建設業許可の条件と要件|6つの許可要件と東京都の申請手続を行政書士が解説

建設業許可の条件と要件|6つの許可要件と東京都の申請手続を行政書士が解説

建設業許可の条件と要件を、東京の特定行政書士が条文と東京都の手引にそって解説。経営業務の管理責任者、営業所技術者、誠実性、財産的基礎、欠格要件、社会保険加入という6つの許可要件と、軽微な建設工事の範囲、令和7年2月1日の金額改正、東京都の手数料・標準処理期間までまとめました。

「建設業許可を取りたいが、何から準備すればよいのかわからない」「自社が要件を満たしているのか判断できない」——建設業者の方から、いちばん多くいただくご相談です。建設業許可は、書類を整えれば下りるものではありません。建設業法第7条・第8条・第15条が定める要件を、申請の時点ですべて満たしていることが前提になります。

この記事では、東京都知事許可を前提に、建設業許可の取得要件を条文と東京都の手引にそって整理します。令和7年2月1日施行の金額改正、令和6年12月13日の「営業所技術者」への呼称変更、令和7年6月1日の拘禁刑への一本化まで反映しています。読み終えたときに、自社がいま申請できるのか、できないなら何が足りないのかが判断できる状態を目指します。

この記事の結論
  • 建設業許可の要件は6つです。経営業務の管理責任者/営業所技術者/誠実性/財産的基礎/欠格要件に該当しないこと/社会保険への加入(令和2年10月1日から要件化)。
  • 許可が要るかどうかの分かれ目は「軽微な建設工事」を超えるかです。建築一式は1件1,500万円未満(または木造住宅で延べ面積150㎡未満)、それ以外は1件500万円未満(いずれも消費税込)。
  • 特定建設業が必要になる下請代金は、令和7年2月1日から5,000万円(建築一式8,000万円)に引き上げられました。
  • 実務でつまずくのは、要件そのものより要件を裏づける書類です。とくに経管の経営経験と、営業所技術者の10年実務経験。
  • 東京都知事許可の標準処理期間は受付後25日(閉庁日を除く)。準備を含めた全体では2〜4か月を見込んでください。

建設業許可とは|法第3条と29業種

建設業許可とは、建設業法第3条第1項に基づく、建設工事の請負を業として行うための許可です。建設業法は、建設業を営む者の資質の向上と請負契約の適正化を通じて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護することを目的としています(法第1条)。その中核にあるのが許可制度です。

許可は全29業種に分かれています。土木一式工事業・建築一式工事業という2つの一式工事業と、大工工事業、左官工事業、電気工事業、管工事業、消防施設工事業などの27の専門工事業です(法第3条第2項、別表第一)。営業しようとする業種ごとに、それぞれ許可が必要です。

許可の有効期間は5年で、5年ごとに更新を受けなければ期間の経過によって効力を失います(法第3条第3項)。取得して終わりではなく、維持する制度だという点は最初に押さえてください。

POINT

「一式工事の許可があれば専門工事もできる」という誤解が根強くあります。東京都の手引も、土木工事業・建築工事業の許可があっても、各専門工事業の許可がなければ軽微ではない専門工事を単独で請け負うことはできないと明記しています。内装の許可だけで電気工事を500万円以上請け負えば、電気工事業の無許可営業です。事業計画の段階で、必要な業種を洗い出しておいてください。

許可が必要になる工事の範囲|軽微な建設工事

建設業許可は、すべての建設工事に必要なわけではありません。建設業法施行令第1条の2が定める「軽微な建設工事」だけを請け負う場合は、許可がなくても営業できます(法第3条第1項ただし書)。逆にいえば、これを1円でも超える工事を請け負うなら許可が必要です。

軽微な建設工事の範囲

軽微な建設工事の範囲(建設業法施行令第1条の2第1項)
工事の種類軽微な建設工事の範囲
建築一式工事1件の請負代金が1,500万円未満の工事、または請負代金の額にかかわらず延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
建築一式工事以外の建設工事1件の請負代金が500万円未満の工事

