

特定建設業の特定営業所技術者になるための要件|建設業許可の知識
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特定営業所技術者とは、特定建設業の許可を受けた建設業者が、営業所ごとに専任で配置しなければならない技術上の責任者をいいます。建設業法第15条第2号に規定されています。
令和6年12月13日施行の建設業法改正により、長く使われてきた「専任技術者」の呼称が改められました
| 改正前(~令和6年12月12日) | 改正後(令和6年12月13日~) |
|---|---|
| 専任技術者(一般・特定の区別なし) |
・一般建設業 → 営業所技術者(法第7条第2号) |
名称は変わりましたが、法律上求められる要件そのものに変更はありません。ただし許可申請書類の様式表記は新名称に統一されており、実務上は新しい呼び方に慣れておく必要があります。
改正後の条文では、営業所技術者等の職務として「建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者」と明記されました。改正前は「請負契約の締結の責任者」という位置付けが中心でしたが、改正により履行段階における技術上の管理も明文上の職責に加わっています。
特定建設業は、発注者から直接請け負った1件の工事について、下請に出す金額が4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)となる場合に必要な許可です(令和7年2月1日施行の改正後の金額)。下請業者の保護という重要な役割を担うため、営業所技術者の要件も一般建設業より一段厳しくなっています。
| 項目 | 一般建設業(営業所技術者) | 特定建設業(特定営業所技術者) |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 建設業法第7条第2号 | 建設業法第15条第2号 |
| 国家資格の水準 |
2級以上でも可 |
原則1級 |
| 実務経験での対応 | 10年以上の実務経験で可 | 10年実務経験+指導監督的実務経験2年 |
| 指定建設業7業種 | 実務経験でも可 | 実務経験不可(1級資格必須) |
| 更新時の確認 | 新規時のみ | 更新時も確認 |
建設業法第15条第2号は、特定営業所技術者になるための要件として次の3つのルートを定めています。いずれか1つを満たせば要件クリアとなります。
建設業法第15条第2号(要旨)
その営業所ごとに、特定営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者であって、次のイ・ロ・ハのいずれかに該当する者)を専任の者として置くこと。
| ルート | 要件の柱 | 内容 |
|---|---|---|
| イ | 1級国家資格等の保有 |
許可業種に対応する1級の施工管理技士、1級建築士、技術士 等 |
| ロ | 一般要件+指導監督的実務経験 | 一般建設業の営業所技術者の要件を満たした上で、元請4,500万円以上の工事で指導監督的実務経験2年以上 |
| ハ | 国土交通大臣の認定 | イと同等以上の能力を有するものと個別に認定された者 |
イ・ロ・ハは「又は」の関係にあります。つまり、1級資格保有者(イ)を配置する場合、指導監督的実務経験(ロ)は不要です。実務上は、可能な限りイのルート(資格ルート)で特定営業所技術者を確保するのが最も確実かつ書類準備の負担も軽い方法です。ロの指導監督的実務経験ルートは、資格取得が間に合わない場合の代替策と位置付けるのが実務的です。
ただし、後述する指定建設業7業種(土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園)では、ロの指導監督的実務経験ルートが使えません。必ずイの1級国家資格または個別認定が必要です。
最も明快で、実務上もっとも多いルートです。許可を受けようとする建設業の業種に対応する1級の国家資格を保有していれば、特定営業所技術者の要件を直ちに満たすことができます。
実務上、ここを混同して「1級資格があっても2年の指導監督的実務経験も必要なのでは?」と誤解されるケースが散見されます。1級資格保有者については、指導監督的実務経験の証明資料(元請契約書・施工体系図等)の提出は不要です。ただし、常勤性の証明(健康保険証・標準報酬決定通知書等)は資格ルートでも必ず必要ですので、この点は混同しないようご注意ください。
| 資格名 | 対応する主な建設業種 |
|---|---|
| 1級土木施工管理技士 | 土木一式、とび・土工、石、鋼構造物、舗装、しゅんせつ、水道施設、解体 等 |
| 1級建築施工管理技士 | 建築一式、大工、左官、屋根、タイル・れんが・ブロック、鋼構造物、鉄筋、板金、ガラス、塗装、防水、内装仕上、熱絶縁、建具、解体 等 |
| 1級電気工事施工管理技士 | 電気工事業 |
| 1級管工事施工管理技士 | 管工事業 |
| 1級電気通信工事施工管理技士 | 電気通信工事業 |
| 1級造園施工管理技士 | 造園工事業 |
