

現場専任の話が混乱する最大の原因は、「専任技術者」という言葉の使い方です。ここを分けておかないと、条文も手引きも読めません。
| 区分 | 正しい呼び方 | 根拠条文 | 置く場所 |
|---|---|---|---|
| 営業所に置く技術者 | 営業所技術者/特定営業所技術者 | 法第7条第2号/法第15条第2号 | 営業所 |
| 工事現場に置く技術者 | 主任技術者/監理技術者 | 法第26条第1項/第2項 | 工事現場 |
そのため、現場に置く技術者を「専任技術者」と呼ぶのは誤りです。正しくは「専任の主任技術者」「専任の監理技術者」です。古い記事や社内書式が「現場の専任技術者」と書いている場合は、営業所の話なのか現場の話なのかを必ず確認してください。
専任とは、他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的にその工事現場に係る職務にのみ従事することをいいます(監理技術者制度運用マニュアル)。施工の品質確保と発注者保護の観点から、公共性が高い工事や規模の大きな工事では、現場ごとに専任の技術者を置くことが求められています。
根拠条文:建設業法第26条第3項本文
公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。
専任が必要になるのは、次の2つを両方満たす工事です。片方だけでは専任義務は生じません。
建設業法施行令第27条第1項が、次の3つの号のいずれかに該当する工事と定めています。
実務上は、個人の戸建住宅に関する工事を除けば、ほぼすべての建設工事が「重要な建設工事」に該当すると考えて差し支えありません。事務所、共同住宅、工場、倉庫まで含まれる点に注意してください。
令和6年12月11日政令第366号により、令和7年2月1日から金額基準が引き上げられました。
| 区分 | 改正前(令和7年1月31日まで) | 改正後(令和7年2月1日以降) |
|---|---|---|
| 建築一式工事以外 | 4,000万円以上 | 4,500万円以上 |
| 建築一式工事 | 8,000万円以上 | 9,000万円以上 |
建設業法施行令第27条第2項により、専任が必要な工事のうち密接な関係のある2以上の建設工事を、同一の建設業者が同一の場所または近接した場所で施工する場合には、同一の専任の主任技術者がこれらの工事をまとめて管理することができます。
ただしこの規定が使えるのは主任技術者だけで、監理技術者には適用されません。また「密接な関係」「近接した場所」の判断は許可行政庁の確認が必要です。
建設業者が請け負ったすべての建設工事の現場に置かなければならない技術者です。請負代金額の大小や元請・下請の別を問いません。資格要件は法第7条第2号イ・ロ・ハ(指定学科の卒業+実務経験、10年の実務経験、または所定の国家資格等)で、営業所技術者と同じ基準です。
例外として、特定専門工事(法第26条の3)に該当する場合には、元請等が置く主任技術者が下請の主任技術者の職務を併せて行うことで、下請負人は主任技術者を置かないことができます。対象は型枠工事・鉄筋工事で、下請代金の合計が4,500万円未満などの要件があります(施行令第31条)。
発注者から直接請け負った特定建設業者が、下請契約の請負代金の合計額が政令の金額以上になる場合に、主任技術者に代えて置く技術者です。令和7年2月1日以降は、下請代金の合計が5,000万円以上(建築工事業は8,000万円以上)で監理技術者の配置が必要になります(施行令第2条。同改正により4,500万円・7,000万円から引上げ)。資格要件は法第15条第2号イ・ロ・ハです。
土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種(指定建設業)では、監理技術者になれるのは1級の国家資格者(法第15条第2号イ)または国土交通大臣認定者(同号ハ)に限られます。指導監督的実務経験(同号ロ)では監理技術者になれません。
専任でなければならない監理技術者は、監理技術者資格者証の交付を受けており、かつ国土交通大臣の登録を受けた監理技術者講習を受講した者のうちから選任しなければなりません(法第26条第5項)。専任特例の適用を受ける監理技術者も同様です。
なお、平成28年6月1日以降、講習の修了履歴は監理技術者資格者証の裏面に貼付され1枚に統合されています。講習修了証を別に携帯する必要はなく、資格者証だけで要件を確認できます。発注者から請求があったときに提示義務があるのは「監理技術者資格者証」です(法第26条第6項)。
専任=常駐と誤解されがちですが、両者は別の概念です。