金額はいずれも取引に係る消費税および地方消費税を含んだ額です。また「木造住宅」とは、主要構造部が木造で、延べ面積の2分の1以上を居住の用に供するものをいいます。

注意

金額の判定には、見落とされがちな2つのルールがあります(施行令第1条の2第2項・第3項)。

  1. 分割契約は合算されます。1つの工事を2以上の契約に分けて請け負ったときは、各契約の請負代金の合計額で判定します。正当な理由に基づいて分割した場合を除きます。「400万円の契約を2本にすれば許可は要らない」という話は成り立ちません。
  2. 注文者が材料を提供する場合は加算されます。その材料の市場価格および運送費を請負代金に加えた額で判定します。材料費を外して500万円未満に収めたつもりでも、許可が必要と判断されます。

無許可で請け負ってしまった場合の罰則

許可を受けずに軽微な建設工事を超える工事を請け負うと、建設業法第47条第1項第1号により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処せられます。情状により、拘禁刑と罰金を併科されることもあります(同条第2項)。法人には両罰規定により1億円以下の罰金が科される場合もあります(法第53条)。

罰則以上に現実的なリスクは、受注機会の喪失です。軽微な工事しか請け負わないつもりでも、元請から取引条件として許可を求められる場面は年々増えています。詳しくは建設業許可の名義貸しもあわせてご覧ください。

大臣許可と知事許可|「契約する場所」で決まる

建設業許可は、営業所の所在地によって許可を出す行政庁が分かれます。この区分は営業所の所在地だけで決まり、工事を施工できる地域とは関係ありません(法第3条第1項)。

大臣許可と知事許可の区分(建設業法第3条第1項)
区分該当する場合
都道府県知事許可1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業する場合。営業所が東京都内のみであれば東京都知事許可です。
国土交通大臣許可2以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業する場合。本店が東京都、支店が神奈川県という場合は大臣許可になります。
よくある誤解

「東京都知事許可でも全国の工事を請け負える」という説明を見かけますが、正確ではありません。東京都の手引は次のように整理しています。

  • 東京都知事許可の業者が営業活動(見積・入札・契約の締結)を行えるのは、東京都内の本支店だけです。
  • その本支店で締結した契約に基づく工事であれば、施工は営業所のない他の道府県でも行えます
  • さらに、その業種の許可を持っている業者が他の道府県の本支店で契約する場合は、軽微な建設工事であっても大臣許可が必要になります。

つまり「施工は全国どこでも/契約は許可を受けた都道府県の営業所で」と覚えてください。

許可取得後に他県へ営業所を移転・新設する場合は、許可換え新規申請が必要です。詳しくは建設業許可の新規申請で解説しています。

一般建設業と特定建設業|令和7年2月1日の金額改正

建設業許可は、下請契約の規模によって「一般建設業」と「特定建設業」に区分されます。発注者から直接請け負った1件の工事(元請工事)について、一定額以上の下請契約を締結する場合に、特定建設業の許可が必要になります(法第3条第1項第2号)。なお、同一の業種について一般と特定の両方の許可を受けることはできません。

区分の判定基準(令和7年2月1日改正)

令和7年2月1日施行の建設業法施行令改正(令第2条)により、特定建設業が必要となる下請発注金額の基準が引き上げられました。

特定建設業許可が必要になる下請代金の基準(建設業法施行令第2条)
工事の種類改正前(〜令和7年1月31日)改正後(令和7年2月1日〜)
建築一式工事7,000万円以上8,000万円以上
建築一式工事以外4,500万円以上5,000万円以上

下請契約が2以上あるときは、下請代金の額の総額で判定します(法第3条第1項第2号)。

注意

この金額は短期間に2度引き上げられています。令和5年1月に4,000万円・6,000万円から4,500万円・7,000万円へ、令和7年2月1日にさらに5,000万円・8,000万円へ。古い解説記事には旧基準が残っているため、必ず施行日と数字をセットで確認してください。

判定を間違えないための3つの視点

  1. 対象は「元請として受注した工事を下請に出した金額」だけです。自社施工分や、下請として受注した工事をさらに孫請けに出す分は含みません。
  2. 元請として請け負う金額そのものに上限はありません。自社直接施工が中心なら、一般建設業のまま大規模工事を受注できます。
  3. 特定建設業は下請保護の観点から要件が厳格です。差が大きいのは財産的基礎技術者の資格要件です。

取得に必要な6つの要件

建設業許可を受けるには、建設業法第7条(一般建設業)・第15条(特定建設業)の許可基準を満たし、かつ第8条の欠格要件に該当しないことが必要です。東京都の手引はこれを次の6項目に整理しています。

