状況でも許可取得を諦める必要はありません。

対処法①:誠実な再交渉を試みる

まずは前職の会社に対し、「建設業許可取得のために協力してほしい」と改めて丁寧に依頼することが基本です。前職に損害を与えるような書類ではないこと、行政書士が間に入って手続きを進めることを説明すると、応じてくれる場合があります。依頼文書を書面で送付するのも有効です。

対処法②:東京都・神奈川県・埼玉県の特例ルートを使う

東京都など一部の自治体では、以下の2つの条件をともに満たす場合、前職の押印なしで実務経験を証明できる運用が認められています。


  1. 前職の会社が、本人の在籍当時に建設業許可を取得しており、その情報を行政庁が保有していること
  2. 本人が当時その会社に厚生年金で加入していたこと


この運用は全国一律ではなく、北海道など一部自治体では認められていません。東京都知事許可を申請する場合はこのルートが使える可能性が高いため、行政書士や建設業課の窓口で確認されることをおすすめします。

対処法③:代替資料で構成する

前職の押印も特例ルートも使えない場合、以下のような代替資料を組み合わせて実務経験を疎明することを検討します。


  • 給与明細書・源泉徴収票(本人保管分)
  • 雇用保険被保険者証・離職票
  • 厚生年金の加入記録(年金事務所で取得可能)
  • 当時の同僚・上司による陳述書(補強資料として)


代替資料で実務経験を認めてもらえるかは、担当審査官との事前相談が不可欠です。書類を揃える前に、行政書士を通じて建設業課に事前確認を取ることで、手戻りを防げます。


「名義貸し」は絶対に行わないこと
営業所技術者になれる人が見つからないからといって、他人の名義を借りて申請する行為は建設業法違反であり、虚偽申請に該当します。発覚した場合、許可取り消しのほか、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。短期的な解決にもなりませんので、必ず正攻法で取り組んでください。


6. 実務経験証明書(様式第9号)の書き方と注意点

実務経験証明書は、書き方ひとつで差し戻しの対象になる重要書類です。東京都の様式に沿って、記載上のポイントを押さえておきましょう。

記載項目のポイント

① 証明者欄:在籍当時の会社(使用者)が証明者となります。法人の場合は代表者、個人事業主の場合は事業主です。証明者が本人の父親や兄弟であっても、法律上問題ありません。


② 技術者の氏名・生年月日:営業所技術者となる本人の情報を記載します。


③ 使用された期間:在籍期間を「令和◯年◯月◯日~令和◯年◯月◯日」の形式で正確に記入します。雇用保険被保険者証や厚生年金記録と整合させる必要があります。


④ 職名:「現場監督」「大工」「作業員」など、実際の職務内容に即した記載をします。


⑤ 実務経験の内容:工事名を具体的に記入します。単に「内装工事」と書くのではなく、「◯◯ビル3階内装仕上工事」のように業種が判別できる記載にします。ここが曖昧だと実務経験として認められないリスクがあります。


⑥ 実務経験年数:各工事に携わった期間を年月日で記入し、通算で10年以上になることを示します。


よくある記載ミス

  • 工事名が抽象的すぎて、申請業種との対応関係が分からない
  • 期間の合計が10年に足りていない(12か月未満の空白をカウントしてしまう)
  • 在職期間と厚生年金加入記録が一致していない
  • 指導監督的実務経験と通常の実務経験を混同して記載している


様式第9号は東京都都市整備局のウェブサイトからExcel・Word形式でダウンロードできます。令和6年度以降の様式には「代理人記入欄」が設けられているため、行政書士が代理申請する場合はここに記入します。申請者ご自身が直接申請する場合は、代理人欄は空欄のままで構いません。


7. よくある落とし穴と失敗パターン


10年実務経験での申請は、準備段階でつまずくケースが多くあります。行政書士の実務経験から、特に注意すべき落とし穴を3つご紹介します。

落とし穴①:10年分の資料収集にかかる時間を甘く見る

10年分の契約書・注文書・請求書を揃える作業は、想像以上に時間がかかります。月1件としても120件、数が多い場合は300件を超えることもあります。資料の散逸、古い紙ベース資料の判読困難、前職への連絡調整など、短くても1~2か月、長いと半年以上かかるケースも珍しくありません。許可取得を急ぐなら、資料収集は今日から始めるべき作業です。

