建設業許可の資格管理|持続可能な技術者体制のつくり方と年間運用カレンダーを行政書士が解説

建設業許可の資格管理|持続可能な技術者体制のつくり方と年間運用カレンダーを行政書士が解説

建設業許可は資格を「取ったとき」ではなく「持ち続けているか」で維持されます。営業所技術者・経管が欠けた瞬間に2週間の届出義務と必要的取消しが発動する仕組み、監理技術者資格者証5年・講習5年・記載事項変更30日という見落とされがちな期限、令和7年2月1日以降の配置設計、そして資格台帳・年間カレンダー・SPOFマップによる持続可能な資格管理の実装手順を、条文と東京都の手引にそって特定行政書士が解説します。

建設業許可は、資格を「取ったとき」に与えられるものではありません。資格を持ち続けている限りにおいて、続いているだけです。


営業所技術者が退職した日、経営業務の管理責任者が他社の常勤役員になった日、監理技術者講習の受講から5年が過ぎた日。そのどれもが、書類の上では何も起きていないのに、法律の上では許可の土台が崩れた日になり得ます。


このページでは、「資格を取る話」ではなく「資格を切らさない仕組みをどう社内に置くか」を扱います。条文・政省令・東京都の手引という一次資料にそって、資格管理を属人的な記憶から、台帳とカレンダーで回る業務へ移すための設計図を示します。


この記事の結論

  • 建設業許可は、常勤役員等(経管)と営業所技術者等が要件を満たし続けていることを条件に存続します。満たさなくなったときは2週間以内の届出義務(建設業法第11条第5項)が生じ、後任を置けなければ許可は「取り消さなければならない」(同法第29条第1項第1号)という必要的取消しの対象になります。
  • 届出を怠ること自体にも罰則があります。6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(同法第50条第1項第2号・第3号)です。
  • 管理すべき資格は3層に分けます。①許可を支える資格(経管・営業所技術者等)、②現場に置く資格(主任技術者・監理技術者・監理技術者補佐)、③評価を支える資格(建設業経理士・CPD・CCUS)。
  • 期限のある資格は主に5つ。監理技術者資格者証は5年(更新申請は満了の30日前まで/規則第17条の40)、監理技術者講習は「受講した日の属する年の翌年から起算して5年」(規則第17条の21)、資格者証の記載事項変更は30日以内(規則第17条の38)、建設業経理士は登録経理講習を受けないと経審の加点対象から外れる(規則第18条の3第3項第2号ロ)、常勤性・社会保険は「今この瞬間」の状態が問われ続けます。
  • 令和7年2月1日以降、金額基準が引き上げられ(特定建設業・監理技術者配置は下請代金5,000万円/建築一式8,000万円、現場専任は請負代金4,500万円/建築一式9,000万円)、専任特例1号・専任特例2号・営業所技術者等の現場兼務(法第26条の5)という3つの兼務ルートが使えるようになりました。
  • 東京都では、同一営業所内で同一業種について複数の営業所技術者等を置くことはできません。届出上の「予備」は作れないため、社内の後継者育成が唯一の備えになります。
  • 実装に必要なのは資格台帳・年間運用カレンダー・SPOF(単一障害点)マップ・育成パイプラインの4点セットだけです。



1. なぜ「資格管理」が建設業許可の生命線なのか


1-1. 許可は「状態」であって「証書」ではない

建設業許可の要件は、申請時にだけ問われるものではありません。建設業法第7条は「許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない」と定めていますが、この基準は許可の存続要件でもあります。
そのことは、第29条第1項第1号がはっきり示しています。

国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該建設業者の許可を取り消さなければならない

一 一般建設業の許可を受けた建設業者にあつては第七条第一号又は第二号、特定建設業者にあつては同条第一号又は第十五条第二号に掲げる基準を満たさなくなつた場合

(建設業法第29条第1項第1号)

条文は「取り消すことができる」ではなく「取り消さなければならない」です。行政庁に裁量の余地はありません。経管が不在になった、営業所技術者が不在になった——その状態が続けば、許可は制度上、残れないのです。


1-2. 「欠けた日」から2週間しかない

要件が欠けたとき、事業者側には届出義務が課されます。ここは2つの条文を区別して理解する必要があります。

状況 根拠条文 期限 提出するもの
営業所技術者が営業所に置かれなくなった/要件に該当しなくなった場合で、代わるべき者がいるとき 建設業法第11条第4項 2週間以内 後任者に関する第6条第1項第5号の書面
第7条第1号(経管)・第2号(営業所技術者)の基準を満たさなくなったとき(=後任がいないとき等) 建設業法第11条第5項 2週間以内 その旨の届出書

