「今は500万円未満の工事だけだから許可はいらない」「元請から建設業許可を求められたが、ないとどうなるのか」「許可申請中なら工事を始めてもよいのか」――建設業者からよく聞く疑問です。結論として、軽微な建設工事だけを請け負う場合を除き、許可が必要な規模・内容の工事を無許可で営業すると、建設業法違反となります。
この記事の結論
- 建設業許可が必要な工事を無許可で請け負うと、刑事罰、営業停止等の対象になり得ます。
- 建築一式以外は請負代金500万円未満、建築一式は1,500万円未満または一定の木造住宅など、軽微な工事の例外があります。
- 金額だけでなく、工事の種類、税込金額、契約の分け方、元請・下請の立場を確認する必要があります。
- 許可取得の要件確認は、受注や着工の前に行うほど、契約トラブルと手戻りを減らせます。
建設業許可がないとどうなるのか
建設工事の完成を請け負うことを営業する場合、公共工事か民間工事かを問わず、原則として建設業許可が必要です。許可は「会社が建設業をしているか」だけでなく、土木一式、建築一式、電気、管、内装仕上、消防施設など29業種ごとに判断します。現在持っている許可と違う業種の工事を請け負う場合にも注意が必要です。
必要な許可を受けずに営業すると、行政庁による指導・監督の対象となるほか、建設業法上の罰則が問題になります。契約書の名目を「業務委託」「材料販売」「作業応援」と変えても、実質的に建設工事の完成を請け負う契約なら、許可の要否は実態で判断されます。
無許可営業の罰則と行政上のリスク
刑事罰の対象になる
建設業法第47条では、許可を受けないで建設業を営んだ者について、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となる規定があります。情状により拘禁刑と罰金が併科される場合もあります。法人については、法律に定める罰金が重くなる規定があるため、「小さな会社だから問題にならない」と考えるのは危険です。
罰則は、工事が完成したか、代金を回収できたかだけで決まるものではありません。許可が必要な規模の工事を請け負う営業を行った時点で問題となる可能性があるため、契約前に許可の要否を判定します。
営業停止や指導・監督につながる
無許可業者に対しては、工事現場を管轄する都道府県などが指導・監督を行います。受注先や元請会社から行政庁へ情報提供されることもあり、指摘を受けた後に契約を取り消すだけでは解決しない場合があります。違反の内容によっては、今後の営業や許可取得にも影響します。
取引先・融資・入札で不利になる
大手元請会社は、協力会社の登録時に許可番号、許可業種、許可の有効期間を確認することがあります。許可がない状態では、受注できる工事が限定されるだけでなく、取引先の審査、金融機関への説明、公共工事の入札参加資格、経営事項審査にも進みにくくなります。
建設業許可が不要となる「軽微な工事」
国土交通省が案内する軽微な建設工事だけを請け負う場合は、建設業許可が不要となる例外があります。ただし、税込金額で計算すること、工事の種類ごとに判断することが重要です。
| 工事の種類 | 許可が不要となり得る軽微な工事 |
|---|---|
| 建築一式工事 | 1件の請負代金が1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事 |
| 建築一式以外 | 1件の請負代金が500万円未満 |
建築一式工事は、請負代金の基準と木造住宅の面積基準が別にあります。金額が1,500万円以上でも、延べ面積150㎡未満の木造住宅に該当する場合がある一方、建築一式以外の電気工事や内装工事に面積基準はありません。
「500万円未満なら絶対に大丈夫」とはいえない理由
消費税を含めて判断する
軽微な工事の請負代金は、消費税および地方消費税を含む金額で確認します。税抜500万円で契約したつもりでも、税込金額が基準以上になることがあります。見積書、注文書、請求書の金額が一致しているかも確認しましょう。
同じ工事を不自然に分割しない
一つの工事を複数の契約に分けて、それぞれを500万円未満にする方法は、実態に照らして判断されます。材料費や運搬費を別契約にした場合も、工事全体の関係を確認する必要があります。前回記事の500万円の分割発注に関する解説も参考にしてください。
許可業種と工事内容は別に確認する
請負金額が500万円未満でも、工事内容が現在の許可業種に含まれるとは限りません。たとえば、内装仕上工事業の許可だけで電気工事を請け負えるか、管工事の許可だけで保温・塗装を含む工事を行えるかは、施工内容と附帯工事の関係から判断します。
元請・下請なら許可がなくてもよいのか
下請工事だから建設業許可が不要、ということではありません。軽微な工事の例外に当たらない工事を請け負うなら、元請・一次下請・二次下請を問わず許可が必要です。元請会社が許可を持っていても、下請会社の許可要件を補うことにはなりません。
また、元請会社から「許可申請中でよい」「許可業者の名義を借りればよい」と言われても、名義貸しは適切な対応ではありません。契約主体、実際の施工者、許可業種、主任技術者等の配置を整理し、許可が必要な工事は許可取得後に請け負う計画にします。
