

公開日: 2026年4月29日 / 著者: 萩本 昌史(特定行政書士)
「建設業許可を取りたいが、何から準備すればよいかわからない」「自社が要件を満たしているか判断できない」——建設業者の方からよくいただくご相談です。建設業許可の取得には、経営業務の管理責任者、営業所技術者、誠実性、財産的基礎、欠格要件という5つの条件をすべて満たす必要があります。
この記事では、建設業許可申請の条件と要件を、令和7年6月施行の改正刑法に伴う「拘禁刑」への対応を含む最新の建設業法に基づき、東京の行政書士がわかりやすく解説します。読み終えれば、自社が許可を取得できるかの判断と、申請準備の進め方が明確になります。
目次
建設業許可とは、建設業法第3条第1項に規定される、建設工事を請け負うことを業とするための行政庁の許可をいいます。建設業法は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図り、建設工事の適正な施工を確保することを目的としており、この目的を実現する中核的な制度が建設業許可制度です。
許可は全29業種に分かれており、土木一式工事業、建築一式工事業の2つの「一式工事業」と、大工工事業、左官工事業、電気工事業、管工事業、消防施設工事業など27の「専門工事業」から構成されます。営業しようとする業種ごとに、それぞれ許可を取得する必要があります。
業種ごとの許可が必要であることは、実務上きわめて重要なポイントです。たとえば内装工事の許可だけを取得していて、後に電気工事も請け負うようになった場合、別途、電気工事業の許可を追加で取得しなければなりません。事業計画の段階で、必要な業種を慎重に検討することが求められます。
建設業許可は、すべての建設工事に必要なわけではありません。建設業法施行令第1条の2に定める「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、許可がなくても工事を行うことができます。逆にいえば、軽微な建設工事を超える工事を請け負う場合は、必ず許可が必要となります。
| 工事の種類 | 軽微な建設工事の範囲 |
|---|---|
| 建築一式工事 | 1件の請負代金が 1,500万円未満(消費税込)の工事 / または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事 |
| 建築一式工事以外の建設工事 | 1件の請負代金が 500万円未満(消費税込)の工事 |
注意
請負代金の判定にあたって、注文者が材料を提供する場合は、その材料の市場価格および運送費を請負代金に加算して判断します。材料費を除外して500万円未満に抑えたつもりでも、許可が必要と判断されるケースがありますのでご注意ください。
軽微な建設工事のみであれば確かに許可は不要ですが、現実には元請業者・発注者から取引条件として許可を求められる場面が多く、無許可では受注機会そのものが大きく制限されます。また、工事金額の見込み違いで500万円を超えてしまった場合、無許可営業として建設業法違反となり、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となります。
建設業許可は、営業所の所在地によって、許可を出す行政庁が分かれます。これが「大臣許可」と「知事許可」の区分です。重要な点として、この区分は営業所の所在地のみによって決まり、工事を施工できる地域とは関係ありません。東京都知事許可であっても、北海道や沖縄で工事を請け負うことは可能です。
| 区分 | 該当する場合 |
|---|---|
| 知事許可 | 1つの都道府県内のみに営業所を設けて建設業を営む場合。営業所が東京都内のみであれば、東京都知事許可となります。 |
| 大臣許可 | 2以上の都道府県の区域内に営業所を設けて建設業を営む場合。本店が東京都にあり、支店を埼玉県や神奈川県にも設けている場合は、国土交通大臣許可が必要となります。 |
ここでいう「営業所」とは、本店・支店・常時建設工事の請負契約を締結する事務所など、実質的に営業活動を行っている事業所を指します。単なる登記上の本店、連絡所、作業所、資材置き場などは営業所に該当しません。具体的には、以下の要件を満たす必要があります。
建設業許可は、下請契約の規模によって「一般建設業」と「特定建設業」の2種類に区分されます。発注者から直接請け負った1件の工事(元請工事)について、一定額以上の下請契約を締結する場合に、特定建設業の許可が必要となります。
