

監理技術者でつまずく会社には、共通点があります。「誰を置くか」だけを考えて、「いつから置くか」「いくらから置くか」「置いた人が何を証明できるか」を分けて考えていないことです。この3つはそれぞれ別の条文で決まっていて、金額の基準は令和7年2月1日に変わりました。
このページは、建設業法・同施行令・同施行規則の条文と、国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」(令和7年1月28日国不建技第147号・令和7年2月1日から適用)、東京都「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」(令和8年1月7日施行)を突き合わせて、監理技術者について実務で必要になることだけを順番に並べたものです。数字にはすべて根拠を示しています。
監理技術者とは、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者が、下請契約の総額が一定額以上になる工事現場に、主任技術者に代えて置かなければならない技術者です(建設業法第26条第2項)。
条文の順番を押さえておくと、制度全体が整理できます。
| 条文 | 何を定めているか |
|---|---|
| 法第26条第1項 | すべての建設工事に主任技術者を置く義務 |
| 法第26条第2項 | 一定額以上の下請契約をする元請の特定建設業者は、主任技術者に代えて監理技術者を置く義務 |
| 法第26条第3項 | 重要な建設工事は工事現場ごとに専任とする義務(ただし書に専任特例1号・2号) |
| 法第26条第4項 | 専任特例で兼任できる現場数の上限(政令で2現場) |
| 法第26条第5項 | 専任の監理技術者は資格者証の交付を受け、かつ講習を受講した者から選任する義務 |
| 法第26条第6項 | 発注者から請求があったときの資格者証の提示義務 |
| 法第26条の4 | 主任技術者・監理技術者の職務 |
現場に置く技術者(主任技術者・監理技術者)と、営業所に置く技術者(営業所技術者・特定営業所技術者)は、まったく別の制度です。ここが混ざると、社内の人員計画が崩れます。
| 項目 | 主任技術者 | 監理技術者 | 営業所技術者等 |
|---|---|---|---|
| 置く場所 | 工事現場 | 工事現場 | 営業所 |
| 根拠 | 法第26条第1項 | 法第26条第2項 | 法第7条第2号・第15条第2号 |
| 置く人 | すべての建設業者(元請・下請を問わない) | 元請の特定建設業者のみ | 許可を受ける建設業者 |
| 必要になる場面 | 請け負ったすべての工事 | 下請総額5,000万円以上(建築一式8,000万円以上) | 許可の要件として常時 |
| 資格の水準 | 法第7条第2号イロハ | 法第15条第2号イロハ(指定建設業はイまたはハに限る) | 一般は法第7条第2号/特定は法第15条第2号 |
| 資格者証・講習 | 不要 | 専任の場合は必要 | 不要 |
監理技術者は元請にだけ課される義務です。1次下請・2次下請がいくら大きな金額を受注しても、下請が置くのは主任技術者です。下請が自分の下にさらに下請を使っても、監理技術者にはなりません。
これは、監理技術者の役割が「請け負った建設工事全体の統括的施工管理」であり、下請の主任技術者の役割が「請け負った範囲の建設工事の施工管理」だからです(運用マニュアル 二-三の表)。
建設業法施行令の一部を改正する政令(令和6年12月11日政令第366号)により、令和7年2月1日から金額要件が引き上げられました。
| 基準 | 工事の区分 | 改正前 | 改正後(令和7年2月1日〜) |
|---|---|---|---|
| 特定建設業の許可・監理技術者の配置を要する下請代金額の下限(令第2条) | 建築一式工事 | 7,000万円 | 8,000万円 |
| 建築一式工事以外 | 4,500万円 | 5,000万円 | |
| 主任技術者・監理技術者の専任を要する請負代金額の下限(令第27条第1項) | 建築一式工事 | 8,000万円 | 9,000万円 |
| 建築一式工事以外 | 4,000万円 | 4,500万円 | |
| 施工体制台帳の作成を要する下請代金額の下限(令第7条の4) | 建築一式工事 | 7,000万円 | 8,000万円 |
| 建築一式工事以外 | 4,500万円 | 5,000万円 |
当初は主任技術者を置いた工事でも、大幅な工事内容の変更等により工事途中で下請契約の請負代金の額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)となった場合には、主任技術者に代えて監理技術者を設置しなければなりません(運用マニュアル 二-二(3))。