監理技術者制度運用マニュアルでは、適正な施工ができる体制(連絡体制の確保等)が確保されていることを前提に、次のような合理的な理由による短期間の離脱は差し支えないとされています。
専任の期間は契約工期が基本ですが、監理技術者制度運用マニュアルは、次の期間については契約工期中であっても専任を要しないとしています。①③④は発注者と建設業者の間で書面等により明確にされている場合です。
令和6年12月13日施行の改正建設業法により、専任義務の例外が整理されました。制度は3種類あり、兼任できる現場数が違います。ここを取り違えると違反になります。
| 制度 | 根拠 | 対象 | 請負代金額 | 兼任できる現場数 |
|---|---|---|---|---|
| 専任特例1号(情報通信技術の活用) | 法第26条第3項第1号 | 主任技術者・監理技術者 | 1億円未満(建築一式2億円未満) | 2現場まで |
| 専任特例2号(監理技術者補佐の配置) | 法第26条第3項第2号 | 監理技術者のみ | 制限なし | 2現場まで |
| 営業所技術者等の職務の特例 | 法第26条の5 | 営業所技術者・特定営業所技術者 | 1億円未満(建築一式2億円未満) | 1現場のみ |
法第26条第3項第1号イ〜ハに基づく特例で、次の要件をすべて満たす必要があります。
要件を一つでも満たさなくなった時点で特例は使えなくなります。「6つの要件」と紹介している解説もありますが、下請次数の制限、施工体制確認システム、人員配置計画書の3点が抜けていることが多いので、自社で判断する前に必ず条文と省令を確認してください。
各現場に監理技術者補佐(1級技士補等。施行令第29条)を専任で置くことにより、監理技術者は2現場まで兼任できます(法第26条第3項第2号、第4項、施行令第30条)。この特例を使う監理技術者を特例監理技術者といいます。主任技術者には適用されません。
営業所技術者・特定営業所技術者が、現場の主任技術者・監理技術者の職務を兼ねられる特例です。次の要件をすべて満たす必要があります。
兼ねられる工事現場は「1」です(法第26条の5第2項、施行令第34条)。専任特例1号の「2現場まで」と混同しないでください。また、監理技術者の職務を兼ねる特定営業所技術者は、監理技術者資格者証の交付を受け、かつ監理技術者講習を受講した者でなければなりません(同条第3項)。
ここは「指示・営業停止・取消のどれか」と曖昧に書かれることが多い部分ですが、東京都は量定を基準で公表しています。
東京都「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」(令和8年1月7日施行・7都市建建第1235号)は、技術者に関する違反を次のとおり区別しています。
| 違反の内容 | 東京都の処分基準 |
|---|---|
| 法第26条に違反して主任技術者・監理技術者を置かなかったとき(資格要件を満たさない者を置いたときを含む。特定専門工事で下請が置くことを要しない場合を除く) | 営業停止処分(原則15日以上) |
| 虚偽の実務経験証明により不正に資格・監理技術者資格者証を取得した者を、主任技術者・監理技術者として現場に置いていた場合 | 営業停止処分(原則30日以上) |
| 現場に置かれた主任技術者・監理技術者が、法第26条第3項(または法第26条の3第7項第2号)の専任義務に違反する場合 | 指示処分(原則) |
| 上記の指示処分に従わない場合 | 営業停止処分(原則7日以上) |
許可の取消しの根拠は第28条ではなく第29条です。指示・営業停止(第28条)と取消し(第29条)は別条文なので、社内資料や誓約書の引用条文にご注意ください。
建設業法第52条第1号は、「第26条第1項から第3項まで又は第26条の3第7項の規定による主任技術者又は監理技術者を置かなかつたとき」に100万円以下の罰金を科すと定めています。第26条第3項=専任義務も、この対象に含まれます。
さらに法第53条(両罰規定)により、法人の代表者や従業者が違反行為をしたときは、行為者を罰するほか法人にも100万円以下の罰金が科されます。
また、営業停止処分に違反して営業を続けた場合は、法第47条第1項第3号により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)です。令和7年6月1日の刑法等改正により「懲役」は「拘禁刑」に改められています。
監督処分を受けると、発注機関から指名停止を受けることがあります。また経営事項審査では、その他の審査項目(社会性等・W点)の「建設業の営業継続の状況」において、営業停止処分・指示処分を受けた場合に減点されます。指名停止そのものが経審の減点項目なのではなく、監督処分を受けたことが減点につながる点を正確に押さえてください。
