建設業許可の決算変更届とは|期限・必要書類・未提出の対応を行政書士が解説

建設業許可の決算変更届とは|期限・必要書類・未提出の対応を行政書士が解説

建設業許可の決算変更届(事業年度終了届)は、毎事業年度経過後4か月以内の法定義務です。工事経歴書・財務諸表・納税証明書など必要書類、決算期別の期限早見表、工事経歴書の7割ルール、出し忘れて5年分たまった場合の対応と罰則を、東京都の運用にそって特定行政書士が解説します。

建設業許可は、取ったら5年間そのままでよい許可ではありません。毎年、決算のたびに届出が必要です。それが決算変更届です。 ところが、この届出は出さなくても許可証が回収されるわけではなく、通知が来るまで気づかないことも多いため、気づいたときには3期分、4期分たまっているという相談が絶えません。そして、たまったまま更新の時期を迎えると、更新申請そのものが受け付けられません。 このページでは、決算変更届の法的な位置づけと期限の数え方、東京都に出す書類の一覧、つまずきやすい工事経歴書の書き方、そして出し忘れて数期分たまってしまった場合の現実的な対応を、条文と東京都の案内にそって整理します。

この記事の結論

  • 決算変更届は、毎事業年度経過後4か月以内に提出する法定の義務です(建設業法第11条第2項)。決算が終わるたび、許可の有効期間中は毎年必要です。
  • 提出しなくても、その時点で許可が自動的に取り消されるわけではありません。ただし更新申請が受け付けられないため、放置すれば結果的に許可は失効します。
  • 未提出は建設業法違反です。6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(法第50条第1項第2号)の対象で、行政庁による指示処分(法第28条第1項)、指示に従わない場合の営業停止(同条第3項)もあり得ます。
  • 中身は、工事経歴書・直前3年の各事業年度における工事施工金額・建設業用の財務諸表・納税証明書が柱です。株式会社は事業報告書も必要です。
  • 手数料はかかりません。東京都では郵送でも、電子申請(JCIP)でも提出できます。
  • 一番つまずくのは工事経歴書です。経営事項審査を受けるかどうかで記載ルールが変わり、元請工事から7割、次に全体で7割という順序があります。
  • 未提出分はまとめて1冊にはできません。1期ごとに1式ずつ作成して提出します。5期分たまっていれば5式です。
  • 期限に間に合わなくても、出さないより遅れて出すほうが必ず有利です。提出さえ済めば更新申請の道は開きます。

決算変更届とは|毎年出す「決算報告」の届出です

建設業法第11条第2項が根拠です

建設業法第11条第2項は、次のように定めています。
許可に係る建設業者は、毎事業年度終了の時における第六条第一項第一号及び第二号に掲げる書類その他国土交通省令で定める書類を、毎事業年度経過後四月以内に、国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
ここでいう第6条第1項第1号・第2号とは、次の2つです。
号 書類 様式
第1号 工事経歴書 様式第2号
第2号 直前3年の各事業年度における工事施工金額を記載した書面 様式第3号
これに、施行規則第10条が定める財務諸表・事業報告書・納税証明書が加わります。この一式をまとめて提出する手続が、実務で「決算変更届」と呼ばれているものです。

呼び方が複数あります

同じ手続に、行政庁や事務所によって違う呼び名が使われています。すべて同じものだと理解してください。
  • 決算変更届
  • 決算報告 / 決算報告書
  • 事業年度終了報告書 / 事業年度終了届
  • 変更届出書(決算)
  • 東京都の様式上の名称:別紙8
「決算変更届は出したが、事業年度終了届はまだ出していない」ということは起こりません。同一の届出です。

「変更届」とは別の手続です

名前が似ているため混同されますが、30日以内の変更届とは別物です。
手続 内容 期限 条文
変更届出書 商号・営業所・役員等・資本金などの変更 変更から30日以内 法第11条第1項
決算変更届 その事業年度の工事実績と決算内容の報告 事業年度経過後4か月以内 法第11条第2項
使用人数・定款等の変更 使用人数、令3条使用人の一覧表、定款 事業年度経過後4か月以内 法第11条第3項、規則第10条第2項
常勤役員等・営業所技術者の交代 経管・専技が欠けた場合の後任 2週間以内 法第11条第4項・第5項
廃業等の届出 廃業・解散・許可業種の一部廃止 30日以内 法第12条
役員変更などの30日以内の届出については建設業許可の変更届出書|2週間・30日・4か月の期限と必要書類で詳しく解説しています。決算変更届を出したからといって、役員変更の届出を出したことにはなりません。逆もまた同じです。