マニュアルは、そうなる可能性がある工事について「当初から監理技術者になり得る資格を持つ技術者を置くべき」としています。専任特例2号を使う予定なら、監理技術者補佐になり得る資格を持つ技術者も併せて置いておく必要があります。
そもそも元請は、工事受注前におおむねの工事外注計画を立て、受注後速やかに詳細な計画を立てて、下請契約の予定額が5,000万円(建築一式8,000万円)以上となるか否かを的確に把握しておくことが求められています(運用マニュアル 二-一)。「気づいたら超えていた」は、計画の不作為として指摘されます。
同一または別々の注文者と締結する、契約工期が重複する複数の請負契約で、それぞれの工事の対象が同一の建築物または連続する工作物である場合は、すべての注文者から書面による承諾を得たうえで、1つの工事とみなして同一の監理技術者等が管理できます(運用マニュアル 三(2)④)。
ただしこの場合、下請金額の合計が5,000万円(建築一式8,000万円)以上になるなら特定建設業の許可が必要で、監理技術者を置かなければなりません。契約を分けても、まとめて扱うと決めた以上は合算されます。
監理技術者になれるのは、法第15条第2号イ・ロ・ハに該当する者です。ここで業種によってルートが違います。
指定建設業は次の7業種です。
土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業
この7業種の監理技術者は、1級施工管理技士等の国家資格者、または国土交通大臣の認定を受けた者に限られます(法第26条第2項かっこ書)。実務経験だけでは、どれだけ年数を積んでも監理技術者になれません。
| ルート | 内容 | 指定建設業7業種 | その他22業種 |
|---|---|---|---|
| イ | 1級国家資格者・技術士 等 | ○ | ○ |
| ロ | 一般建設業の営業所技術者の要件(2級資格・実務経験10年等)を満たしたうえで、指導監督的実務経験2年以上 | × | ○ |
| ハ | 国土交通大臣が個別に認定した者 | ○ | ○ |
指導監督的実務経験とは、元請として請け負った請負代金の額が4,500万円以上の建設工事について、主任技術者または監理技術者として、工事の技術上の管理を総合的に指導監督した経験をいいます(法第15条第2号ロ、令第5条の2)。これが通算2年以上必要です。
この4,500万円は令和7年2月1日の改正で変わっていません。令第5条の2は改正対象外です。配置基準が5,000万円に上がったので「指導監督的実務経験も5,000万円では」と思われがちですが、指導監督的実務経験の対象工事は4,500万円以上のままです。下請工事の経験や、小規模工事の積み重ねはカウントされません。
専任特例2号(後述)を使うときに各現場へ専任で置く監理技術者補佐は、次のいずれかに該当する必要があります(法第26条第3項第2号、令第29条)。
ただし、機械器具設置工事・さく井工事・消防施設工事・清掃施設工事の4業種は、2)に限られます。これらの業種には1級の技術検定が存在しないためです。この4業種で「1級技士補を補佐に置いて監理技術者を2現場兼任させる」ことはできません。見落とされやすい制限です。
専任の監理技術者は、資格者証の交付を受けている者であって、監理技術者講習を受講した者のうちから選任しなければなりません(法第26条第5項)。専任特例1号・2号で兼任する場合の監理技術者も同じです。
| 項目 | 監理技術者資格者証 | 監理技術者講習 |
|---|---|---|
| 発行するところ | 指定資格者証交付機関(一般財団法人建設業技術者センター) | 国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関(複数あり) |
| 根拠 | 法第27条の18 | 法第26条第5項、第26条の6〜第26条の8 |
| 有効期間 | 交付日から5年(法第27条の18第4項) | 受講日の属する年の翌年1月1日から起算して5年後の12月31日まで(規則第17条の17) |
| 手数料の目安 | 7,600円(建設業技術者センター) | 登録講習機関ごとに異なる |
| 更新のタイミング | 交付日基準なので人によってバラバラ | 年末基準なので全員12月31日で切れる |
資格者証には、本人の顔写真のほか次の事項が記載されます(法第27条の18第2項、規則第17条の35)。
所属建設業者名が変わったら30日以内に届け出てください。記載事項の変更の届出、または新たな資格者証の交付を受けなければなりません(規則第17条の34第1項、第17条の36第1項)。転職者を監理技術者として現場に入れるとき、ここが古いままだと直接的な雇用関係を証明できません。入札参加や公共工事の現場確認で最初に見られる箇所です。