| 1級建築士 | 建築一式、大工、屋根、タイル・れんが・ブロック、鋼構造物、内装仕上 等 |
| 技術士(建設部門 等) | 選択科目に応じて土木、建築、電気、管、鋼構造物、舗装、造園、水道施設、清掃施設 等 |
資格取得後に実務経験年数が別途必要な資格もあります(例:1級建築施工管理技士補は合格後3年の実務経験が必要)。また、許可業種と選択科目の組み合わせに制約があるため、「資格があるから全業種でOK」とは限らない点にご注意ください。
申請時には合格証明書または免状の原本提示(コピーの添付)が求められます。紛失している場合は、試験実施機関(一般財団法人建設業振興基金、公益財団法人建築技術教育普及センター等)に再発行を依頼する必要があり、発行まで2〜4週間かかることもあります。許可申請を急ぐ場合は早めの確認が肝要です。
特定建設業許可の実務で最も効率的な証明方法が、監理技術者資格者証(監理技術者証)による証明です。東京都の「建設業許可申請・変更の手引」(令和7年度版)でも正式な証明方法として認められています。ただし、この制度の法的構造を正確に理解しておく必要があります。
「1級国家資格を有する=指導監督的実務経験があるといえる」という理解は誤りです。両者はそもそも別個の要件であり、1級資格保有者について法は指導監督的実務経験の有無を問いません。混同しやすい論点なので、制度の仕組みを丁寧に整理します。
| 選択肢 | 法律上の要件 | 求められる内容 |
|---|---|---|
| イ | 1級国家資格等の保有 | 資格さえあれば実務経験は一切問われない |
| ロ | 一般要件+指導監督的実務経験2年 |
2級等の資格または10年経験に加えて、 |
| ハ | 国土交通大臣の個別認定 | 個別審査により認定 |
つまり、1級資格保有者(イに該当)は、指導監督的実務経験を「持っている」のではなく、「そもそも問われていない」のです。法律が、1級という高度な試験合格をもって技術者としての能力を担保しているため、元請4,500万円以上の工事経験を別途求めなくても足りる、という立法判断です。
監理技術者資格者証を交付する一般財団法人建設業技術者センターは、次の2つのルートのいずれかで資格者証を交付します。
| 交付ルート | 監理技術者資格者証の交付要件 | 対応する特定営業所技術者の要件 |
|---|---|---|
| 1級国家資格等 |
1級施工管理技士、1級建築士、関連技術士など1級国家資格等の保有のみ |
建設業法第15条第2号イを満たす |
| 実務経験 |
2級国家資格等+指導監督的実務経験2年以上 |
建設業法第15条第2号ロを満たす |
このように、監理技術者資格者証は2種類の取得ルートを持っています。実は資格者証を見ただけでは、その方が1級ルート(イ相当)で取得したのか、実務経験ルート(ロ相当)で取得したのかは区別されません。しかしどちらのルートであっても、結果的に特定営業所技術者の資格要件(イまたはロ)を満たしていることになる——これが資格者証が証明書類として機能する理由です。
ここで、論点を法的に正確に整理します。
監理技術者資格者証を提示すれば、指導監督的実務経験の証明書類は実務上不要になります。ただしその理由は交付ルートによって異なります。
いずれにせよ、許可申請窓口での書類準備としては「資格者証の写し1枚」で完結する点は変わりません。
東京都都市整備局の「建設業許可申請・変更の手引」では、特定営業所技術者の技術者要件の証明書類について、次のように整理されています。
| 証明方法 | 必要書類 |
|---|---|
| 1級国家資格等で証明 | 合格証明書・免状の写し(原本提示) |
| 監理技術者資格者証で証明 |
監理技術者資格者証の写し(原本提示)のみ |
| 指導監督的実務経験で証明(資格者証なし) |
実務経験証明書+指導監督的実務経験証明書 |
提出書類の量を比較すると、監理技術者資格者証による証明がいかに効率的かが一目瞭然です。特に22業種で実務経験ルートを取る場合、資格者証を事前に取得しておくことで許可申請の書類負担が劇的に軽減されます。
国土交通省関東地方整備局および東京都の手引きでは、監理技術者資格者証の有効期限が切れていても、「資格」や「実務経験」は認められる旨が明記されています。これは、資格者証は有効期限ごとに講習受講・更新が必要ですが、その元となる技術者資格そのものが失効するわけではないためです。
ただし、現場に監理技術者として配置するためには有効期限内の資格者証+監理技術者講習修了証が必要です。許可申請の資格証明としては期限切れでも使えますが、実際の工事現場での配置には有効な資格者証が必要という区別を誤らないようご注意ください。
監理技術者資格者証による証明が特に威力を発揮するのは、次のような場面です。
特定建設業許可の実務では、新規申請・業種追加・更新のいずれにおいても、まず「監理技術者資格者証を保有している技術者がいないか」を確認するのが王道のアプローチとなります。
1級資格を持っていない方でも、「一般建設業の営業所技術者要件」+「指導監督的実務経験2年以上」を満たせば特定営業所技術者になれるルートです。ただし指定建設業7業種では使えません(詳細は次章)。