提出した内容は閲覧の対象になります

意外に知られていませんが、決算変更届で提出した工事経歴書・工事施工金額・財務諸表は、法第13条および施行規則第12条により公衆の閲覧に供される書類とされています。取引先や金融機関、元請が閲覧できる前提の書類です。 だからこそ、行政庁は記載の整合性を見ます。「どうせ誰も見ない」書類ではないという点は、作成の前提として押さえておいてください。閲覧の具体的な範囲や方法は許可行政庁の運用によりますので、東京都の許可申請書類の閲覧の案内をご確認ください。

提出期限|「4か月以内」の数え方と決算期別の早見表

起算日は事業年度の翌日です

条文は「毎事業年度経過後四月以内」です。3月31日決算であれば、4月1日から起算して7月31日が期限になります。 期限が土曜・日曜・祝日にあたる場合は、行政機関の休日の取扱いにより翌開庁日となるのが一般的ですが、期限ぎりぎりの提出を前提にした計算はおすすめしません。財務諸表の組替えや納税証明書の取得に日数がかかるためです。
財務諸表の具体的な組替え方法は一般の決算書と建設業財務諸表の違い|変換の方法で解説しています。

決算期別の期限早見表

決算日 決算変更届の期限
1月31日 5月31日
2月末日 6月30日
3月31日 7月31日
4月30日 8月31日
5月31日 9月30日
6月30日 10月31日
7月31日 11月30日
8月31日 12月31日
9月30日 1月31日
10月31日 2月末日
11月30日 3月31日
12月31日 4月30日
3月決算が最も多いため、東京都の建設業課は6月から7月にかけて混み合います。税理士の決算確定を待ってから着手すると、実質的な作業期間が1か月を切ることも珍しくありません。決算確定の見込みが立った時点で、工事経歴書だけ先に作り始めるのが現実的な進め方です。 自社の届出期限と更新期限をまとめて確認したい方は、更新・届出期限の診断ツールをご利用ください。

決算期を変更した場合

事業年度を変更した事業年度は、変更後の事業年度の終了日から4か月以内が期限になります。例えば3月決算から9月決算に変更した場合、6か月の変則決算期についても届出が必要で、期限は翌1月31日です。変則決算だから省略できる、ということはありません。

決算変更届の必要書類一覧【東京都・法人/個人】

東京都では、表紙にあたる変更届出書(別紙8)の記載欄に、提出する書類の番号を丸で囲む方式が採られています。別紙8に印刷されている項目は次の11個です。
(1) 工事経歴書 (2) 工事施工金額 (3) 貸借対照表及び損益計算書 (4) 株主資本等変動計算書及び注記表 (5) 事業報告書 (6) 附属明細表 (7) 所得税納付済額証明書 (8) 事業税納付済額証明書 (9) 使用人数 (10) 定款 (11) 健康保険等の加入状況
これを、誰が何を出すのかで整理します。

全員が毎年出す書類

書類 様式 内容
変更届出書(表紙) 様式第22号の2/東京都は別紙8 事業年度と提出書類の特定
工事経歴書 様式第2号 許可業種ごとに作成
直前3年の各事業年度における工事施工金額 様式第3号 3期分の施工金額を業種別・元請下請別に記載
財務諸表 下記のとおり 建設業の様式に組み替えたもの
納税証明書 — 知事許可は事業税、大臣許可は法人税・所得税