東京都の手引(令和7年8月発行)でも、常勤役員等(経管)の変更、営業所技術者等(専技)の変更、健康保険等の加入状況の変更は「変更後2週間以内」、その他の変更事項および一部廃業は「変更後30日以内」、決算報告は「事業年度終了後4か月以内」と整理されています。
なお、営業所技術者等の変更を伴う営業所の新設・廃止・業種追加・業種廃止・一部廃業についても、東京都は「変更後2週間以内に届出が必要」としています。「営業所の話だから30日」と考えると期限を落とします。


1-3. 届け出ないこと自体が罰則の対象になる

「後任が決まってから出せばいい」という運用は危険です。建設業法第50条第1項は次のように定めています。

  • 第2号:第11条第1項から第4項までの規定による書類を提出せず、または虚偽の記載をして提出したとき
  • 第3号:第11条第5項の規定による届出をしなかったとき

これらに該当した場合、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(情状により併科)です。届出を遅らせることは、単なる手続の遅れではなく、罰則の対象になり得る行為だという前提で設計してください。

あわせて押さえておきたいのが、工事現場側の罰則です。主任技術者・監理技術者を置かなかったときは100万円以下の罰金(法第52条第1号)、標識(許可票)を掲げないときは10万円以下の過料(法第55条第3号)です。資格管理の失敗は、許可・現場・掲示の三方向で顕在化します。


1-4. 「気づいたときには更新できない」という詰み方

もうひとつ、実務でよく見る詰み方があります。決算変更届の未提出です。
東京都の手引は、決算報告について「期日の到来している決算報告の届出がされていない場合は、般・特新規申請、業種追加申請、更新申請はできません」と明記しています。加えて「提出を怠ると、過去の決算期の納税証明書が取得できない場合があり、許可の継続が困難となる恐れがあります」とも述べています。
資格の管理と届出の管理は、切り離せません。だから本記事では、資格台帳と年間カレンダーをセットで設計します。


2. 管理すべき資格を「3つの層」に分解する

資格管理が続かない会社には、共通点があります。すべての資格を1つのリストで管理しようとしていることです。失うものが違う資格を同じ表に並べると、優先順位がつきません。次の3層に分けてください。


2-1. 第1層|許可を支える資格(欠けると許可が消える)

対象 根拠条文 欠けたときに失うもの 届出期限
常勤役員等(経管) 法第7条第1号、規則第7条第1号 許可そのもの(必要的取消し) 2週間以内
営業所技術者(一般建設業) 法第7条第2号 当該業種の許可 2週間以内
特定営業所技術者(特定建設業) 法第15条第2号 当該業種の特定許可 2週間以内
令第3条の使用人 法第6条、令第3条 従たる営業所の営業 2週間以内

第1層は人数で守れません。東京都の手引は「同一営業所内で、同一業種について複数の営業所技術者等(専技)を置くことはできません」としています。届出上の予備は置けないのです。
一方で、次の兼務は認められています。

  • 複数業種の技術資格要件を1人で満たす場合、同一営業所内であれば1人で複数業種の営業所技術者等を兼ねられる
  • 営業所技術者等と、常勤役員等(経管)・直接補佐者・令第3条の使用人の双方の基準を満たす者は、同一営業所内で1人が兼ねられる

ここに落とし穴があります。兼務が認められるということは、その1人が抜けたときに複数の要件が同時に崩れるということです。効率の良い体制は、そのまま単一障害点(SPOF)になります。


2-2. 第2層|現場に置く資格(欠けると工事が止まり、罰則が来る)

対象 根拠条文 配置が必要になる場面
主任技術者 法第26条第1項 請け負ったすべての建設工事
監理技術者 法第26条第2項、令第2条 元請で下請代金の総額が5,000万円(建築一式8,000万円)以上
専任配置 法第26条第3項、令第27条 請負代金4,500万円(建築一式9,000万円)以上の政令で定める重要な工事
監理技術者補佐(監理技術者を補佐する者) 法第26条第3項第2号、令第29条 専任特例2号を使う場合

第2層は、資格者証と講習という「期限のある資格」が絡む唯一の層です。詳細は第3章で扱います。


2-3. 第3層|評価を支える資格(欠けると点数が落ちる)