選任された監理技術者は、発注者から請求があったときは資格者証を提示しなければなりません(法第26条第6項)。また、当該建設工事に係る職務に従事しているときは常時携帯している必要があります(運用マニュアル 四)。講習の修了履歴のラベルは資格者証の裏面に貼付することとされています。
ここは正確に書きます。提示義務違反そのものに、建設業法上の罰則(罰金・過料)はありません。法第55条の過料の対象は、廃業等の届出(第12条)、出頭要求(第25条の13第3項)、標識の掲示(第40条)、第40条の2、帳簿の備付け(第40条の3)に限られており、第26条第6項は入っていません。
ただし、これは「提示しなくてよい」という意味ではありません。法令違反として監督処分(指示処分)の対象になり得ますし、公共工事では契約違反・工事成績評定の減点・入札参加資格の停止に直結します。罰則がないことと、実務上のダメージがないことは別です。
監理技術者等は、当該建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある者でなければなりません(運用マニュアル 二-四)。ここは「資格があるかどうか」より先に確認すべき論点です。
第三者の介入する余地のない、賃金・労働時間・雇用・権利構成についての一定の権利義務関係が存在することをいいます。在籍出向者や派遣社員は、直接的な雇用関係にあるとはいえません。
確認資料としては、次のいずれかが挙げられています。
一定の期間にわたり当該建設業者に勤務し、日々一定時間以上職務に従事することが担保されていることをいいます。そのうえで、公共工事では期間の縛りがあります。
公共工事の元請の専任の監理技術者等は、入札の申込みのあった日以前に3か月以上の雇用関係にあることが必要です。指名競争で入札の申込みを伴わない場合は入札の執行日、随意契約の場合は見積書の提出のあった日が基準になります。「入札の直前に採用した技術者では間に合わない」ということです。公共工事を狙う会社は、逆算して3か月以上前に採用を完了させてください。
原則として在籍出向者は直接的な雇用関係にありませんが、次の4つの通知による特例が定められています(運用マニュアル 二-四(4))。
グループ内で技術者を融通したい場合は、この通知の要件を満たしたうえで、あらかじめ手続を踏んでおく必要があります。現場が始まってからでは間に合いません。
専任とは、他の工事現場に係る職務を兼務せず、勤務中は常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事していることをいいます(運用マニュアル 三)。
「公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事」で、工事1件の請負代金の額が4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)のものが対象です(法第26条第3項、令第27条第1項)。
対象となる施設・工作物は令第27条第1項の各号に列挙されています。要約すると次のとおりです。
「事務所」「共同住宅」「工場」「倉庫」が入っている点に注意してください。民間工事だから専任は不要、という理解は誤りです。実務上、専任が不要なのは戸建て住宅くらいだと考えたほうが安全です。
事務所・病院等と戸建て住宅を兼ねた「併用住宅」は、請負代金の総額が9,000万円以上(建築一式工事の場合)であっても、次の2つをともに満たせば戸建て住宅と同様とみなされ、専任配置を求められません(運用マニュアル 三(1)③)。
併用住宅かどうかは建築確認済証で判別し、面積比は建築確認済証と添付の設計図書で求めます。
運用マニュアルは「必ずしも当該工事現場への常駐を必要とするものではない」と明記しています(三(1)④)。整理すると次のようになります。
| 離れる態様 | 取扱い |
|---|---|
| 打ち合わせ・書類作成、研修・講習・試験への参加、休暇の取得等で短期間(1〜2日程度)離れる | 適切な施工ができる体制を確保できる場合は差し支えない(発注者の了解は不要) |
| それを超える期間離れる/終日離れている状況が週の稼働日の半数以上/周期的に離れる | 体制を確保したうえで、元請の場合は発注者の了解、下請の場合は元請または上位下請の了解が必要 |
| 現地での対応が必要な場合 | いずれの場合も除く(現場にいなければならない) |
マニュアルはさらに、研修等への参加や休暇の取得を不用意に妨げないよう配慮すべきとし、育児等のために短時間現場を離れることが可能となるような体制の確保にも言及しています。専任=拘束、という運用は制度の趣旨に反します。
契約工期中であっても、次の期間は工事現場への専任を要しません(運用マニュアル 三(3))。