財務諸表は組織形態で様式が変わります

施行規則第10条第1項は、財務諸表の範囲を次のように分けています。この区分を間違えると補正になります。
区分 貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・注記表 附属明細表 事業報告書
株式会社(小会社を除く) 様式第15号〜第17号の3 必要 必要
株式会社のうち小会社 様式第15号〜第17号の2 不要 必要
株式会社以外の法人(合同会社・特例有限会社など) 様式第15号〜第17号の2 不要 不要
個人事業主 様式第18号・第19号(貸借対照表・損益計算書のみ) 不要 不要
ここでいう小会社とは、施行規則第4条第1項第8号により「資本金の額が1億円以下であり、かつ、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上でない株式会社」をいいます。中小の建設会社はほぼこれに該当するため、附属明細表は不要です。 もうひとつ実務で効く定義があります。同号は「株式会社(特例有限会社を除く)」と規定しています。つまり、旧有限会社のままの特例有限会社は「株式会社以外の法人」として扱われ、事業報告書も附属明細表も不要です。「有限会社なのに事業報告書を求められた」というときは、この点を確認してください。 なお、ここでいう財務諸表は税務申告に使った決算書そのままではなく、建設業法施行規則の様式に組み替えたものです。完成工事高と兼業事業売上高の区分、完成工事原価報告書、未成工事支出金・未成工事受入金といった建設業特有の勘定科目に置き換える作業が必要になります。組替えの具体的な方法は建設業財務諸表と一般の財務諸表の違い|必要な組替えを解説で詳しく扱っています。 消費税の扱い(税込か税抜か)は、工事経歴書・工事施工金額・財務諸表で統一してください。年度によって切り替えると、数字が合わなくなり補正の原因になります。

納税証明書は許可の種類で変わります

許可の種類 必要な納税証明書 発行元
都道府県知事許可(東京都知事許可) 事業税の納付すべき額及び納付済額を証する書面 都税事務所
国土交通大臣許可 法人は法人税、個人は所得税の納付すべき額及び納付済額を証する書面 税務署
なお、施行規則第10条第3項により、知事許可業者の事業税の納税証明書は、本人の同意があれば提出を省略させることができる仕組みが設けられています。実際に省略できるかは都道府県の運用によりますので、提出前に東京都の建設業許可 手引、申請書類等で最新の取扱いをご確認ください。 個人事業主で、個人事業税が課されず納税証明書に事業税額の記載がない場合には、税務署発行の納税証明書(その2)など、事業所得を確認できる書類で代える取扱いがあります。

変更があったときだけ一緒に出す書類

法第11条第3項は、使用人数を記載した書面その他省令で定める書類の記載事項に変更を生じたときは、毎事業年度経過後4か月以内に届け出るよう定めています。施行規則第10条第2項により、その対象は次のとおりです。
書類 様式 提出が必要な場合
使用人数を記載した書面 様式第4号 前回届出時から人数に変更があったとき
令3条使用人の一覧表 様式第11号 支店・営業所の代表者に変更があったとき
定款 — 定款変更があったとき
もうひとつ、健康保険等の加入状況(様式第7号の3)があります。施行規則第7条の2第3項は、記載事項に変更が生じたときは2週間以内の提出を求めていますが、「当該変更が従業員数のみである場合においては、毎事業年度経過後四月」以内でよいと定めています。 つまり、加入している保険の種類が変わったわけではなく、単に人数が増減しただけなら、決算変更届のタイミングでまとめて出せます。東京都の郵送案内でも「加入人数のみの変更の場合は、決算報告の変更届時にまとめて提出可」と明記されています。この点を知らずに、人数が変わるたびに2週間以内の届出をしている事業者は少なくありません。

工事経歴書の書き方|経審を受けるかどうかで変わります

決算変更届で最も時間がかかり、最も補正が出るのが工事経歴書(様式第2号)です。

大前提|許可業種ごとに1枚

工事経歴書は、許可を受けている建設業の種類ごとに作成します。とび・土工工事業と土木工事業の2業種を持っているなら、原則として2枚です。その事業年度に施工実績がない業種についても、実績なしとして作成します。「実績がないから出さない」ではありません。 対象は、その事業年度に完成した工事です。500万円未満の軽微な建設工事も、記載の対象から外れるわけではありません。