経営事項審査(経審)を受け、公共工事の入札に参加する会社では、資格は「要件」であると同時に「点数」です。

対象 経審での位置づけ
法第7条第2号・第15条第2号に該当する技術職員 Z(技術力)の技術職員数
登録基幹技能者講習の修了者 Z(技術力)の評価対象
建設業経理士等(登録経理試験合格者) W5(建設業の経理の状況)
CPD単位取得・技能者の資格取得 W1「知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況」
CCUS(就業履歴の蓄積) W1「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」

第3層は、欠けても許可は消えません。しかし静かに点数が下がり、翌年の受注機会が減ります。気づきにくいぶん、カレンダー管理の価値が最も高い層です。


3. 見落とされがちな「期限のある資格」5つ

資格管理でいちばん多い事故は、資格そのものを失うことではありません。資格は持っているのに、期限管理を落として使えなくなることです。


3-1. 監理技術者資格者証|有効期間は5年、更新申請は満了の30日前まで

建設業法第27条の18第4項は「資格者証の有効期間は、五年とする」と定め、第5項で「資格者証の有効期間は、申請により更新する」としています。そして建設業法施行規則第17条の40は、更新申請の期限をこう定めています。

法第二十七条の十八第五項の規定による資格者証の有効期間の更新の申請は、当該資格者証の有効期間の満了の日の三十日前までに新たな資格者証の交付を申請することにより行うものとする。

「満了日までに出せばよい」ではありません。30日前が締切です。


3-2. 監理技術者講習|「5年ごと」ではなく「受講した日の属する年の翌年から起算して5年」

ここは多くの解説記事が雑に書いている箇所です。正確な条文は次のとおりです。

法第二十六条第五項の規定により選任されている監理技術者は、当該選任の期間中のいずれの日においても同項の登録を受けた講習を受講した日の属する年の翌年から起算して五年を経過しない者でなければならない。
(建設業法施行規則第17条の21)

  • 起算点は「受講日から5年」ではなく「受講日の属する年の翌年1月1日から5年」です。たとえば2026年3月に受講した場合、有効なのは2031年12月31日までとなります。
  • 判定は「着任時点」ではなく「選任の期間中のいずれの日においても」です。工事の途中で期限が到来する場合、その工事の期間中ずっと満たしていなければなりません。

資格管理カレンダーには「講習の期限日」ではなく「工事期間中に期限が到来する技術者」を載せてください。着工前チェックで拾えるのは前者、事故を防げるのは後者です。

なお、法第26条第5項は、専任の者でなければならない監理技術者(同項各号に規定する監理技術者を含む)は、資格者証の交付を受け、かつ講習を受講した者から選任しなければならないと定めています。専任特例1号・2号を使って兼任している監理技術者も、資格者証と講習の要件からは免れません。法第26条の5第3項も、営業所技術者等が監理技術者の職務を兼務する場合について同じ要件を課しています。


3-3. 資格者証の記載事項変更|30日以内の届出義務(見落とし率が最も高い)

建設業法施行規則第17条の38は、次のように定めています。

資格者証の交付を受けている者は、次の各号のいずれかに該当することとなつた場合においては、三十日以内に、国土交通大臣に届け出て資格者証に変更に係る事項の記載を受け、又は新たな資格者証の交付を申請しなければならない。

一 氏名又は住所を変更したとき。

二 資格者証に記載されている監理技術者資格を有しなくなつたとき。

三 資格者証の交付を受けている者が建設業者の業務に従事している場合にあつては、第十七条の三十六第一項第三号に掲げる事項について変更があつたとき。

第3号が実務上の急所です。転職・出向・社名変更などで所属建設業者に関する記載が変われば、30日以内の届出が必要になります。中途採用で監理技術者を迎えた会社は、入社日から30日以内という時計が動いていることに気づいていないことが少なくありません。
また、資格者証の記載事項には「交付を受ける者が法第26条第5項の講習を修了した場合にあつては、修了した旨」が含まれます(規則第17条の37第1項第9号)。資格者証と講習修了は1枚のカードで確認できますが、有効期間の起算はそれぞれ別だという点は押さえてください。


3-4. 建設業経理士|合格しただけでは経審の加点が続かない

建設業法施行規則第18条の3第3項第2号ロは、経審で評価される「建設業の経理に関する業務の責任者」について、登録経理試験に合格した者であって「合格した日の属する年度の翌年度の開始の日から起算して五年を経過しないもの」と定めています。合格から一定期間が過ぎた後も加点を維持するには、登録経理講習の受講が必要です。ここも「合格=永久」ではありません。