建設業許可の6要件と根拠条文
#要件根拠条文
経営業務の管理を適正に行うに足りる能力(常勤役員等=経管)法第7条第1号、施行規則第7条第1号
営業所ごとに営業所技術者を専任で置くこと法第7条第2号/法第15条第2号
請負契約に関して誠実性を有すること法第7条第3号/法第15条第1号
請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用法第7条第4号/法第15条第3号
欠格要件のいずれにも該当しないこと法第8条
適切な社会保険に加入していること法第7条第1号、施行規則第7条第2号
POINT

「建設業許可の5要件」と書かれた解説が今も多く残っていますが、令和2年10月1日から社会保険への加入が許可要件に加わり、現在は6要件です。社会保険が未加入のままでは、他の5つを完璧に満たしていても許可は下りません。最初に確認すべきは、実は⑥です。

この6つのうち、準備に時間がかかるのは①経管②営業所技術者です。どちらも「要件を満たす人がいるか」だけでなく「その経験・資格を書類で証明できるか」が問われるためです。

要件①|経営業務の管理責任者(常勤役員等)

経営業務の管理責任者(実務では「経管(けいかん)」)とは、営業取引上、対外的に責任を有する地位にあって、建設業の経営業務を総合的に管理した経験を有する者をいいます。建設業の経営は、契約締結・見積・入札対応・資金調達・人員配置といった判断の連続であるため、これを統括できる人材の常勤配置が要件とされています。

経管になれる地位

まず、次のいずれかの地位にあることが必要です。

  1. 法人:常勤の役員等(持分会社の業務を執行する社員、株式会社・有限会社の取締役、指名委員会等設置会社の執行役、法人格のある各種組合等の理事など)
  2. 個人事業:事業主本人、または登記された支配人

監査役、会計参与、監事、事務局長は「役員等」に含まれず、経管になれません。他社の常勤役員・代表取締役・清算人との兼任もできません(常勤性の要件に反するため)。

執行役員の扱い

執行役員は原則として役員等に含まれませんが、取締役会設置会社において、取締役会の決議を経て取締役会または代表取締役から具体的な権限委譲を受けた執行役員等は、施行規則第7条第1号イ(2)の「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者」に該当しえます。一律に不可ではないため、該当しそうな場合は取締役会議事録の有無から確認してください。

経験の要件(令和2年10月改正以降)

令和2年10月1日の改正により、経管の要件は「1人で満たす型」と「チームで満たす型」の2本立てになりました。

パターンA|常勤役員等が1人で満たす(施行規則第7条第1号イ)

  1. 建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有する者
  2. 建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者
  3. 建設業に関し6年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって、経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者

パターンB|常勤役員等+直接補佐者のチーム体制(施行規則第7条第1号ロ)

常勤役員等のうち1人が次の(1)または(2)に該当し、かつ、その者を直接に補佐する者を置く形でも要件を満たせます。

  1. 建設業に関し2年以上の役員等としての経験があり、かつ、この期間と合わせて通算5年以上、役員等または役員等に次ぐ職制上の地位(財務管理・労務管理・業務運営の業務を担当するものに限る)としての経験を有する者
  2. 5年以上の役員等としての経験があり、かつ、建設業に関し2年以上の役員等としての経験を有する者

直接補佐者には、財務管理・労務管理・業務運営のそれぞれについて、申請者における建設業の業務経験を5年以上有する者を置きます。ここには実務上きびしい制約があります。

  • 他社での業務経験は使えません。自社(申請者)での経験に限られます。
  • 3分野を1人で兼ねることは、経験を証明できれば可能です。
  • ただし補佐される常勤役員等(経管)本人が兼ねることはできません。
改正で何が変わったか

改正前は「許可を受けようとする建設業に関し5年以上、それ以外の建設業に関しては7年以上」という業種による区分がありました。改正後は業種を問わず一律5年以上の建設業の経営経験で足ります。また、補佐経験による要件も7年から6年に短縮されました。業種をまたいでキャリアを積んできた経営者にとって、ハードルは確実に下がっています。

常勤性の証明方法や、経験年数の数え方については経営業務の管理責任者の要件|常勤性の証明方法で詳しく解説しています。

要件②|営業所技術者(旧・専任技術者)