令和7年2月1日施行の建設業法施行令改正により、特定建設業が必要となる下請発注金額の基準が引き上げられました。
| 区分 | 改正前(〜令和7年1月31日) | 改正後(令和7年2月1日〜) |
|---|---|---|
| 建築一式工事 | 7,000万円以上 | 8,000万円以上 |
| 建築一式工事以外 | 4,500万円以上 | 5,000万円以上 |
元請として受注した1件の工事について、下請に出す金額の合計が上記の基準以上となる場合は、特定建設業の許可が必要です。これ未満であれば一般建設業の許可で対応できます。基準となるのは「契約締結日」であり、令和7年2月1日以降に締結した契約から新しい金額が適用されます。
注意
下請金額の基準は、令和5年(2023年)1月の改正で引き上げられた後、令和7年2月1日にさらに改正されました。古い情報には旧基準(4,000万円・6,000万円や4,500万円・7,000万円)が記載されていることがありますので、最新の数値でご確認ください。
金額判定の対象は、あくまで「元請として受注した工事を下請に出した金額」です。自社で施工する工事や、下請として受注しさらに孫請けに出す工事は対象になりません。また、発注者から直接請け負う工事の金額自体には上限がなく、自社直接施工が中心であれば一般建設業のままで大規模工事を受注することも可能です。
特定建設業は、下請業者保護の観点から要件が一般建設業よりも厳格になっています。とくに財産的基礎の要件と営業所技術者の資格要件で大きな差があります。
建設業許可を取得するためには、建設業法第7条(一般建設業)・第15条(特定建設業)・第8条(欠格要件)に定められた要件を、すべて満たす必要があります。実務上は、これを次の5つの条件として整理します。
これら5つの条件の中で、実務上もっとも問題になるのが 「経営業務の管理責任者」 と 「営業所技術者」 です。この2つは、要件を満たす人材の確保と、その経験・資格を裏付ける書類の収集が必要となるため、申請準備の中心となります。次節以降で、それぞれを詳しく解説します。
経営業務の管理責任者(略して「経管(けいかん)」)とは、営業取引上、対外的に責任を有する地位にあり、建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者をいいます。建設業の経営は、請負契約の締結、見積、入札対応、資金調達、人員配置など、専門性の高い経営判断を要するため、これらを統括できる人材の常勤配置が許可要件とされています。
経管になるためには、まず形式的に次のいずれかの地位にあることが必要です。
監査役、執行役員、会計参与、事務局長、相談役、顧問などは原則として経管になれません。また、他の会社の常勤役員を兼任することもできません(常勤性の要件に反するため)。
令和2年10月の建設業法改正により、経管の経験要件は柔軟化されました。現在は以下のいずれかを満たせば足ります。
常勤役員等のうち1人が、(a)建設業に関し2年以上の役員等経験+5年以上の役員等または役員等に次ぐ地位の経験、または(b)5年以上の役員等経験+建設業に関し2年以上の役員等経験を有し、加えて、財務管理・労務管理・業務運営の各業務について5年以上の経験を有する者を補佐者として配置する形でも要件を満たせます。
従来は「自社の業種で5年以上、他業種なら6年以上」という区分がありましたが、改正後は 業種を問わず一律5年以上の建設業経験 で経管になることが可能となりました。これにより、業種をまたいだキャリアを持つ経営者にとって許可取得のハードルが大きく下がっています。
営業所技術者とは、許可を受けようとする建設業に関する一定の資格または実務経験を有し、営業所に専任で常勤する技術者をいいます。令和6年12月の建設業法改正により、従来の「専任技術者」から「営業所技術者」へと呼称が変更されました。請負契約の締結、見積、入札等の建設業の営業活動が各営業所で行われることから、建設工事の専門的判断を担保するために、営業所ごとの専任配置が義務づけられています。
「専任」とは、その営業所に常勤して、もっぱらその業務に従事することをいいます。次のような場合は専任性が否定されます。
なお、同一営業所内であれば、経管と営業所技術者を1人で兼ねることは可能です。
一般建設業の営業所技術者となるには、次のいずれかを満たす必要があります。
| 類型 | 要件の内容 |
|---|---|
| 指定学科+短期実務 | 許可業種に対応した指定学科を、高校で修了+卒業後5年以上の実務経験 / 大学・高専で修了+卒業後3年以上の実務経験 |
| 長期実務経験 | 許可業種について 10年以上の実務経験を有する者 |