3-5. 常勤性・社会保険|期限ではなく「今この瞬間」が問われる

常勤性には期限がありません。だからこそ管理が難しい要件です。東京都の手引は、営業所技術者等の常勤性・専任性について、実務上きわめて具体的な注意事項を挙げています。

  • 申請事業者以外からの報酬がある場合、原則として常勤とみなさない
  • 被扶養者となっている者は、常勤性が推定できないため営業所技術者等になることはできない
  • 居所が営業所から著しく遠距離(通勤時間がおおむね片道2時間以上)にある場合、通勤定期券やETC記録等の通勤確認資料を求めることがある
  • 他社を代表する代表取締役等を兼ねることはできない(他社が休眠している証明等がある場合を除く)
  • 他の法令により専任性を要するとされる管理建築士、宅地建物取引士等についても同様(同一法人で同一の営業所である場合を除く)

役員報酬の減額、扶養への切り替え、家族の事情による転居、グループ会社の代表就任。いずれも総務の判断で起きうる出来事が、そのまま許可要件を壊すという構造になっています。資格管理を技術部門だけの仕事にしてはいけない理由がここにあります。


3-6. 期限一覧表(保存用)

項目 期間・期限 根拠
建設業許可の有効期間 5年(満了の30日前までに更新申請) 法第3条第3項、規則第5条
監理技術者資格者証 5年(更新申請は満了の30日前まで) 法第27条の18第4項、規則第17条の40
監理技術者講習 受講日の属する年の翌年から起算して5年 規則第17条の21
資格者証の記載事項変更 変更から30日以内 規則第17条の38
経管・営業所技術者等の変更 変更後2週間以内 法第11条第4項・第5項
その他の変更事項 変更後30日以内 法第11条第1項
決算変更届 事業年度終了後4か月以内 法第11条第2項
登録経理試験合格者の評価 合格年度の翌年度開始日から5年 規則第18条の3第3項第2号ロ


4. 令和7年2月1日以降、「資格の使い方」が変わった

資格管理の設計は、制度の現在地を前提にしなければ意味がありません。ここ数年で、技術者配置のルールは大きく動きました。


4-1. 金額基準の引上げ(令和7年2月1日施行)

基準 改正前 改正後(現行) 根拠
特定建設業許可・監理技術者の配置が必要となる下請代金の総額 4,500万円(建築一式7,000万円) 5,000万円(建築一式8,000万円) 令第2条
主任技術者・監理技術者の現場専任が必要となる請負代金 4,000万円(建築一式8,000万円) 4,500万円(建築一式9,000万円) 令第27条

「毎年ぎりぎり特定建設業の水準だった」会社は、この改正で必要な体制が変わっている可能性があります。自社の許可区分と技術者要件を、改正後の金額で棚卸しし直すことをおすすめします。


4-2. 兼務・兼任の3ルート(令和6年12月13日施行)

① 専任特例1号|主任技術者・監理技術者が2現場まで兼任(法第26条第3項第1号、第4項)

次の要件をすべて満たす必要があります。

要件 内容 根拠
請負金額 1億円未満(建築一式工事は2億円未満) 令第28条
兼任現場数 2工事現場以下 令第30条
工事現場間の距離 1日の勤務時間内に巡回可能で、移動時間がおおむね2時間以内 規則第17条の2第1号
下請次数 3次まで 規則第17条の2第2号
連絡員の配置 各工事に配置(土木一式・建築一式の場合は当該工事の実務経験1年以上の者) 規則第17条の2第3号
施工体制を確認する情報通信技術 遠隔から現場作業員の入退場を確認できる措置 規則第17条の2第4号
人員配置計画書 作成し、現場に備え置き、帳簿と同じ期間営業所で保存 規則第17条の2第5号
現場確認用の情報通信機器 映像・音声の送受信が可能な機器と通信環境 規則第17条の3


② 専任特例2号|監理技術者を補佐する者を置いて2現場まで(法第26条第3項第2号、令第29条)

工事現場に「監理技術者の職務を補佐する者」(1級技士補等)を専任で置く場合、同一の監理技術者が2現場まで兼任できます。主任技術者には適用できません


③ 営業所技術者等の現場兼務(法第26条の5)

営業所に専任で置かれている営業所技術者・特定営業所技術者が、専任を要する工事現場の主任技術者・監理技術者を兼務できる制度です。基本的な要件は専任特例1号と同じですが、次の点が異なります。