営業所技術者とは、建設工事の請負契約の締結および履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者で、営業所ごとに専任で置かれる技術者をいいます(法第7条第2号)。令和6年12月13日施行の改正建設業法により、従来の「専任技術者」から「営業所技術者」へ呼称が変更されました。特定建設業では「特定営業所技術者」といいます(法第15条第2号)。

専任性の要件

「専任」とは、その営業所に常勤し、もっぱらその職務に従事することをいいます。次のような場合は専任と認められません。

  1. 他社の常勤役員・代表取締役・清算人となっている
  2. 他社の技術者となっている
  3. 同一法人であっても、他の営業所の営業所技術者を兼ねている
  4. 住所が営業所から著しく遠距離で、常識上通勤が不可能である
  5. 他に個人営業を行っている

また、管理建築士や宅地建物取引士など、他の法令で専任性を要するとされる資格との兼務もできません(同一法人の同一営業所である場合を除く)。この点は見落とされがちです。

一方で、同一営業所内であれば認められる兼務もあります。

  • 1人で複数業種の営業所技術者を兼ねること(資格要件を満たしている場合)
  • 経管・直接補佐者・令3条の使用人と営業所技術者を1人で兼ねること(双方の基準を満たす場合)

ただし、同一営業所内で同一業種について複数の営業所技術者を置くことはできません。「予備の技術者」を届出上つくることはできない、ということです。

一般建設業の営業所技術者になるための3つのルート

一般建設業の営業所技術者の要件(建設業法第7条第2号)
類型要件の内容
指定学科+短期実務(イ)許可業種に対応する指定学科を修めて、高等学校・中等教育学校卒業後5年以上、または大学・高等専門学校卒業後3年以上の実務経験
長期実務経験(ロ)許可業種に関する建設工事について10年以上の実務経験
国家資格等(ハ)1級・2級の施工管理技士(建築・土木・電気工事・管工事等)、技術士、建築士など、業種ごとに定められた資格

特定建設業の特定営業所技術者は2ルートある

特定建設業では要件が厳しくなりますが、1級国家資格だけが道ではありません。法第15条第2号は次の2つを認めています。

  1. :業種ごとに定められた国家資格(1級施工管理技士、1級建築士、技術士など)に合格・免許を受けた者
  2. :法第7条第2号イ〜ハに該当する者のうち、許可を受けようとする業種の建設工事で、発注者から直接請け負い(元請)、請負代金が政令で定める金額以上のものについて2年以上の指導監督的な実務経験を有する者

「指導監督的な実務経験」とは、建設工事の設計または施工の全般について、元請として工事現場主任・工事現場監督のような立場で技術面を総合的に指導した経験をいいます。

指定建設業7業種は例外

土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種(指定建設業)については、施工技術の総合性が考慮されるため、上記ロの指導監督的実務経験だけでは特定建設業の許可を受けられません(法第15条第2号ただし書)。1級の国家資格、技術士資格、または国土交通大臣認定が必要です。

10年実務経験で証明する場合の現実

実務経験で要件を満たす場合、その経験を裏づける書類(在籍を示す資料、契約書、請求書、注文書、工事台帳等)を原則として経験年数分すべて用意する必要があります。10年分の請求書を過去の勤務先から集める作業は、想像よりはるかに時間がかかります。許可取得を検討し始めた段階で着手してください。→ 10年実務経験の証明方法

要件③|財産的基礎・金銭的信用

建設工事は契約から完成・引渡しまでが長く、資材費・人件費の先行支出が避けられません。そのため、契約を確実に履行できるだけの財務的裏づけが要件とされています。一般建設業と特定建設業で内容が大きく異なります。

一般建設業(次のいずれか1つ)

  1. 自己資本の額が500万円以上あること。法人は直前の確定した貸借対照表の「純資産合計」、個人は期首資本金・事業主借勘定・事業主利益の合計から事業主貸勘定を控除した額などで判断します。
  2. 500万円以上の資金調達能力があること。申請者名義の口座について、取引金融機関が発行した預金残高証明書または融資証明書で判断します。
  3. 直前5年間、東京都知事許可を受けて継続して営業した実績があること。

新規申請の多くは②の残高証明書で対応します。証明日(「○月○日現在」)から1か月以内のものが有効です。なお③は東京都知事許可の実績に限られる点に注意してください。

特定建設業(次のすべて)