経営事項審査を受ける場合の記載順序

国土交通省中国地方整備局が示している記載方法によれば、経営規模等評価(経審)を申請する場合は、次の順序で記載します。
  1. まず元請工事の完成工事について、請負金額の大きい順に、元請完成工事高の合計額のおおむね7割を超えるところまで記載する。
  2. 続けて、①で記載した以外の元請工事および下請工事の完成工事について、請負金額の大きい順に、すべての完成工事高の合計額のおおむね7割を超えるところまで記載する。
  3. さらに続けて、主な未成工事について、請負代金の額の大きい順に記載する。
これに、次の打ち切りルールがあります。
  • 税込500万円(建築一式工事は税込1,500万円又は木造住宅で延べ面積150㎡)未満の建設工事については、10件を超えて記載する必要はありません。①と②を通算して10件に達したかどうかで判断します。
  • 記載した完成工事の請負金額の合計額が1,000億円を超える場合は、それを超える部分について記載する必要はありません。

経営事項審査を受けない場合

公共工事の入札に参加しない事業者は、上記の順序による必要はありません。主な完成工事について請負代金の額の大きい順に記載し、それに続けて主な未成工事を請負代金の額の大きい順に記載すれば足ります。 とはいえ、将来的に公共工事への参入を考えているなら、経審を受ける場合の書き方で作っておくほうが安全です。過去の工事経歴書は経審の完成工事高の裏づけとして参照されるため、後から書き方を変えると整合性の説明が必要になります。経審の全体像は経営事項審査サービスをご覧ください。

記載でつまずきやすい点

項目 注意点
工事名称 請負契約書に記載された名称をそのまま書きます。勝手に略さないでください
注文者 契約の相手方を記載します。個人名の場合の取扱いは行政庁の案内に従います
元請・下請の別 該当欄にレ点。発注者から直接請けたものが元請です
配置技術者 主任技術者・監理技術者の氏名と、専任かどうかを記載します
請負代金の額 消費税の扱いを財務諸表と統一します
着工・完成年月 完成年月がその事業年度内にあるものが完成工事です
合計欄 財務諸表の完成工事高と一致していることが前提です
最後の点が重要です。工事経歴書の完成工事高の合計と、損益計算書の完成工事高がずれていると補正になります。経審を受ける場合は、この数字がそのまま評点の基礎になります。 配置技術者の欄は、技術者の専任要件と突き合わされることがあります。同じ技術者が同時期に複数の専任工事に配置されていれば、そこで矛盾が見えてしまいます。技術者の配置ルールについては現場専任とは|主任技術者・監理技術者の専任義務、主任技術者になるための資格要件と実務経験をあわせてご確認ください。

提出方法|東京都知事許可の場合

手数料はかかりません

決算変更届に手数料は不要です。収入証紙も現金納付も必要ありません。費用がかかるとすれば、納税証明書の発行手数料と、行政書士に依頼した場合の報酬です。

提出先と部数

東京都知事許可の場合、提出先は次のとおりです。
〒163-8001 東京都新宿区西新宿2-8-1 東京都 都市整備局 市街地建築部 建設業課 審査担当2番窓口
部数は、施行規則第11条が第6条を準用しており、都道府県知事許可については当該知事の定める数とされています。東京都では正本と副本を作成し、副本に受付印を押して返却を受ける運用です。

郵送で提出できます

東京都は、決算報告(決算変更届)について従来どおり郵送を認めています。2026年7月1日更新の案内では、次のような取扱いが示されています。
  • 封筒の表に【許可番号】【決算報告書○期分在中】と朱書きする
  • 建設業許可申請送付票兼審査票に必要事項を記入して同封する
  • 副本返信用のレターパック(返信先を記入したもの)を必ず同封する
  • 個人情報を含むため、書留(簡易書留を含む)またはレターパックで送付する
  • 同一の申請者の書類はすべて同封する(決算報告書だけ別便にしない)
  • 申請書と変更届・決算報告は、それぞれ別の書類として作成する
  • 代理による送付で決算報告のみの場合は、複数の事業者分をまとめて送付できる
最後の点は、行政書士が複数社分をまとめて送付できる根拠になっています。逆に、決算報告以外の書類が混ざる場合は事業者ごとの送付が必要です。

電子申請(JCIP)でも提出できます

東京都知事許可は、建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)による電子申請に対応しています。利用にはgBizIDが必要で、新規取得には2週間程度かかります。 電子申請で特に注意すべきなのは、東京都が案内で明示している次の一文です。
必要な届出のない状態では、受付を行えません。前回の申請・届出から今回の申請までに必要な届出が行われているか必ず事前にご確認ください。
つまり、決算変更届が未提出のままでは、更新申請などの次の手続に進めません。また、関連する複数の申請・届出を出す場合は、「電子申請」か「紙申請」のいずれかに統一する必要があります。決算変更届だけ電子、更新は窓口、という混在はできません。 東京都での申請全般の流れは東京都の建設業許可申請ガイドにまとめています。