  • 当該営業所において締結した請負契約に係る建設工事であること(法第26条の5第1項第1号)
  • 兼務できる工事現場の数は1
  • 距離要件は「工事現場間」ではなく「営業所から当該工事現場まで
  • 人員配置計画書には、営業所技術者等が所属する営業所名と、契約を締結した営業所名も記載
  • 監理技術者制度運用マニュアル上、当該請負業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあることが必要

併用はできません。国土交通省は、①専任特例1号を活用した現場と専任特例2号を活用した現場を同一の技術者が兼務することはできないこと、②営業所技術者等が現場を兼務する場合に法第26条第3項ただし書を併用できないことを明示しています。「合わせ技で3現場」は成立しません。


4-3. 標識の記載も変わる

兼任制度を使った場合、標識(建設業の許可票)の「専任の有無」欄の記載が変わります。国土交通省の記載要領は次のとおりです。

  • 法第26条第3項本文に該当する場合:「専任」
  • 同項第1号に該当する場合(専任特例1号):「非専任(情報通信技術利用)
  • 同項第2号に該当する場合(専任特例2号):「非専任(監理技術者を補佐する者を配置)

標識の不掲示は過料の対象です(法第55条第3号)。制度を使うなら、掲示の更新までが一連の手続だと考えてください。


4-4. 近接工事の兼務は引き続き使える

  • 令第27条第2項:密接な関係のある2以上の建設工事を同一の建設業者が同一の場所または近接した場所で施工する場合、同一の専任の主任技術者が管理できる
  • 平成15年4月21日付 国総建第18号:営業所に近接し、専任を要さない工事現場の主任技術者等の兼務

制度が新しくなっても、古い通達が消えたわけではありません。自社の工事の並びによっては、新制度より従来の運用のほうが要件が軽いこともあります。


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5. 持続可能な資格管理の設計図|4つの仕組み

制度を理解しても、社内に仕組みがなければ同じ事故が繰り返されます。必要なのは次の4つだけです。


5-1. 仕組み①|資格台帳(誰が・何を・いつまで)

Excelで十分です。重要なのは項目の定義です。

内容 なぜ必要か
氏名/生年月日 本人特定 同姓同名・改姓の追跡
所属営業所 主たる/従たる 営業所ごとの専任判定に必須
建設業許可上の役割 経管/営業所技術者/特定営業所技術者/令3条使用人/なし 第1層の充足状況が一目でわかる
担当業種 業種コード(29業種) 業種ごとの穴を検出する
資格の種類・番号・取得年月日 1級・2級、技術士、建築士等 証明書類との突合
実務経験による証明の有無 有/無・証明済期間 「資格者ではなく経験者」の再証明リスクを可視化
監理技術者資格者証 交付日/有効期限 5年 更新は満了の30日前まで
監理技術者講習 受講日/有効期限 受講年の翌年から5年 起算方法を列の名称に書いておく
資格者証 記載事項の最終確認日 氏名・住所・所属 30日以内届出の起点
常勤性の確認書類・最終確認日 健保証・標準報酬決定通知書等 更新申請・変更届で必ず問われる
社会保険の加入状況 健保・厚年・雇用 許可要件かつ経審項目
現在の現場配置 現場名・専任/非専任・兼任区分 二重配置の事故を防ぐ
CCUS技能者ID/レベル 該当者のみ 経審・現場入場管理
退職・定年予定年月 判明分 SPOFマップの入力

台帳は「人事の名簿」ではなく「許可の設計図」です。営業所と業種と役割の3つを必ず持たせてください。この3つがそろって初めて「この業種はこの営業所で1人しかいない」という危険が見えます。


5-2. 仕組み②|年間運用カレンダー

資格管理は、思い出したときにやる仕事にすると必ず途切れます。決算期を起点に固定してください。

時期 やること 根拠・目的
事業年度終了後すぐ 決算変更届の資料準備(工事経歴書・財務諸表の組替え) 法第11条第2項(4か月以内)
事業年度終了後4か月以内 決算変更届の提出 未提出だと更新・業種追加ができない
毎年同月(年1回) 資格台帳の全件棚卸し(常勤性・社会保険・資格期限) 要件は「状態」だから
毎年同月(年1回) 資格者証・講習の期限が翌18か月以内に到来する人の抽出 更新申請は満了30日前まで
経審を受ける年 審査基準日前にCPD・CCUS・経理士の状況を確認 W1・W5の加点確保
許可満了の6か月前 更新申請の要件確認(経管・営業所技術者の在籍と常勤性) 満了30日前が申請期限
許可満了の3か月前 更新申請の提出 東京都では満了30日前を過ぎるとJCIP(電子申請)で受け付けられない
入社・退職・異動の都度 第1層に影響するかを判定 → 影響あれば2週間以内に届出 法第11条第4項・第5項
着工の都度 配置予定技術者の資格・講習が工期末まで有効かを確認 規則第17条の21