申請中でも許可取得済みではありません
建設業許可の申請書を提出したことや、行政書士へ依頼したことだけで、許可を受けたことにはなりません。許可通知を受ける前に、許可が必要な工事の契約・着工ができるかは、工事の内容と軽微な工事の例外を個別に確認してください。
建設業許可を取得するメリット
受注できる工事の範囲が広がる
許可を取得すると、軽微な工事の例外を超える請負契約を適法に締結できるようになります。大きな工事を受けられるだけでなく、見積段階で「許可がないため対象外」となる案件を減らせます。許可業種は、実際に受注したい工事に合わせて選ぶことが大切です。
元請・発注者からの信用を示せる
建設業許可は、経営業務の管理、営業所技術者等、誠実性、財産的基礎などを審査する制度です。許可を取得していることだけで工事品質が保証されるわけではありませんが、登録審査や取引先の確認に対応しやすくなります。
将来の経審・入札・人材採用に備えられる
公共工事を目指す場合は、許可取得後の決算変更届、経営事項審査、入札参加資格申請まで計画します。従業員を採用し、会社を拡大し、事業承継を考える場合も、許可取得をきっかけに経営資料や工事記録を整備できます。
建設業許可の取得条件と必要な準備
建設業許可を取得するには、無許可営業を避けたいという理由だけでなく、許可要件を満たす必要があります。主に次の項目を確認します。
- 経営業務を適正に行う能力があるか、経営経験を証明できるか
- 営業所ごとに、追加・取得する業種に対応する技術者を専任で置けるか
- 請負契約について誠実性があり、欠格要件に該当しないか
- 一般建設業または特定建設業に必要な財産的基礎を満たすか
- 営業所の使用権原、独立性、設備、常勤性を資料で説明できるか
必要書類は、建設業許可申請書、営業所一覧、工事経歴書、財務諸表、納税証明書、経営経験の証明資料、技術者の資格証や実務経験証明、営業所の確認資料などです。経験年数だけでなく、誰が、どの業種の工事を、どの立場で行ったかを契約書・請求書・入金記録などでつなげて説明します。
東京都で建設業許可を取得する流れ
- 受注予定の工事を契約書・見積書単位で整理し、許可の要否と業種を判定する。
- 東京都知事許可か国土交通大臣許可か、一般か特定かを確認する。
- 経営経験、営業所技術者等、財産的基礎、営業所の資料を集める。
- 不足資料や過去の変更届・決算報告の未提出を確認し、補完方法を検討する。
- 最新の東京都の手引に沿って申請書を作成し、許可通知までの受注計画を調整する。
許可取得には、申請書の作成だけでなく、経験や常勤性を証明する資料の整合性確認が必要です。受注先から期限を指定されている場合は、申請前に資料診断を行い、取得可能性と現実的なスケジュールを確認しましょう。
許可が必要か迷う段階で相談できます
当事務所では、工事内容、請負金額、元請・下請の立場、現在の許可業種、受注予定日を確認し、許可の要否を整理します。無許可営業が疑われる過去の契約がある場合も、事実関係を整理したうえで、今後の適切な対応を検討します。
無料の建設業許可・要件チェックで概要を確認し、具体的な工事資料がある方は相談・見積依頼フォームからお問い合わせください。初回相談は無料です。
よくある質問
Q. 500万円未満の工事だけなら建設業許可は不要ですか?
A. 建築一式以外の工事では、税込の請負代金が500万円未満であるなど、軽微な工事の要件を満たす場合は不要となることがあります。ただし、工事の分割や業種判定など、金額以外の確認も必要です。
Q. 建設業許可がないと、すぐ逮捕されますか?
A. 個別の事実関係によりますが、許可が必要な工事を無許可で営業すると刑事罰や行政上の指導・監督の対象になり得ます。契約書、金額、工事内容を確認し、今後の受注を適法な状態に整えることが重要です。
Q. 許可申請中なら工事を始められますか?
A. 申請中であることは許可取得済みを意味しません。許可前に請け負えるかは、軽微な工事の例外や工事内容を個別に確認してください。元請の説明だけで判断せず、契約前に行政書士や許可行政庁へ相談しましょう。
Q. 無許可で受けた過去の工事がある場合、許可申請できますか?
A. 過去の工事内容、金額、契約日、行政処分・刑事処分の有無などを確認する必要があります。事実を隠して申請するのではなく、資料を整理してから、許可要件と欠格要件への影響を事前に確認してください。
建設業許可の取得相談は東京都の特定行政書士へ
建設業許可がない状態で新しい工事の相談を受けたときは、「500万円未満か」だけでなく、税込金額、工事業種、契約の分け方、元請・下請の立場、許可前の着工時期を確認します。リスクを正しく把握し、必要なら許可取得の準備へ早めに切り替えることが、受注機会と事業の信用を守る近道です。
参考:国土交通省「建設業の許可とは」、国土交通省「許可の要件」、e-Gov法令検索「建設業法」、国土交通省「建設業法違反事例」。法令・行政庁の運用は更新されるため、申請・契約時点の最新情報をご確認ください。