まず、次のいずれかの方法で一般建設業の営業所技術者要件を満たしている必要があります。
指導監督的実務経験とは、元請として請け負った請負金額4,500万円以上の建設工事について、主任技術者または監理技術者として、工事の技術上の管理を総合的に指導監督した実務経験をいいます。この経験が通算2年以上必要です。
「下請として従事した経験」「現場の一作業員としての経験」は指導監督的実務経験に該当しません。また、金額基準に満たない小規模工事の経験を積み上げてもカウントされません。証明資料として、当時の元請工事請負契約書・注文書・注文請書・施工体系図等を保存しておく必要があります。
指導監督的実務経験の証明は、一般建設業の実務経験証明以上に書類が厳格に求められます。東京都の場合、次のような資料を2年分以上、工事ごとに用意するのが一般的です。
イと同等以上の能力を有するものとして国土交通大臣から個別認定を受けた方も、特定営業所技術者になれます。海外で取得した資格・学歴の評価、旧制度の資格保有者等が対象となる実務上やや特殊なルートです。
申請には国土交通省への個別認定申請が必要で、審査期間も数か月単位を要するため、実務的には限定的な選択肢となります。
特定営業所技術者制度で最も注意すべきなのが指定建設業7業種の取扱いです。ここを誤解すると許可申請が通らないだけでなく、無資格者を配置してしまう建設業法違反のリスクにつながります。
建設業法施行令第5条の2により、次の7業種が指定建設業として定められています。
指定建設業7業種で特定建設業許可を取る場合、特定営業所技術者になれるのはルート1(イ:1級国家資格等)またはルート3(ハ:国土交通大臣認定)のみです。ルート2の指導監督的実務経験による方法は認められません。
どれほど長い指導監督的実務経験があっても、1級資格または大臣認定がなければ指定建設業7業種の特定営業所技術者にはなれません。これは現場に配置する監理技術者も同様です。会社として指定建設業の特定許可を目指すなら、1級技術者の確保(可能であれば2名以上)が絶対条件となります。
| 業種 | 主な1級国家資格・技術士部門 |
|---|---|
| 土木工事業 | 1級土木施工管理技士/技術士(建設部門 等) |
| 建築工事業 | 1級建築施工管理技士/1級建築士 |
| 電気工事業 | 1級電気工事施工管理技士/技術士(電気電子部門)/第一種電気工事士+実務経験等 |
| 管工事業 | 1級管工事施工管理技士/技術士(機械部門〈流体・熱〉、上下水道部門、衛生工学部門 等) |
| 鋼構造物工事業 | 1級土木施工管理技士/1級建築施工管理技士/技術士(建設部門〈鋼構造及びコンクリート〉) |
| 舗装工事業 | 1級土木施工管理技士/技術士(建設部門 等) |
| 造園工事業 | 1級造園施工管理技士/技術士(建設部門〈都市及び地方計画〉、森林部門〈森林土木〉 等) |
資格要件を満たしていても、その方が当該営業所に常勤し、かつ専任でなければ特定営業所技術者として認められません。
休日等を除き、毎日所定の時間中、職務に従事している状態を指します。次のような方は原則として常勤と認められません。
その営業所に常勤し、もっぱら建設工事の請負契約の締結及び履行業務に関する技術上の管理に従事することをいいます。原則として工事現場の監理技術者や主任技術者を兼ねることはできません。
令和6年12月13日施行の法改正で建設業法第26条の5が新設され、一定の要件を満たす場合に限り、営業所技術者等が1現場に限って主任技術者等を兼務できるようになりました。主な要件は次のとおりです。
ただし、この兼務特例は最大2現場の配置が限界(「営業所近接工事との兼務特例」との併用不可)で、運用にはかなりの制約があります。
東京都の建設業許可申請では、次のいずれかで常勤性を証明します。
「30年のベテランだから大丈夫」と考えて、指定建設業7業種の特定許可申請を準備したが、1級資格がなく申請できなかった、というケースは珍しくありません。指定建設業7業種では資格取得が不可避です。会社として中長期的な資格取得計画を立てる必要があります。
指導監督的実務経験は「元請として請け負った4,500万円以上の工事」が対象です。下請工事の経験や、小規模工事の積み重ねではカウントされません。また、契約書や注文書等の客観的資料を保存していないと、経験があっても証明できない事態に陥ります。
特定営業所技術者は許可要件そのものであるため、退職等で不在となった場合、速やかに後任を配置できなければ建設業法第29条第1項第1号により許可取消しの対象となります。1名体制で運用している会社はリスクが大きく、特に指定建設業7業種では1級技術者の複数体制を強く推奨します。
特定建設業は新規時だけでなく更新時にも技術者要件・財産要件の両方を満たしている必要があります。特定営業所技術者の後任確保と、決算期の財務状態の両方を意識した経営管理が求められます。
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