5-3. 仕組み③|SPOF(単一障害点)マップ

台帳ができたら、業種×営業所のマトリクスを作り、各セルに「その要件を満たせる社内の人数」を書きます。

業種 本店(営業所技術者になれる人数) 〇〇営業所 判定
管工事 3 1 営業所は要注意
電気工事 1 0 危険(SPOF)
内装仕上工事 2 2 安定

セルが「1」または「0」の業種が、その会社の急所です。ここに該当する業種については、次の3択をあらかじめ決めておきます。

  1. 社内で2人目を育てる(技術検定の受検計画を組む)
  2. 実務経験10年での証明が可能な人を特定し、証明資料を今のうちに集めておく
  3. その業種を維持しない(一部廃業)という選択も含めて経営判断する

3の選択肢を意識的に持つことは重要です。要件を満たせないまま許可を持ち続けることが、いちばんリスクの高い状態です。一部廃業も届出(変更後30日以内、営業所技術者等の変更を伴う場合は2週間以内)で対応できます。


5-4. 仕組み④|育成パイプライン(技術検定の新受検資格を活かす)

「2人目を育てる」は、以前より現実的になりました。令和6年度から施工管理技術検定の受検資格が見直されています。

  • 1級の第一次検定は19歳以上(受検年度末時点)であれば受検可能
  • 2級の第一次検定は17歳以上(受検年度末時点)であれば受検可能(従前から変更なし)
  • 1級・2級の第二次検定は、第一次検定合格後の一定期間の実務経験などで受検可能

1級の第二次検定については、1級第一次検定合格後に「実務経験5年以上」「特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上」「監理技術者補佐としての実務経験1年以上」のいずれか、または2級第二次検定合格後に「実務経験5年以上」「特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上」(いずれも1級第一次検定合格者に限る)といったルートが用意されています。なお、令和6年度から令和10年度までは経過措置期間とされ、第二次検定は旧受検資格と新受検資格の選択が可能です。
ここで効いてくるのが1級技士補です。1級第一次検定に合格した段階で、令第29条の「監理技術者を補佐する者」になり得ます。つまり若手が、

  1. 1級第一次検定に合格 → 1級技士補
  2. 監理技術者補佐として現場に専任配置(会社は専任特例2号で監理技術者を2現場に配置できる)
  3. 監理技術者補佐としての実務経験1年以上 → 1級第二次検定の受検資格
  4. 1級合格 → 監理技術者資格者証の取得 → 特定営業所技術者の候補

という階段を上れます。会社の現在の配置効率と、将来の資格者確保が、同じ制度の上でつながっているわけです。持続可能な資格管理とは、この階段を意図して設計することにほかなりません。


6. 有事対応|営業所技術者が突然辞めたときの72時間

仕組みを作っても、事故は起きます。起きた後の手順を先に決めておくことも、資格管理の一部です。


6-1. 最初の24時間|事実を確定する

  1. 退職日を確定する(最終出社日ではなく、資格要件が欠ける日を特定する)
  2. その人が担っていた役割をすべて洗い出す(営業所技術者/経管/令3条使用人/現場配置技術者の兼務)
  3. 影響を受ける業種営業所を特定する


6-2. 24〜48時間|後任の可否を判定する

  • 社内に、当該業種の要件を満たす者がいるか(国家資格または実務経験10年等)
  • その人は当該営業所に常勤・専任できるか(同一法人であっても、他の営業所の営業所技術者等を兼ねることはできません)
  • 常勤性の確認資料(健康保険証、標準報酬決定通知書、住民税特別徴収税額通知書等)を、いつ用意できるか
  • 技術者要件の確認資料(合格証明書・免許証の写し、実務経験の証明資料)を、いつ用意できるか


6-3. 48〜72時間|届出方針を決める

判定 届出 期限
後任がいる 法第11条第4項の書面(後任の営業所技術者等) 2週間以内
後任がいない 法第11条第5項の届出(要件を満たさなくなった旨) 2週間以内
当該業種を維持しない 一部廃業届(営業所技術者等の変更を伴う場合) 変更後2週間以内