| 国家資格等 | 1級・2級建築施工管理技士、1級・2級土木施工管理技士、1級・2級電気工事施工管理技士、技術士、建築士など、業種ごとに定められた資格を有する者 |
特定建設業の特定営業所技術者は、一般建設業よりも厳格です。原則として、業種ごとに定められた1級国家資格(1級施工管理技士、1級建築士、技術士など)の保有者が必要です。さらに、土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の指定建設業7業種については、必ず1級国家資格者または国土交通大臣認定者でなければなりません。
注意
実務経験で営業所技術者要件を満たす場合、その実務経験を裏付ける書類(在籍証明、契約書、請求書、注文書、工事台帳等)を、原則として経験年数分すべて準備する必要があります。書類の収集には相当の時間を要するため、許可取得を計画される段階で、早めに準備を始めることをおすすめします。
建設工事は契約から完成・引渡しまでの期間が長く、材料費・人件費等の先行支出が必要なため、請負契約を確実に履行するための財務的な裏付けが許可要件とされています。一般建設業と特定建設業で要件が大きく異なります。
次のいずれか1つを満たせば足ります。
新規申請の多くは、②の500万円以上の残高証明書で要件を満たします。証明書は申請日前1か月以内のものが必要です。
次のすべてを満たす必要があります。
これらは直前の決算時点での財務諸表で判定されます。特定建設業の財産的基礎は、毎期の更新時にも確認されるため、継続的に維持する必要があります。
誠実性とは、請負契約の締結およびその履行の際に、詐欺、脅迫、横領、契約違反などの不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことをいいます。具体的には、申請者(法人の場合は役員等および令3条の使用人を含む)について、次のような事由がないことが求められます。
この要件は他の条件と異なり、書類で積極的に証明するものではなく、宣誓書や登記事項証明書等によって「該当しないこと」を確認する形で審査されます。
建設業法第8条には、許可を与えてはならない事由(欠格要件)が列挙されています。申請者本人、法人の役員等、令3条の使用人、法定代理人のいずれかが1つでも該当すると、許可は受けられません。主な欠格要件は次のとおりです。
改正
令和7年6月1日施行の改正刑法により、従来の「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。これに伴い、建設業法第8条第7号も同日付で「禁錮以上の刑」から「拘禁刑以上の刑」へと改正されています。古い情報には「禁錮以上の刑」と記載されていますが、現行法では「拘禁刑以上の刑」が正しい表現です。
欠格要件は 法人の役員等全員 について確認が必要です。役員のうち1名でも欠格事由に該当すれば、会社全体として許可は得られません。許可申請を検討される際は、まず役員全員の身辺確認を行うことが、無駄な準備作業を避けるために重要です。
東京都知事許可の場合の標準的な申請フローは、概ね次のとおりです。
| 段階 | 作業内容 | 所要期間の目安 |
|---|---|---|
| ① 要件確認 | 5つの条件をすべて満たすかを精査。経管・営業所技術者の経験裏付け資料の有無を確認。 | 1〜2週間 |
| ② 書類収集 | 登記事項証明書、納税証明書、住民票、各種証明書類、財務書類、技術者資格証等を収集。 | 2〜4週間 |
| ③ 申請書作成 | 許可申請書、各種別紙、確認書類一式を作成・整備。 | 1〜2週間 |
| ④ 申請 | 東京都の場合、都庁第二本庁舎の建設業課窓口に提出。申請手数料9万円を都の収入証紙で納付。 | 当日 |
| ⑤ 審査 | 東京都による書類審査・追加資料の提出対応。 | 約30日〜45日 |
| ⑥ 許可 | 許可通知書の交付。許可番号が付与され、営業開始。 | — |
準備開始から許可取得までは、書類の整い方によって 2〜4か月程度を見込んでおくことが現実的です。とくに経管・営業所技術者の経験書類が散逸していたり、過去の在籍法人の協力が必要な場合は、想定以上の時間を要することがあります。
御社が建設業許可の取得要件を満たしているか、現状での申請可能性、必要書類の整備方針について、初回のご相談は無料で承っております。要件の判定だけでもお気軽にお問合せください。
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