決算変更届を出さないとどうなるか

ここが最も相談の多いところです。順に整理します。

すぐに許可が取り消されるわけではありません

まず事実として、決算変更届を1期出し忘れただけで、直ちに許可が取り消されることはありません。建設業法第29条の許可取消事由に「決算変更届の未提出」は挙げられていないためです。 ただし、それは「出さなくてよい」という意味ではまったくありません。次の3つの経路で、確実に不利益が生じます。

経路1|更新申請が受け付けられない

もっとも現実的な影響がこれです。未提出の事業年度がある状態では、更新申請の受付が行われません。 建設業法第6条第2項は、更新申請では工事経歴書・工事施工金額・使用人数の添付を要しないと定めています。これは、毎年決算変更届で提出されていることが前提だからです。前提が満たされていなければ、更新の審査に必要な情報が揃いません。 そして更新申請は、有効期間満了日の30日前までに提出することとされています。未提出分の作成に追われて30日前を過ぎると、失効の危険が現実になります。期限が迫っている方は建設業許可の更新、30日前を過ぎたら?と期限が迫っている・未提出の場合の緊急サポートをご確認ください。 許可が失効すれば、500万円以上(建築一式は1,500万円以上)の工事は請け負えません。無許可営業の扱いについては建設業許可がないとどうなる?無許可営業の罰則で解説しています。

経路2|監督処分

決算変更届の未提出は建設業法違反です。行政庁は、建設業者が法の規定に違反した場合、必要な指示をすることができます(法第28条第1項)。そして、指示に従わないときは1年以内の期間を定めて営業の全部又は一部の停止を命ずることができます(同条第3項)。 東京都が知事許可業者向けに配布している案内では、決算期終了後4か月と1日を過ぎて未提出の場合に建設業課から指導文書が送付され、6か月と1日を過ぎてなお未提出の場合に指示処分通知書が交付されるという運用が示されています。処分の具体的な基準は東京都が公表している建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準によります。 指示処分・営業停止処分は公表の対象です。元請や発注者の信用調査で確認されれば、取引そのものに影響します。

経路3|罰則

建設業法第50条第1項第2号は、第11条第1項から第4項までの規定による書類を提出せず、又は虚偽の記載をしてこれを提出したときは、6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処すると定めています。同条第2項により、情状によって併科されることもあります。 「たかが届出」という感覚で扱われがちですが、条文上は刑事罰が用意されている義務です。

経審・入札にも影響します

経営事項審査は、決算変更届の提出を前提とした手続です。未提出の事業年度があると経審を受けられず、経審を受けられなければ入札参加資格の申請・更新もできません。公共工事を受注している事業者にとっては、事実上、受注機会が止まることを意味します。 入札参加までの流れは入札参加資格申請をご覧ください。

数期分たまってしまった場合の対応手順

「4期分たまっている」「前任者が辞めてから誰も出していない」という状況でも、解決できないケースはほとんどありません。手順は次のとおりです。

手順1|自社の未提出期を特定する

まず、どの事業年度まで提出済みかを確定します。手元の副本(受付印のあるもの)を古い順に並べれば、抜けている期が分かります。副本が見当たらない場合は、東京都の建設業課に許可番号を伝えて確認します。

手順2|各期の決算書と工事資料を集める

期ごとに、次を揃えます。
  • 税務申告に使った決算書(貸借対照表・損益計算書・勘定科目内訳明細書)
  • 法人税・所得税の申告書の控え
  • その期に完成した工事の契約書・注文書・請求書
  • その期の配置技術者が分かる資料
工事資料が最大のネックです。数年前の工事を、業種別・元請下請別・請負金額順に並べ直す必要があるためです。工事台帳や請求書ファイルが年度別に整理されていれば作業は早く進みます。