「後任が決まるまで届出を止める」という判断は、法第50条第1項第3号の罰則リスクを負う選択です。判断に迷う場合は、届出期限を延ばす方向ではなく、後任の確定を早める方向で動いてください。


6-4. 電子申請を使う場合の制約

東京都では、常勤役員等(経管)に関する申請・届出は原則として窓口受付とされており、電子申請(JCIP)では受け付けられません。また、5年を超える経営経験・実務経験を請求書等で証明する場合も窓口です。有事の際は「電子で出せる前提」で段取りを組まないことをおすすめします。


7. 資格管理は経審の点数に直結する(令和8年7月1日施行の改正)

経営事項審査を受ける会社にとって、資格管理は守りだけの仕事ではありません。令和8年2月6日に公布され、令和8年7月1日以降の申請から適用されている改正は、「担い手の育成・確保」を正面から評価する内容です。

審査項目 改正前 改正後
就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況(民間工事を含む全ての建設工事) 15点 10点
同(全ての公共工事) 10点 5点
「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無 5点(新設)
知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況 10点 10点
雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況(W1-1〜W1-3) 各▲40点 審査項目から削除
建設機械の保有状況 既存9機種 不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャを追加

社会保険の減点項目が削除された理由は、資格管理の観点から示唆的です。国土交通省は、令和2年10月1日以降の建設業許可要件に社会保険加入が追加され、許可の更新期間が5年であることから、令和7年10月1日以降に許可を保有する建設業者は社会保険加入を満たしていることとなるため、経審で改めて確認する必要性が乏しいと説明しています。
つまり、許可要件を満たしていることが前提化されたということです。減点で守られていた時代は終わり、これからは「知識及び技術又は技能の向上に関する取組」「就業履歴の蓄積」「自主宣言」といった、能動的な取組でしか差がつかない構造になります。資格管理を人事総務のルーティンから、経営指標に接続する時期に来ています。


よくある質問(FAQ)

営業所技術者が退職したら、すぐに許可は取り消されますか。
退職しただけで直ちに取り消されるわけではありません。ただし、要件を満たさなくなった旨を2週間以内に届け出る義務があり(法第11条第5項)、後任を置けない状態が解消されなければ、法第29条第1項第1号により許可は取り消さなければならないものとされています。後任の確保が最優先です。


同じ業種で、営業所技術者を2人届け出て「予備」にできますか。
できません。東京都の手引は、同一営業所内で同一業種について複数の営業所技術者等を置くことはできないとしています。届出上の予備は作れないため、社内での育成と、要件を満たす人材の把握で備えるほかありません。


1人で複数業種の営業所技術者を兼ねてもよいですか。
同一営業所内であれば可能です。複数業種の技術資格要件を1人で満たしている場合、その1人で複数業種の営業所技術者等を兼ねられます。ただし、その1人が抜けると複数業種が同時に要件を欠くことになる点に注意してください。


経営業務の管理責任者と営業所技術者を、同じ人が兼ねられますか。
同一営業所内で、双方の基準を満たしている場合は1人で兼ねられます。ただし、他社の常勤役員や他社の技術者を兼ねることはできません。


監理技術者講習は「5年ごと」でよいのですか。
正確には「受講した日の属する年の翌年から起算して5年を経過しない者」でなければなりません(規則第17条の21)。受講日から5年ではなく、受講した年の翌年1月1日から5年です。また、選任の期間中のいずれの日においても満たしている必要があるため、工期中に期限が到来しないかを着工前に確認してください。


監理技術者資格者証の更新は、有効期限までに申請すればよいですか。
いいえ。建設業法施行規則第17条の40により、更新の申請は有効期間の満了の日の30日前までに行うものとされています。


中途採用で監理技術者を迎えました。会社側で管理すべきことはありますか。
資格者証の記載事項のうち、建設業者の業務に従事している場合の事項に変更が生じたときは、30日以内に国土交通大臣へ届け出て記載を受けるか、新たな資格者証の交付を申請する必要があります(規則第17条の38第1項第3号)。本人の手続ですが、会社として期限管理をしておくべき項目です。


専任特例1号を使えば、監理技術者は何現場まで持てますか。
2工事現場以下です(令第30条)。あわせて、各工事が1億円未満(建築一式は2億円未満)であること、現場間の移動時間がおおむね2時間以内であること、下請次数が3次までであること、連絡員の配置、情報通信技術による施工体制の確認、人員配置計画書の作成・保存、現場確認用の情報通信機器の設置といった要件をすべて満たす必要があります。