落とし穴②:工事名から業種が判別できない

審査では「この工事は本当に◯◯工事業に該当するのか」が厳しくチェックされます。例えば「◯◯様邸改修工事」という工事名だけでは、内装工事なのか大工工事なのかタイル工事なのか判別できません。当時の見積書・工事明細・施工写真などで、工事内容を具体的に示せるよう準備しておく必要があります。

落とし穴③:資格を持っているのに実務経験ルートを選んでしまう

「2級建築施工管理技士の資格があるが、自分は実務経験が長いから実務経験で申請したい」というご相談をいただくことがあります。しかし資格ルートのほうが書類も少なく、審査も短期間で済みます。資格がある場合は原則として資格ルートで申請するのが賢明です。資格と実務経験のどちらが有利かは、業種ごとに判断する必要があります。


10年実務経験での申請は、東京都では標準処理期間(申請受付後25日)を超えて長引くことがよくあります。書類が膨大になり、審査官も慎重に確認するためです。許可が出るまでの事業計画を立てる際は、余裕を持ったスケジューリングを心がけましょう。

8. よくある質問(FAQ)

Q.10年の実務経験は1つの業種にしか使えないのですか?
A.原則として、10年の実務経験は1業種についてのみ使用できます。例えば内装工事で10年間の実務経験を使って営業所技術者になった場合、同じ期間を別の業種(例:塗装工事)の実務経験として重複してカウントすることはできません。複数業種で営業所技術者になるには、業種ごとに原則10年ずつ、合計20年以上の実務経験が必要になります。


Q.前職の会社が実務経験証明書への押印に協力してくれません。どうすればよいですか?
A.まず前職の会社に事情を丁寧に説明し、協力を求めるのが原則です。それでも難しい場合、東京都・神奈川県・埼玉県など一部の自治体では、前職の会社が当時建設業許可を取得していたこと、かつ本人が当時その会社に厚生年金で加入していたことが確認できれば、前職の押印なしで実務経験を証明できる運用が認められています。個別の事情によっては他の代替資料が必要になるため、行政書士など専門家への相談をおすすめします。


Q.現場作業員としての経験でも10年の実務経験として認められますか?
A.認められます。役職や肩書は問われず、見習い・職人・現場監督など、申請業種の建設工事に携わった技術上の経験はすべて実務経験としてカウントできます。ただし、経理・営業・総務など、技術以外の業務に従事していた期間は実務経験として認められません。


Q.個人事業主として10年以上工事をしてきた場合、実務経験はどのように証明しますか?
A.個人事業主の場合、自分で自分の実務経験を証明することになります。具体的には、各年1件以上の工事について請求書や注文書、それに対応する入金が確認できる通帳の写しなどを用意し、併せて確定申告書の控え(各年分)で事業の継続性を示します。法人勤務の方よりも必要書類が多くなる傾向があるため、早めに資料整理を始めることが重要です。


Q.電気工事業や消防施設工事業でも10年の実務経験で営業所技術者になれますか?
A.電気工事業と消防施設工事業は、無資格者の実務経験だけでは営業所技術者になれない扱いが実務上定着しています。電気工事業は電気工事士法、消防施設工事業は消防法に基づく資格(消防設備士甲種等)が前提となるためです。この2業種を取得したい場合は、該当する国家資格の取得が実質的に必須とお考えください。


建設業許可申請はお任せください

行政書士萩本昌史事務所は、東京都知事許可の10年実務経験ルートでの申請は書類収集が膨大になりますが、事前の資料整理から証明書作成、窓口との事前協議まで一貫してサポートいたします。前職の協力が得られない困難案件もご相談ください。
03-6783-6727お問い合わせフォーム



萩本 昌史(はぎもと まさし)

特定行政書士 / 行政書士萩本昌史事務所

東京都内で建設業許可・経営事項審査を中心に、消防法関連手続き、在留資格、会社設立などを扱う特定行政書士。建設業許可の新規取得から業種追加、決算変更届、更新申請まで、事業者様の許可ライフサイクルを一貫してサポートしている。