条件があります。いずれの場合も、発注者と建設業者の間で、その期間が設計図書もしくは打合せ記録等の書面により明確になっていることが必要です。口頭の了解では足りません。ここを書面化していないために、立入検査で「専任していない期間がある」と指摘されるケースが実際にあります。
フレックス工期を採用した工事や余裕期間を設定した工事では、工事開始日をもって契約工期の開始日とみなし、契約締結日から工事開始日までの期間は監理技術者等を設置することを要しません(運用マニュアル 二-二(1)④)。技術者の手配を工事開始日基準で組めるということです。
密接な関連のある2以上の工事を同一の建設業者が同一または近接した場所で施工する場合、同一の専任の主任技術者がこれらの工事を管理できます(令第27条第2項)。工事現場の相互の間隔が10km程度、管理できる工事の数は原則2件程度、という運用です。
この規定は、専任の監理技術者には適用されません。運用マニュアル 三(2)③が「ただし、この規定は、専任の監理技術者については適用されない」と明記しています。「隣接現場だから監理技術者を掛け持ちできる」は誤りです。監理技術者が2現場を持てるのは、次章の専任特例1号・2号だけです。ここを取り違えている解説が少なくありません。
令和6年12月13日に施行された改正建設業法により、法第26条第3項ただし書に2つの特例が置かれました。運用マニュアルはこれを「専任特例1号」「専任特例2号」と呼んでいます。
| 項目 | 専任特例1号(法第26条第3項第1号) | 専任特例2号(法第26条第3項第2号) |
|---|---|---|
| 対象 | 主任技術者・監理技術者(下請の主任技術者も可) | 監理技術者のみ(主任技術者は対象外) |
| 現場に置く人 | 連絡員(専任・常駐・直接雇用いずれも不要) | 監理技術者補佐(各現場に専任) |
| 請負代金の上限 | 各工事とも1億円未満(建築一式工事は2億円未満) | 上限の定めなし |
| 兼任できる現場数 | 2まで(令第30条) | 2まで(法第26条第4項、令第30条) |
| # | 要件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 各建設工事の請負代金の額が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)であること | 令第28条 |
| 2 | 工事現場間の距離が、同一の技術者が1日の勤務時間内に巡回可能であり、かつ災害等の発生時の移動時間がおおむね2時間以内であること | 規則第17条の2第1項第1号 |
| 3 | 当該建設業者が注文者となった下請契約から数えて、下請次数が3を超えていないこと | 規則第17条の2第1項第2号 |
| 4 | 連絡員を当該建設工事に置いていること(土木一式・建築一式の場合は同業種の実務経験1年以上の者を工事現場に置く) | 規則第17条の2第1項第3号 |
| 5 | 工事現場の施工体制を情報通信技術を利用する方法により確認するための措置を講じていること | 規則第17条の2第1項第4号 |
| 6 | 人員の配置の計画書を作成し、工事現場ごとに備え置くこと(帳簿と同じ期間、営業所で保存) | 規則第17条の2第1項第5号・第2項 |
| 7 | 現場外から現場の状況を確認するために必要な映像及び音声の送受信が可能な情報通信機器が設置され、通信を利用できる環境が確保されていること | 規則第17条の3 |
| 8 | 兼務する建設工事の数が2を超えないこと | 令第30条 |
電磁的方法で作成・保存できます。記載事項は次のとおりです。
「時間外労働の見込みと実績」を書かせるのが、この計画書の肝です。兼任を認める代わりに、技術者に長時間労働のしわ寄せがいっていないかを記録で残させる構造になっています。形式的に埋めるのではなく、実績欄を運用してください。
次の3つは併用できません。ここは処分に直結します。
主任技術者及び監理技術者は、建設工事を適正に実施するため、施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び施工に従事する者の技術上の指導監督の職務を誠実に行わなければなりません。工事現場で施工に従事する者は、その指導に従わなければなりません(同条第2項)。
運用マニュアルは、元請の監理技術者と下請の主任技術者の職務を明確に分けています。元請の監理技術者の側だけ抜き出すと次のとおりです。
| 区分 | 元請の主任技術者・監理技術者の職務 |
|---|---|
| 役割 | 請け負った建設工事全体の統括的施工管理 |
| 施工計画の作成 | 工事全体の施工計画書等の作成/下請の作成した施工要領書等の確認/設計変更等に応じた修正 |
| 工程管理 | 工事全体の進捗確認/下請間の工程調整/工程会議等の開催、参加、巡回 |