当初契約4,400万円(税込)の工事が、追加変更契約により4,500万円を超えるケースです。変更後の請負代金額で判定されるため、その時点から専任配置が必要になります。契約金額の管理と技術者の配置計画を必ず連動させてください。特に税抜で管理している会社は要注意です。
専任特例1号を適用していたが、追加契約で請負代金額が1億円以上になった、下請次数が4次に伸びた、連絡員が退職した、といったケースです。要件を欠いた時点で特例は使えなくなり、各現場に専任の技術者を配置し直す必要があります。人員配置計画書の更新も忘れずに行ってください。
専任特例1号(2現場まで)と混同し、営業所技術者に2現場を兼務させてしまう誤りです。法第26条の5の特例で兼ねられるのは1現場のみです。営業所を空にできない以上、当然の制限といえます。
専任の技術者が欠けた状態は、法第26条の不設置として原則15日以上の営業停止の対象になり得ます。日頃から後任候補を育成し、資格者証・講習の有効期限も含めた代替体制を整えておくことが必要です。
「専任のはずの技術者が別の現場にいた」「常勤性が確認できない」といった事例は、立入検査(法第31条)や元請による下請の技術者確認で発覚します。施工体制台帳・現場標識・出勤記録・工事日報の整合を取り、実態を伴った配置を行ってください。
令和7年2月1日以降に締結した請負契約では、請負代金額が4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)の重要な建設工事について、主任技術者または監理技術者の専任配置が必要です。令和7年1月31日までに締結した契約は、改正前の4,000万円(建築一式8,000万円)で判定します。金額は消費税込みです。
原則として兼任できません。ただし令和6年12月13日施行の改正建設業法により、請負代金額が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)の工事について、情報通信技術の活用、連絡員の配置、下請次数3以内、人員配置計画書の作成保存などの要件をすべて満たす場合に限り、2現場までの兼任(専任特例1号)が認められます。要件を一つでも欠いた時点で特例は使えなくなります。
建設業法第26条の5の特例により、当該営業所で締結した請負契約に係る工事であること、請負代金額が1億円未満(建築一式2億円未満)であることなどの要件を満たす場合に兼ねることができます。ただし兼ねられる工事現場は1現場のみです(施行令第34条)。専任特例1号の「2現場まで」とは異なります。
東京都「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」(令和8年1月7日施行)では、専任義務違反は原則として指示処分、その指示に従わない場合は原則7日以上の営業停止処分とされています。そもそも技術者を置かなかった場合は原則15日以上の営業停止処分です。さらに建設業法第52条第1号により100万円以下の罰金、法第53条により法人にも同額の罰金が科され得ます。
監理技術者制度運用マニュアルでは、適正な施工ができる体制(連絡体制の確保等)を前提に、技術研修・講習・試験等への参加、休暇の取得、その他合理的な理由による短期間の離脱は差し支えないとされています。そもそも専任は常駐を意味しません。ただし長時間の不在や頻繁な離脱は違反と判断される可能性があります。
あります。下請であっても、自社が請け負った工事の請負代金額が4,500万円以上(建築一式9,000万円以上)の重要な建設工事であれば、自社が置く主任技術者を専任にする必要があります。元請が監理技術者を専任配置していても、下請の専任義務は別に判定されます。なお、型枠工事・鉄筋工事の特定専門工事(法第26条の3)に該当する場合は、下請が主任技術者を置かないことができる例外があります。
契約工期が基本ですが、監理技術者制度運用マニュアルにより、①現場施工に着手するまでの期間、②工事を全面的に一時中止している期間、③工場製作のみが行われている期間、④検査終了後に事務手続・後片付けのみが残っている期間は、専任を要しないとされています。①③④は発注者との間で書面等により明確にしておく必要があります。
令和7年2月の金額改正と令和6年12月の専任特例により、技術者配置の判断は複雑になりました。当事務所では、建設業許可の新規・更新から技術者配置計画、決算変更届、経営事項審査まで、東京都内の建設業者様を中心に一貫してサポートしております。
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