  1. 欠損の額が資本金の額の20%を超えないこと
  2. 流動比率が75%以上であること
  3. 資本金の額が2,000万円以上であること
  4. 自己資本の額が4,000万円以上であること

判定は申請時直前の確定した貸借対照表(定時株主総会の承認を得たもの)で行います。特定建設業は5年ごとの更新のたびに、この4項目を改めて満たしていることが求められます。決算の内容が要件を割ると更新できなくなるため、決算対策を許可維持の視点で組み立てる必要があります。→ 建設業財務諸表と一般の財務諸表の違い

要件④|誠実性

誠実性とは、請負契約の締結または履行に際して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことをいいます(法第7条第3号)。東京都の手引は、2つを次のように定義しています。

  • 不正な行為:請負契約の締結または履行の際の詐欺、脅迫、横領など法律に違反する行為
  • 不誠実な行為:工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担など、請負契約に違反する行為

判断の対象は、法人の場合は当該法人・役員等・令3条の使用人、個人の場合は本人・令3条の使用人です。建築士法、宅地建物取引業法等の規定により、不正または不誠実な行為を理由に免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しない者は、原則として「おそれが明らかな者」として取り扱われます。

この要件は、他の要件と違って積極的に証明する書類がありません。誓約書と登記事項証明書等により「該当しないこと」を確認する形で審査されます。

要件⑤|欠格要件に該当しないこと

建設業法第8条は、許可をしてはならない事由(欠格要件)を第1号から第14号まで列挙しています。申請者本人、法人の役員等、令3条の使用人、法定代理人のいずれか1人でも該当すれば、会社全体として許可は受けられません。あわせて、許可申請書やその添付書類に重要な事項の虚偽記載・記載の欠落があるときも許可されません(同条柱書)。

建設業法第8条の主な欠格要件
内容
第1号破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
第2号不正の手段により許可を受けたこと等により許可を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者
第3号・第4号許可取消処分の聴聞通知を受けた後に廃業の届出をし、届出から5年を経過しない者(通知日前60日以内の役員等を含む)
第5号・第6号営業停止を命ぜられ、または営業を禁止され、その期間が経過しない者
第7号拘禁刑以上の刑に処せられ、刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
第8号建設業法、施行令第3条の2で定める法令、暴力団対策法に違反し、または刑法の一定の罪等を犯して罰金の刑に処せられ、5年を経過しない者
第9号暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
第10号心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの
第14号暴力団員等がその事業活動を支配する者
古い解説にご注意ください

「成年被後見人・被保佐人」を欠格要件として挙げている記事がいまだに多くあります。これは令和元年法律第37号により削除された、改正前の条文です。現在の第1号は「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」のみで、成年被後見人等については第10号「心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの」という個別判断の規定に置き換わっています。医師の診断書等により、認知・判断・意思疎通を適切に行えると認められれば、欠格事由には該当しません。

第8号の「政令で定める法令」とは

罰金刑が欠格事由になる法令は、建設業法施行令第3条の2により次の7法令に限定されています。

  • 建築基準法
  • 宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法。令和5年5月26日に「宅地造成等規制法」から改称)
  • 都市計画法
  • 景観法
  • 労働基準法
  • 職業安定法
  • 労働者派遣法

これに加えて、暴力団対策法違反、および刑法第204条(傷害)・第206条(現場助勢)・第208条(暴行)・第208条の2(凶器準備集合等)・第222条(脅迫)・第247条(背任)の罪、暴力行為等処罰に関する法律の罪による罰金刑も対象です。逆にいえば、道路交通法違反の罰金などはここに含まれません。

拘禁刑への一本化(令和7年6月1日)

令和4年法律第67号(刑法等の一部を改正する法律)が令和7年6月1日に施行され、「懲役」と「禁錮」は拘禁刑に一本化されました。これに伴い、建設業法第8条第7号も「禁錮以上の刑」から「拘禁刑以上の刑」に改められています。改正されたのは刑法であって建設業法の制度そのものではありませんが、条文の表記は変わっているため、古い記述をそのまま引用しないよう注意してください。

更新申請では審査範囲が狭くなる

法第8条柱書により、許可の更新を受けようとする者については、第1号または第7号から第14号までのいずれかに該当するかどうかが審査されます。新規申請より対象が限定されている点は、実務で知っておくと役に立ちます。→ 建設業許可の欠格要件|前科・執行猶予・罰金と役員の範囲