| 品質管理 | 工事全体に関する下請からの施工報告の確認、必要に応じた立ち会い確認、事後確認等の実地の確認 |
| 技術的指導 | 工事全体における主任技術者の配置等法令遵守や職務遂行の確認/現場作業に係る実地の総括的技術指導 |
なお、監理技術者等と現場代理人は兼ねることができます(公共工事標準請負契約約款第10条)。
監理技術者等の工期途中での交代は、慎重かつ必要最小限とする必要があり、途中交代を行うことができる条件について注文者と合意がなされた場合に認められます(運用マニュアル 二-二(4))。
一般的な交代の条件として挙げられているのは次のとおりです。
そのうえで、交代の時期は工程上一定の区切りと認められる時点とし、交代前後で技術力が同等以上に確保されること、工事の規模・難易度等に応じ一定期間重複して工事現場に設置するなどの措置をとることが求められます。
公共工事では、入札の公平性の観点から、交代が認められる基本的な条件は入札前に明示された範囲とし、同等以上の技術力を有する技術者との交代であることが条件とされます。
出産・育児・介護が交代事由として明記されている点は、押さえておく価値があります。「一度就いたら最後まで動かせない」という運用は、制度が想定しているものではありません。書面での合意さえ取れば、働き方に合わせた交代は可能です。
| 行為 | 罰則 | 根拠 |
|---|---|---|
| 主任技術者又は監理技術者を置かなかったとき(法第26条第1項〜第3項、第26条の3第7項) | 100万円以下の罰金 | 法第52条第1号 |
| 上記について、法人の代表者・代理人・使用人等が業務に関して違反したとき | 行為者を罰するほか、法人にも100万円以下の罰金(両罰規定) | 法第53条第2号 |
| 特定建設業の許可を受けずに、5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)の下請契約を締結したとき(法第16条) | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金/法人には1億円以下の罰金 | 法第47条第1項第2号、法第53条第1号 |
| 資格者証の提示義務違反(法第26条第6項) | 建設業法上の罰則・過料はなし(法第55条の過料の対象に含まれない) | — |
東京都知事許可業者に対する処分は、東京都「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」(平成15年3月25日14都市建建第1135号。最終改正 令和8年1月7日7都市建建第1235号)によります。技術者に関する部分は次のとおりです。
| 違反の内容 | 処分の量定 |
|---|---|
| 法第26条の規定に違反して主任技術者又は監理技術者を置かなかったとき(資格要件を満たさない者を置いたときを含む) | 営業停止処分(原則15日以上) |
| 技術検定の受検又は監理技術者資格者証の交付申請に際し虚偽の実務経験の証明を行うことによって、不正に資格又は資格者証を取得した者を主任技術者又は監理技術者として工事現場に置いていた場合 | 営業停止処分(原則30日以上) |
| 工事現場に置かれた主任技術者又は監理技術者が、法第26条第3項又は法第26条の3第7項第2号に規定する専任義務に違反する場合 | 指示処分(原則) |
| 上記の指示処分に従わない場合 | 営業停止処分(原則7日以上) |
| 施工体制台帳・施工体系図の不作成又は虚偽作成 | 営業停止処分(原則7日以上) |
| 一括下請負(法第22条違反) | 営業停止処分(原則15日以上) |
あわせて、「資格要件を満たさない者を置いたとき」も不設置と同じ扱い(営業停止15日以上)である点を確認してください。指定建設業7業種で1級資格のない人を監理技術者として届け出ていた、というケースがこれに当たります。
監理技術者になれる資格と、特定建設業許可の特定営業所技術者になれる資格は、どちらも法第15条第2号イロハです。つまり資格の水準は同じです。
ただし置く場所が違います。特定営業所技術者は営業所に常勤して専らその職務に従事することが求められるため、原則として現場の監理技術者を兼ねることはできません。例外は、法第26条の5の要件を満たす場合(当該営業所で締結した契約に係る工事、請負代金1億円未満・建築一式2億円未満、兼ねる現場数1以下、ほか)だけです。
「技術者が1人しかいない会社が特定建設業許可を取ると、その1人は現場に出られない」のが原則です。特定建設業許可を目指す会社は、営業所側と現場側で最低2人の1級技術者を確保する計画を、許可申請の前に立てておく必要があります。技術者体制の作り方は 建設業許可の資格管理|持続可能な技術者体制のつくり方と年間運用カレンダー にまとめています。