営業所技術者が工事現場を兼務できるのは何現場までですか。
1現場です(法第26条の5、政令)。加えて、その営業所で締結した請負契約に係る工事であることが必要で、法第26条第3項ただし書との併用はできません。


建設業経理士に合格していれば、経審の加点はずっと続きますか。
続きません。登録経理試験の合格者として評価されるのは、合格した日の属する年度の翌年度の開始の日から起算して5年を経過しない間です(規則第18条の3第3項第2号ロ)。継続するには登録経理講習の受講が必要です。


資格管理は、何から始めればよいですか。
「業種×営業所」のマトリクスを1枚作り、各セルに要件を満たせる社内人数を書いてください。0または1のセルが自社の急所です。その業種について、育てる/証明資料を集める/維持しない、のいずれかを決めるところからで十分です。


資格の期限管理をシステム化すべきですか。
台帳の項目定義と、年1回の棚卸し日が決まっていれば、Excelで足ります。システムの有無より、誰の担当業務として年間予定に入っているかのほうが結果を左右します。


まとめ

  1. 要件は「状態」である。 経管と営業所技術者等が要件を満たさなくなれば、2週間以内の届出義務が生じ、後任がなければ許可は取り消さなければならないものとされています(法第11条第5項、第29条第1項第1号)。届出を怠ること自体にも罰則があります(法第50条第1項第2号・第3号)。
  2. 期限のある資格を、期限のある届出とセットで持つ。 資格者証5年、講習は受講年の翌年から5年、記載事項変更は30日以内、経管・営業所技術者等の変更は2週間以内、決算変更届は4か月以内、更新申請は満了30日前まで。この6つの数字を、年間カレンダーに固定してください。
  3. 効率的な体制は、そのまま単一障害点になる。 1人で複数業種・複数役割を兼ねる体制は、要件上は適法でも、経営上は最も脆い構造です。業種×営業所のマトリクスで急所を特定し、技術検定の新受検資格と1級技士補の階段を使って2人目を育ててください。

制度は、担い手不足を前提に組み替えられつつあります。金額基準の引上げ、兼務・兼任制度の新設、経審での育成評価の強化。いずれも「資格を持つ人を、どう配置し、どう増やすか」を問う方向に向かっています。資格管理は、守りのコストではなく、受注体制そのものです。


参考にした一次資料

  • e-Gov法令検索「建設業法」(第3条、第7条、第11条、第15条、第26条、第26条の4、第26条の5、第27条の18、第27条の23、第29条、第50条、第52条、第55条)
  • e-Gov法令検索「建設業法施行令」(第2条、第27条、第28条、第29条、第30条)
  • e-Gov法令検索「建設業法施行規則」(第5条、第7条、第17条の2、第17条の3、第17条の21、第17条の37、第17条の38、第17条の40、第18条の3)
  • 国土交通省「【建設業法】現場技術者の専任合理化(R6.12.13施行)」(令和6年12月24日HP掲載)
  • 国土交通省「営業所技術者等の兼務について」(令和7年3月4日 規制改革推進会議 デジタル・AI WG 資料2-3)
  • 国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」
  • 国土交通省「令和6年度より施工管理技術検定の受検資格が変わります」(令和5年11月9日版)
  • 国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」(令和8年2月6日公布/令和8年国土交通省告示第262号、令和8年国不建第177号)
  • 平成15年4月21日付 国総建第18号(近接する工事現場における主任技術者等の兼務)
  • 東京都都市整備局市街地建築部建設業課「建設業許可申請・変更の手引」(令和7年8月発行)


更新履歴

  • 2026年8月20日:公開。建設業法・同施行令・同施行規則(e-Gov法令検索)、国土交通省「現場技術者の専任合理化」「営業所技術者等の兼務について」「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」、東京都「建設業許可申請・変更の手引(令和7年8月)」に基づき作成。


特定行政書士 萩本 昌史(はぎもと まさし)
行政書士萩本昌史事務所(東京都世田谷区)/日本行政書士会連合会 登録番号 24080582

東京都の建設業許可について、新規申請・業種追加・更新・各種変更届・決算変更届・経営事項審査・入札参加資格申請を支援しています。資格要件の棚卸し、技術者の退職に伴う緊急対応、事業承継に伴う要件の再構築についてもご相談いただけます。


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