要件⑥|社会保険への加入

令和2年10月1日施行の改正により、適切な社会保険への加入が許可要件になりました(法第7条第1号、施行規則第7条第2号)。具体的には、次の3つのすべてに該当することが求められます。

  1. 健康保険:適用事業所に該当するすべての営業所について、健康保険法施行規則第19条第1項の届出を提出していること
  2. 厚生年金保険:適用事業所に該当するすべての営業所について、厚生年金保険法施行規則第13条第1項の届出を提出していること
  3. 雇用保険:適用事業の事業所に該当するすべての営業所について、雇用保険法施行規則第141条第1項の届出を提出していること

確認は、健康保険・厚生年金保険の保険料領収証書または納入証明書、雇用保険の労働保険概算・確定保険料申告書と領収証書などで行います。適用除外の場合は、その理由を示す資料が必要です。

最初に確認すべきはここ

経管や営業所技術者の証明資料を何か月もかけて集めた後で、社会保険が未加入だと判明する——これがいちばん避けたい展開です。社会保険は「加入していれば1日で証明できる/未加入なら遡及して数十万円〜数百万円かかる」という性質の要件です。要件確認は、⑥から始めてください。

営業所として認められるための6つの条件

ここまでの要件は「営業所」を前提としています。建設業法上の営業所とは、請負契約の締結に関する実体的な行為(見積り・入札・契約等)を行う事務所をいいます(法第3条第1項、施行令第1条)。単なる登記上の本店、請求・入金等の事務作業だけを行う事務連絡所、工事現場事務所、資材置き場は営業所に該当しません。

東京都の手引は、営業所として認められるための要件を次の6つとしています。

営業所の要件(東京都「建設業許可申請・変更の手引」)
要件
外部から来客を迎え入れ、請負契約の締結等の実体的な業務を行っていること
電話・机・各種事務台帳等を備え、契約締結等ができるスペースがあり、他法人・他の個人事業主の事務室等と間仕切り等で明確に区分されていること(業務用の携帯電話も可)
常勤役員等(経管)または令3条の使用人が常勤していること
営業所技術者等が専任の者として常勤していること
営業用事務所としての使用権原を有すること(自己所有または賃貸借契約。住居専用契約は原則不可、都営住宅・UR等の公的賃貸住宅は原則不可)
看板・標識等により、外部から建設業の営業所であることが分かる表示があること

ウとエはどちらか一方ではなく、両方必要です。また、テレワークを活用する場合でも営業所の要件は変わりません。営業所に常勤している場合と同様に業務が行える環境であること、社会通念上通勤可能な距離であることが求められ、必要に応じて連絡体制や勤怠管理方法が確認されます。

自宅兼事務所やバーチャルオフィスの可否については、建設業許可の営業所要件|自宅・賃貸・バーチャルオフィスの注意点で詳しく解説しています。

東京都知事許可の申請の流れ・手数料・期間

申請の流れ

東京都知事許可(新規)の標準的な流れ
段階内容目安
① 要件確認6要件をすべて満たすかを精査。社会保険の加入状況、経管・営業所技術者の裏づけ資料の有無を確認1〜2週間
② 書類収集登記事項証明書、納税証明書、身分証明書、登記されていないことの証明書、財務書類、資格証、実務経験の裏づけ資料等2〜4週間
③ 申請書作成許可申請書、別紙、確認資料一式を作成・整備1〜2週間
④ 申請都庁第二本庁舎3階南側の建設業課①番窓口へ提出(新規は窓口審査が必須)。予約制あり当日
⑤ 審査東京都による審査。標準処理期間は受付後25日(閉庁日を除く)約1か月〜1か月半
⑥ 許可許可通知書は主たる営業所へ郵送(窓口交付なし・転送不要扱い)

準備開始から許可取得までは、2〜4か月程度を見込んでください。経管・営業所技術者の経験書類が散逸していたり、過去の在籍法人の協力が必要な場合は、さらに時間を要します。

手数料と納付方法

東京都知事許可の申請手数料(令和7年度)
申請区分手数料
新規、許可換え新規、般・特新規9万円
業種追加、更新5万円

一般建設業と特定建設業を同時に新規申請する場合は9万円+9万円で18万円、業種追加と更新を同時に申請する場合は5万円+5万円で10万円というように加算されます。納付方法は次のとおりです。