技術職員数(Z点)の評価では、資格の区分ごとに点数が決まっています。
| 区分 | 点数 | 内容 |
|---|---|---|
| 1級監理受講者 | 6点 | 1級国家資格者・技術士で、監理技術者資格者証の交付を受け、監理技術者講習を受講して5年以内の者 |
| 1級技術者 | 5点 | 1級国家資格者・技術士(講習未受講) |
| 監理技術者補佐 | 4点 | 1級技士補等で主任技術者の要件を満たす者 |
| 登録基幹技能者等 | 3点 | 登録基幹技能者講習修了後5年以内、又はCCUSレベル4 |
| 2級技術者等 | 2点 | 2級国家資格者、又はCCUSレベル3 |
| その他技術者 | 1点 | 実務経験による主任技術者 等 |
ただし、加点対象は審査基準日時点で6か月を超えて在籍している技術職員です。直前に採用しても加点されません。
下請総額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になると、監理技術者の設置と同時に、施工体制台帳の作成と施工体系図の作成義務も発生します(法第24条の8、令第7条の4)。引き金が同じなので、セットで準備してください。
なお公共工事では、特定建設業者であるか否かにかかわらず、また下請金額にかかわらず、施工体制台帳を作成し工事現場ごとに備え付けなければなりません(入札契約適正化法第15条第1項)。民間工事の感覚のまま公共工事に入ると、ここで引っかかります。
| # | よくある理解 | 正しくは |
|---|---|---|
| 1 | 監理技術者は4,000万円から必要 | 5,000万円(建築一式8,000万円)から。しかもこれは下請に出す総額であって請負金額ではない |
| 2 | 請負金額が5,000万円を超えたら監理技術者 | 判定するのは下請契約の総額。自社施工だけなら10億円の工事でも主任技術者でよい |
| 3 | 下請でも大きな金額なら監理技術者を置く | 監理技術者は元請だけの義務。下請は主任技術者 |
| 4 | 専任は民間工事なら不要 | 令第27条第1項に事務所・共同住宅・工場・倉庫等が入っている。実質、戸建て住宅以外はほぼ対象 |
| 5 | 専任なら現場に常駐しなければならない | 常駐は要件ではない。1〜2日程度離れることは体制確保を条件に差し支えない |
| 6 | 近接した現場なら監理技術者も掛け持ちできる | 令第27条第2項の近接工事の特例は専任の主任技術者のみ。監理技術者には適用されない |
| 7 | 1級技士補を置けばどの業種でも2現場兼任できる | 機械器具設置・さく井・消防施設・清掃施設の4業種は、監理技術者資格者を補佐に置く必要がある(令第29条) |
| 8 | 資格者証があれば専任の監理技術者になれる | 資格者証と講習修了の両方が必要(法第26条第5項)。講習は5年で切れる |
| 9 | 公共工事も入札直前に技術者を採用すれば間に合う | 入札の申込みのあった日以前に3か月以上の雇用関係が必要 |
| 10 | 指導監督的実務経験も5,000万円に上がった | 4,500万円のまま(令第5条の2は改正対象外) |
発注者から直接請け負った工事について、下請に出す契約の総額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になるときです(建設業法第26条第2項、建設業法施行令第2条)。令和7年2月1日に4,500万円・7,000万円から引き上げられました。請負金額ではなく下請に出す総額で判定する点に注意してください。自社施工だけなら、金額にかかわらず主任技術者で足ります。
置く人と資格の水準が違います。主任技術者はすべての建設業者がすべての工事に置きますが、監理技術者は元請の特定建設業者が下請総額5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)の工事に置きます。資格は主任技術者が建設業法第7条第2号、監理技術者が第15条第2号で、監理技術者のほうが上位です。職務も、監理技術者は請け負った工事全体の統括的施工管理を担い、下請の主任技術者の配置など法令遵守の確認まで行います。
業種によって違います。指定建設業7業種(土木、建築、電気、管、鋼構造物、舗装、造園)は1級施工管理技士等の国家資格者または国土交通大臣認定者に限られ、実務経験では監理技術者になれません。それ以外の22業種は、一般建設業の営業所技術者の要件を満たしたうえで、元請として請け負った請負代金4,500万円以上の工事で主任技術者または監理技術者として2年以上の指導監督的実務経験があればなれます。
専任の監理技術者として選任されるには両方必要です(建設業法第26条第5項)。専任特例1号・2号で兼任する場合の監理技術者も同じです。資格者証は交付日から5年、講習は受講した日の属する年の翌年1月1日から起算して5年後の12月31日までが有効期間です。有効期間の起算日が違うので、別々に管理してください。
