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現場専任とは|主任技術者・監理技術者の専任義務と令和7年改正をわかりやすく解説|行政書士萩本昌史事務所
現場専任とは、建設業法第26条第3項に基づき、一定の要件を満たす建設工事について、主任技術者または監理技術者を1つの工事現場に専ら従事させなければならないとする制度です。
「専任」とは、その工事現場に係る職務にのみ従事することを意味します。他の工事現場の技術者を兼ねることや、営業所の技術者を兼ねることは原則としてできません。施工の品質確保と発注者保護の観点から、特に公共性の高い工事や規模の大きな工事では、専任の技術者を配置することが求められています。
建設工事は、現場ごとに地盤・気象・周辺環境・施工方法が異なります。一つの現場に専任技術者を置くことで、施工計画の立案から品質管理、安全管理、工程管理まで一貫した責任体制が確保されます。これは公共工事や大型工事における手抜き工事の防止と、建設業全体の信頼性維持に直結する重要な仕組みです。
根拠条文:建設業法第26条第3項
公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、配置する主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならないと規定されています。
現場専任の対象となるのは、次の2つの要件を両方満たす工事です。
建設業法施行令第27条第1項に列挙された施設・工作物に関する工事が対象です。具体的には次のような工事が該当します。
個人の戸建住宅工事や、小規模な附帯工事を除き、ほとんどの建設工事が「重要な工事」に該当すると考えてよいでしょう。
令和7年2月1日施行の建設業法施行令改正により、専任が必要となる金額要件が引き上げられました。
| 区分 | 改正前(令和7年1月31日まで) | 改正後(令和7年2月1日以降) |
|---|---|---|
| 建築一式工事以外 | 4,000万円以上 | 4,500万円以上 |
| 建築一式工事 | 8,000万円以上 | 9,000万円以上 |
改正のポイント
この改正は、近年の建設資材価格や労務費の高騰を踏まえ、実態に合わせて金額要件を引き上げたものです。基準となるのは「契約締結日」であり、令和7年2月1日以降に締結した契約から新しい金額が適用されます。改正前に締結された契約は、改正前の金額(4,000万円・8,000万円)で判定されます。
金額判定は消費税込みの請負代金額で行います。複数の工事を一括して請け負った場合や、追加変更契約があった場合の判定は複雑になりますので、判断に迷うときは行政書士など専門家にご相談ください。
現場専任の対象となる技術者は、主任技術者または監理技術者です。両者の役割と要件を整理します。
建設業許可業者が請け負ったすべての工事現場に配置義務がある技術者です。請負代金額の大小や元請・下請の立場に関わらず、許可業種の工事を行う場合は必ず配置しなければなりません。営業所の専任技術者と同等の資格要件(指定学科卒業+実務経験、または所定の国家資格)を満たす必要があります。
元請業者が下請に出す金額の合計が一定額以上となる工事現場に、主任技術者に代えて配置する技術者です。令和7年2月1日以降は、下請代金の合計が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)の工事で監理技術者の配置が必要となります(同改正により4,500万円・7,000万円から引上げ)。
監理技術者になれるのは、原則として1級の国家資格者(1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士など)または所定の実務経験者です。特に指定建設業7業種(土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園)では、1級国家資格者または国土交通大臣認定者でなければ監理技術者になれません。指導監督的実務経験では足りない点に注意が必要です。
専任=常駐と誤解されがちですが、両者は異なる概念です。実務上の運用に大きく影響するため正確に理解しましょう。
専任性とは、特定の1つの工事現場の職務にのみ従事することを意味します。他の現場の技術者を兼ねないという「他の業務との関係」を規律する概念です。
常駐性とは、勤務時間中、常にその工事現場に物理的に居続けることを意味します。これに対し、専任技術者は必ずしも常駐を求められているわけではありません。
監理技術者制度運用マニュアルでは、次のような場合は専任技術者が一時的に現場を離れても専任義務違反にはならないとされています。
ただし、現場の品質・安全管理に支障が生じない範囲であることが前提です。長時間の不在や頻繁な離脱は、たとえ研修等の理由があっても専任義務違反と判断される可能性があります。代理者の配置や連絡体制の整備を併せて行うことが望ましいでしょう。
令和6年12月13日施行の改正建設業法により、一定の要件を満たす場合に限り、専任技術者が複数の現場を兼任できる「専任特例」が新設されました。技術者不足への対応と生産性向上を目的とした制度です。
建設業法第26条第3項第1号に基づく特例で、次の6つの要件をすべて満たす必要があります。
従来からあった制度で、各現場に1級技士補等の監理技術者補佐を専任配置することにより、監理技術者は2現場までの兼任が可能となります(建設業法第26条第4項)。主任技術者には適用されません。
令和6年12月改正では、営業所技術者等(旧・営業所専任技術者)が一定の要件を満たす工事の主任技術者・監理技術者を兼務できる特例も新設されました。基本的には専任特例1号と同様の要件で、加えて当該営業所で請負契約が締結された工事であることが必要です。
現場専任義務は、施工体制の信頼性に直結する基本的な義務です。違反した場合は重い処分が科されます。
建設業法第28条に基づき、許可行政庁は次の監督処分を行うことができます。
公共工事の入札参加業者が専任義務に違反した場合、発注者から指名停止処分を受けることがあります。また、経営事項審査においても不誠実な行為として評点に影響する可能性があります。一度の違反が長期的な事業活動に大きな影響を与えるため、徹底した管理が不可欠です。
建設業法違反の中でも特に悪質なケースでは、刑事罰の対象となる可能性もあります。専任義務違反単独で直ちに刑事罰となることは稀ですが、虚偽の届出や報告と組み合わさった場合は罰則の対象となり得ます。
近年、許可行政庁による立入検査や元請による下請の専任技術者チェックが厳格化しています。「専任のはずの技術者が他の現場にいた」「住民票上の住所が遠方で実際には常駐できない」といったケースが摘発される事例も増えていますので、形式的な専任ではなく実態を伴った専任配置を行うことが重要です。
当初契約では4,400万円だった工事が、追加変更契約により4,500万円を超えてしまうケースです。追加変更により金額要件を満たした時点から専任義務が発生しますので、契約金額の管理と専任技術者の配置計画を連動させる必要があります。
専任特例1号を適用していたが、追加契約により請負代金額が1億円以上になってしまうケースです。この場合、その時点から専任特例の適用を受けられなくなりますので、速やかに各現場へ専任技術者を配置し直す必要があります。
専任技術者が急に欠員となった場合、後任者を速やかに配置できなければ施工の継続が困難になります。日頃から後任候補者を育成し、代替体制を整えておくことが望まれます。
令和6年12月の改正で兼務の可能性が広がった一方、要件は複雑化しました。営業所と現場のどちらに重点を置く配置にすべきか、自社の受注状況と技術者数のバランスを見ながら戦略的に判断する必要があります。
令和7年改正・令和6年改正により、現場専任の運用は大きく変化しました。当事務所では建設業許可申請から技術者配置計画、決算変更届、経営事項審査まで、建設業者様の事業運営を一貫してサポートしております。
「自社の工事に専任義務が発生するか確認したい」「専任特例を使いたいが要件判定が難しい」といったご相談を、東京都内の建設業者様を中心に多数お受けしております。まずはお気軽にお問い合わせください。
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