  • 窓口:現金またはキャッシュレス決済
  • 郵送:現金書留、またはPay-easy対応の納入通知書
  • 電子申請(JCIP):Pay-easy
「東京都の収入証紙」は存在しません

東京都収入証紙は平成22年3月31日で廃止されています。「収入証紙で納付」と書かれた解説が今も残っていますが、現在は上記の方法のみです。なお、いったん納付された手数料は、申請を取り下げても還付されません。

郵送と電子申請の可否

東京都では、新規申請・許可換え新規・般特新規・認可申請は郵送対応の対象外で、窓口審査が必須です。郵送で受け付けられるのは、更新申請、許可要件にかからない変更届、決算報告、全部廃業届などに限られます。

国土交通省のJCIP(建設業許可・経営事項審査電子申請システム)による電子申請にも東京都は対応していますが、利用にはGビズIDプライムが必要で、東京都独自の制限もあります。詳しくは建設業許可の電子申請(JCIP)をご覧ください。

要件を満たしているかどうかだけでも、お確かめください

「経管の経験は足りているか」「10年分の請求書がないが証明できるか」「社会保険は大丈夫か」——判断に迷う部分だけのご相談でも構いません。初回のご相談は無料で承っています。

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よくある質問

建設業許可がなくても請け負える工事はありますか。
あります。建築一式工事は1件1,500万円未満(または延べ面積150㎡未満の木造住宅)、それ以外の工事は1件500万円未満であれば、許可がなくても請け負えます。これを「軽微な建設工事」といいます。ただし、1つの工事を2以上の契約に分割したときは合計額で判定され、注文者が材料を提供する場合はその市場価格と運送費を加算して判定します。
建設業許可の要件は5つですか、6つですか。
6つです。経営業務の管理責任者、営業所技術者、誠実性、財産的基礎、欠格要件に該当しないこと、そして適切な社会保険への加入です。社会保険の加入は令和2年10月1日から許可要件になりました(建設業法第7条第1号、施行規則第7条第2号)。「5要件」と書かれた解説は改正前の情報です。
経営業務の管理責任者は他の会社の役員と兼任できますか。
他社の常勤役員・代表取締役・清算人との兼任はできません。経管には申請会社での常勤性が求められるためです。他社の非常勤役員であれば問題になりませんが、常勤性を疑われないよう資料の整合には注意が必要です。なお、同一営業所内であれば、経管と営業所技術者を1人で兼ねることは可能です。
10年の実務経験だけで営業所技術者になれますか。
なれます。許可を受けようとする業種の建設工事について10年以上の実務経験があれば、国家資格や指定学科の卒業がなくても営業所技術者として認められます(建設業法第7条第2号ロ)。ただし、その10年を裏づける書類(契約書、請求書、注文書、工事台帳、在籍を示す資料等)を原則として経験年数分すべて用意する必要があり、実務上はこの収集が最大の関門です。
特定建設業は1級の資格がないと取れませんか。
業種によります。建設業法第15条第2号ロにより、元請として請け負った政令で定める金額以上の工事について2年以上の指導監督的な実務経験があれば、1級資格がなくても特定営業所技術者になれます。ただし、土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の指定建設業7業種については、1級の国家資格、技術士資格、または国土交通大臣認定が必要で、指導監督的実務経験だけでは許可を受けられません。
500万円の残高証明書は、申請後に口座を解約してもよいですか。
申請時点で要件を満たしていれば問題ありません。残高証明書は証明日から1か月以内のものが有効で、「その時点で500万円以上の資金調達能力がある」ことを示す書類です。許可取得後の残高について法令上の制限はありません。ただし5年後の更新時には、改めて財産的基礎の要件を満たす必要があります。
役員に過去の刑事処分があると、許可は取れませんか。
処分の内容と時期によります。拘禁刑以上の刑(令和7年6月1日より前は禁錮以上)に処せられた場合、刑の執行が終わった日または執行を受けることがなくなった日から5年を経過していなければ欠格要件に該当します。罰金刑については、建設業法、建設業法施行令第3条の2が定める7法令(建築基準法、盛土規制法、都市計画法、景観法、労働基準法、職業安定法、労働者派遣法)、暴力団対策法、刑法の一定の罪などによる場合に限り、同じく5年間欠格となります。執行猶予期間中は欠格要件に該当しますが、猶予期間が満了すれば刑の言渡しは効力を失うため、満了後ただちに要件をクリアできます。
社会保険に未加入でも、先に許可申請はできますか。
できません。適切な社会保険への加入は許可要件そのものであり、未加入のままでは他の要件を満たしていても許可されません。適用事業所に該当するすべての営業所について、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の届出を済ませ、保険料の領収証書等で確認できる状態にしてから申請してください。
東京都の申請手数料は収入証紙で払うのですか。
いいえ。東京都収入証紙は平成22年3月31日で廃止されています。現在は、窓口では現金またはキャッシュレス決済、郵送では現金書留またはPay-easy対応の納入通知書、電子申請(JCIP)ではPay-easyで納付します。新規申請の手数料は9万円で、申請を取り下げても還付されません。
許可が下りるまで、どのくらいかかりますか。
東京都知事許可の標準処理期間は、許可申請書の受付後25日(土日祝日等の閉庁日を除く)です。これに要件確認・書類収集・申請書作成の期間を加えると、準備開始から許可取得まで2〜4か月程度が目安になります。補正が生じると審査が止まるため、受注予定の工事に間に合わせるには余裕を持った計画が必要です。