年の前半です。令和3年1月1日から、講習の有効期限は受講した日の属する年の翌年1月1日から起算して5年後の12月31日までとされています(建設業法施行規則第17条の17)。1月に受講しても12月に受講しても満了日は同じなので、年の早い時期に受講したほうが有効期間を長く使えます。
公共性のある施設等に関する重要な建設工事で、1件の請負代金が4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)のときです(建設業法第26条第3項、施行令第27条第1項)。専任が必要な期間は契約工期が基本ですが、契約締結後に現場施工へ着手するまでの期間、工事を全面的に一時中止している期間、工場製作のみが行われている期間、検査終了後に事務手続や後片付けのみが残っている期間は専任を要しません。ただし、その期間が設計図書または打合せ記録等の書面で明確になっていることが条件です。
常駐は要件ではありません。監理技術者制度運用マニュアルは「必ずしも当該工事現場への常駐を必要とするものではない」としています。打ち合わせや書類作成、研修・講習・試験への参加、休暇の取得などで短期間(1〜2日程度)現場を離れることは、適切な施工ができる体制を確保できる場合は差し支えありません。それを超える場合や、終日離れる日が週の稼働日の半数以上になる場合は、体制を確保したうえで元請なら発注者の了解が必要です。
できます。令和6年12月13日施行の改正建設業法により、専任特例1号と専任特例2号のいずれかを満たせば2現場まで兼任できます。専任特例1号は、各工事の請負代金が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)、現場間の移動時間がおおむね2時間以内、下請次数3以下、連絡員の配置、情報通信技術による施工体制の確認、人員配置計画書の作成、映像音声機器の設置など8つの要件をすべて満たす必要があります。専任特例2号は、各現場に監理技術者補佐を専任で置く方法で、請負代金の上限はありません。
できません。密接な関連のある2以上の工事を近接した場所で施工する場合の特例(建設業法施行令第27条第2項、工事現場の相互の間隔10km程度)は、専任の主任技術者にのみ適用されます。監理技術者制度運用マニュアルは「この規定は、専任の監理技術者については適用されない」と明記しています。監理技術者が2現場を持てるのは専任特例1号または2号による場合だけです。
建設業法第52条第1号により100万円以下の罰金で、法人にも同額の罰金が科される両罰規定があります(第53条第2号)。東京都知事許可業者の場合、東京都の監督処分の基準では営業停止処分(原則15日以上)とされ、資格要件を満たさない者を置いたときも同じ扱いです。専任義務違反は指示処分が原則で、従わない場合は営業停止処分(原則7日以上)になります。
令和8年1月7日施行の東京都の監督処分の基準では、技術検定の受検または監理技術者資格者証の交付申請に際し虚偽の実務経験の証明を行うことによって不正に資格または資格者証を取得した者を、主任技術者または監理技術者として工事現場に置いていた場合、営業停止処分(原則30日以上)とされています。本人の資格の問題にとどまらず、置いた会社が処分を受けます。
できます。監理技術者制度運用マニュアルは、死亡、傷病、被災、出産、育児、介護、退職等を一般的な交代の条件として挙げています。ただし途中交代は慎重かつ必要最小限とされ、条件について注文者と書面その他の方法で合意する必要があります。交代の時期は工程上一定の区切りと認められる時点とし、技術力が同等以上に確保されること、一定期間重複して現場に設置するなどの措置をとることが求められます。公共工事では、原則として入札前に明示された範囲の条件に限られます。
監理技術者の論点は、金額の基準が3つ並んでいることに尽きます。
この3つを取り違えなければ、大きな事故は起きません。そのうえで、資格者証と講習の2つの期限を別管理にすること、専任を要しない期間を書面に残すこと、資格者証の所属建設業者名を最新にしておくこと。この3つが、東京都の立入検査や公共工事の現場確認で実際に見られる箇所です。
技術者の資格や経験の証明は、書類が残っているかどうかで結論が変わります。過去の工事の契約書・注文書が手元にあるうちに、整理を始めてください。
「この工事は監理技術者が要るのか」「特定建設業の許可を取ると技術者が現場に出られなくなるのか」という段階でのご相談で構いません。受注してからの配置変更が、いちばん損失を生みます。
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