手順3|1期につき1式、古い順に作成する

未提出分をまとめて1冊にすることはできません。5期分たまっていれば、5期分それぞれについて表紙から一式を作成します。工事施工金額(様式第3号)は直前3年分を書く様式のため、期がずれるごとに記載内容も変わります。 作成は古い期から順に行ってください。前期の数字が次期の様式に反映されるためです。

手順4|まとめて提出する

作成が終わったら、古い期から順に重ねて一括で提出します。東京都では封筒の表に「決算報告書○期分在中」と朱書きします。提出できたところで、更新申請に進む条件が整います。

手順5|再発を防ぐ仕組みにする

決算変更届の出し忘れは、担当者の交代や税理士との役割分担の曖昧さから生じます。決算確定と同時に着手する社内ルールを作るか、許可維持の年間サポートのように外部で期限を管理する体制にしておくと、同じことは起きません。

よくある質問

Q. 建設業許可の決算変更届とは何ですか?
  1. 建設業許可を受けた建設業者が、毎事業年度が終了するたびに、その事業年度の工事実績と決算内容を許可行政庁に提出する法定の届出です。建設業法第11条第2項に基づく義務で、事業年度終了届、決算報告、変更届出書(決算)とも呼ばれます。工事経歴書、直前3年の各事業年度における工事施工金額、建設業の様式による財務諸表、納税証明書が中心で、株式会社は事業報告書も必要です。許可の有効期間中は毎年提出します。
Q. 決算変更届はいつまでに提出すればよいですか?
  1. 毎事業年度経過後4か月以内です。3月31日決算であれば7月31日、9月30日決算であれば翌年1月31日が期限になります。決算期を変更した場合も、変更後の事業年度の終了日から4か月以内が期限です。期限が土日祝にあたる場合は翌開庁日となるのが一般的ですが、財務諸表の組替えや納税証明書の取得に日数がかかるため、余裕をもって着手してください。
Q. 決算変更届を出さないとどうなりますか?
  1. その時点で許可が自動的に取り消されるわけではありませんが、未提出の事業年度があると更新申請が受け付けられず、結果として許可が失効します。また建設業法違反として、行政庁の指示処分(法第28条第1項)、指示に従わない場合の営業停止(同条第3項)の対象になり、法第50条第1項第2号により6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象にもなります。経営事項審査も受けられなくなるため、入札参加資格の申請・更新も止まります。
Q. 決算変更届を5年分まとめて提出できますか?
  1. 未提出分をまとめて1冊にすることはできません。事業年度ごとに表紙から一式を作成し、5期分であれば5式を提出します。ただし、作成したものを一度にまとめて窓口や郵送で提出することは可能です。作成は古い期から順に行ってください。直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第3号)は期ごとに記載内容が変わるためです。提出が済めば、更新申請に進む条件は整います。
Q. 決算変更届の必要書類を教えてください。
  1. 全員に共通するのは、表紙となる変更届出書、工事経歴書(様式第2号)、直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第3号)、建設業の様式による財務諸表、納税証明書です。財務諸表は、株式会社(小会社を除く)は貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・注記表・附属明細表と事業報告書、小会社は附属明細表を除いたものと事業報告書、株式会社以外の法人と特例有限会社は事業報告書も附属明細表も不要、個人事業主は貸借対照表と損益計算書のみです。納税証明書は、東京都知事許可であれば事業税、大臣許可であれば法人税または所得税のものです。
Q. 決算変更届に手数料はかかりますか?
  1. かかりません。収入証紙や現金の納付は不要です。費用が発生するとすれば、納税証明書の発行手数料と、行政書士に依頼した場合の報酬のみです。手数料が必要になるのは新規申請・業種追加申請・更新申請などの許可申請であり、届出には手数料が設定されていません。
Q. 決算変更届は自分で作成できますか?
  1. 作成できます。東京都の手引と様式は都のホームページで公開されており、Excel様式も配布されています。ただし、税務申告用の決算書を建設業の様式に組み替える作業と、工事経歴書の記載順序(元請工事から7割、次に全体で7割)が実務上の壁になります。特に、工事経歴書の完成工事高の合計と損益計算書の完成工事高が一致していることが求められるため、組替えの段階でずれると補正になります。1期目を専門家と作り、以降を自社で回す進め方が現実的です。
Q. 工事経歴書はどの工事まで書けばよいですか?
  1. 経営事項審査を受ける場合は、まず元請工事の完成工事を請負金額の大きい順に、元請完成工事高の合計額のおおむね7割を超えるところまで記載し、続けてそれ以外の元請工事と下請工事を、すべての完成工事高の合計額のおおむね7割を超えるところまで記載します。その後に主な未成工事を大きい順に記載します。税込500万円(建築一式工事は税込1,500万円又は木造住宅で延べ面積150㎡)未満の工事は10件を超えて記載する必要はありません。経営事項審査を受けない場合は、主な完成工事を請負代金の額の大きい順に記載し、続けて主な未成工事を記載すれば足ります。
Q. 決算変更届は電子申請できますか?
  1. できます。東京都知事許可は建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)に対応しており、決算変更届も電子で提出できます。利用にはgBizIDが必要で、新規取得には2週間程度かかります。ただし、必要な届出が未提出の状態では受付が行われないこと、関連する複数の申請・届出は電子申請と紙申請のいずれかに統一する必要があることに注意してください。郵送での提出も引き続き認められています。
Q. 健康保険等の加入状況は毎年出すのですか?
  1. 記載事項に変更が生じたときに提出するもので、原則は2週間以内です。ただし施行規則第7条の2第3項により、変更が従業員数のみである場合は毎事業年度経過後4か月以内でよいとされています。したがって、加入している保険の種類が変わったわけではなく人数が増減しただけであれば、決算変更届にあわせて提出すれば足ります。東京都の郵送案内でも、加入人数のみの変更は決算報告の変更届時にまとめて提出できることが示されています。