まとめ

建設業許可の取得可否は、次の順序で確認すると最短で判断できます。

  1. 社会保険は加入済みか(未加入なら、まずここから)
  2. 経管になれる人がいるか。その経営経験を書類で証明できるか
  3. 営業所技術者になれる人がいるか。資格か、10年の実務経験か
  4. 営業所が6要件を満たしているか(使用権原・看板を忘れずに)
  5. 財産的基礎は自己資本か残高証明か
  6. 役員全員に欠格事由がないか

このうち1つでも「わからない」があれば、その時点でご相談ください。要件を満たさないまま書類を集める時間ほど、もったいないものはありません。

建設業許可の取得は当事務所におまかせください

御社が建設業許可の取得要件を満たしているか、現状での申請可能性、必要書類の整備方針について、初回のご相談は無料で承っております。要件の判定だけでもお気軽にお問い合わせください。

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参考にした一次資料

  • 建設業法(昭和24年法律第100号)第1条・第3条・第7条・第8条・第15条・第47条
  • 建設業法施行令(昭和31年政令第273号)第1条・第1条の2・第2条・第3条の2
  • 建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)第7条第1号・第2号
  • 刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)※令和7年6月1日施行(拘禁刑への一本化)
  • 成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第37号)
  • 東京都都市整備局「建設業許可申請・変更の手引(令和7年度版)」Ⅰ制度/Ⅱ申請手続

当事務所の執筆・監修方針は執筆・監修・更新方針、一次資料の取扱いと訂正の方針は一次資料・訂正方針をご覧ください。

更新履歴

  • 2026年8月21日:許可要件を「5つ」から「6つ」に修正し、社会保険への加入要件(法第7条第1号・規則第7条第2号)を追加。欠格要件第1号から「成年被後見人・被保佐人」を削除(令和元年法律第37号による改正を反映)。特定営業所技術者の「指導監督的な実務経験」ルート(法第15条第2号ロ)を追記。東京都の手数料納付方法を収入証紙から現金・キャッシュレス・現金書留・Pay-easyに修正。標準処理期間を「受付後25日(閉庁日を除く)」に修正。営業所の要件を6項目に修正。知事許可の営業活動と施工の関係を東京都の手引にそって修正。施行令第3条の2の法令名を盛土規制法に更新し、景観法・労働者派遣法・刑法の罪を追記。
  • 2026年4月30日:令和7年6月1日施行の拘禁刑への一本化に対応。
  • 2026年4月29日:公開。
萩本 昌史(はぎもと まさし)
特定行政書士/行政書士萩本昌史事務所(東京都世田谷区)

東京都を拠点に、建設業許可の新規申請・業種追加・更新・各種変更届・決算変更届・経営事項審査・入札参加資格申請を支援しています。消防法・防火管理分野にも対応し、建設業者様の許可取得から事業継続まで一貫してお引き受けしています。令和6年・令和7年の建設業法改正、令和7年6月1日施行の拘禁刑への一本化にも実務対応中。

プロフィール:特定行政書士 萩本昌史