決算変更届は、5年後の更新のための積み立てです

決算変更届は、提出しても許可証の見た目が変わるわけではなく、成果が実感しにくい手続です。それでも毎年きちんと積み上げている会社は、更新のときに何も起きません。逆に、たまっている会社は、更新の直前に数年分の工事資料を掘り起こす作業に追われます。 差が出るのは書類の難易度ではなく、着手のタイミングです。決算が確定してから動くのではなく、決算作業と並行して工事経歴書を作り始めれば、4か月の期限は十分に間に合います。 当事務所では、東京都知事許可・国土交通大臣許可の決算変更届について、財務諸表の組替えから工事経歴書の作成、納税証明書の取得代行、郵送・電子申請による提出まで対応しています。数期分が未提出のケース、更新期限が迫っているケースも取り扱っています。まずは決算変更届サービスをご覧いただき、相談・見積依頼フォームからお問い合わせください。何期分たまっているかを最初に伺い、更新期限から逆算した進め方をお示しします。 許可取得後に必要な手続の全体像は許可後の届出・更新ガイド、費用の目安は料金・費用の考え方にまとめています。

参考にした一次資料

本記事は、建設業法(令和7年12月12日施行版)、建設業法施行規則の現行版、および東京都都市整備局が公開する令和7年度の手引・案内を2026年8月12日時点で確認して作成しています。提出書類の範囲、納税証明書の省略の可否、郵送の宛先や電子申請の運用は変更されることがあります。実際に手続を行う際は、その時点の最新の一次資料および許可行政庁の案内をご確認ください。本記事は一般的な解説であり、個別事案についての法的助言ではありません。

更新履歴

  • 2026年8月12日:公開。建設業法第11条第2項・第3項、施行規則第10条・第7条の2第3項・第11条を確認し、財務諸表の様式区分(小会社・特例有限会社の扱い)、健康保険等の加入状況の従業員数のみ変更の特例、事業税納税証明書の同意による省略を反映。東京都の郵送対応(2026年7月1日更新)および電子申請の案内(2025年9月19日更新)の内容を反映。

著者・監修

特定行政書士 萩本昌史(行政書士萩本昌史事務所/東京都世田谷区) 東京都の建設業許可について、新規申請・業種追加・更新・各種変更届・決算変更届・経営事項審査・入札参加資格申請を支援しています。決算変更届は、毎年の積み重ねが5年後の更新をそのまま左右する手続です。数期分が未提出の状態からの立て直しも、更新期限から逆算した工程でお引き受けしています。 プロフィール:https://kensetsu-kyoka.tokyo.jp/profile/masashi-hagimoto/