「個人事業主でも建設業許可を取れますか」「今は一人親方ですが、許可を取るなら法人化した方がよいですか」――建設業許可の相談でよくある質問です。結論からいうと、個人事業主でも建設業許可は取得できます。ただし、個人で取るか、法人成りしてから取るかで、確認する資料、将来の承継、営業のしやすさが変わります。

この記事の結論

  • 個人事業主も、法人と同じく建設業許可の要件を満たせば申請できます。
  • 個人の場合は、本人または支配人の経営経験、営業所技術者の資格・実務経験、営業所の実態、財産的基礎などを確認します。
  • 法人成りしても、個人名義の許可が自動的に法人へ移るわけではありません。
  • 許可取得前に、工事内容・業種・将来の法人化をまとめて設計すると、再申請や空白期間のリスクを減らせます。

建設業許可は個人事業主でも取得できる

建設工事の完成を請け負う営業は、軽微な建設工事だけを請け負う場合を除き、建設業法に基づく許可が必要です。申請者が法人であることは要件ではありません。個人事業主の氏名・住所を申請者として、都道府県知事または国土交通大臣に申請します。

ただし、「個人だから要件が簡単」という意味ではありません。建設業許可では、経営業務を適正に行う能力、営業所技術者の配置、誠実性、財産的基礎などを確認します。個人の場合、経営経験の確認対象が本人に集中するため、過去の確定申告書や請負契約書、注文書、入金記録などの証明資料を早めに集めることが大切です。

500万円未満でも許可を検討する理由

「500万円未満の工事なら許可はいらない」と聞いて、許可取得を先送りする方もいます。軽微な建設工事だけを請け負う場合に許可が不要となる例外はありますが、判断は工事の種類や請負金額の計算方法を含めて行います。材料費を別契約にしたり、同じ工事を不自然に分割したりして金額を下げる方法は、適切な対応とはいえません。

また、元請会社の登録条件、金融機関の融資、公共工事への参加、将来の採用や法人化を考えると、今は軽微な工事だけでも許可を準備するメリットがあります。建設業許可の有無は、受注できる金額だけでなく、取引先から見た事業の継続性や書類管理の成熟度にも関わります。現在の売上だけでなく、今後どの工事を受注したいかで判断しましょう。

個人事業主の建設業許可・6つの確認ポイント

1. 取得する業種を工事内容から決める

建設業許可は「建設業」という一つの許可ではなく、土木一式、建築一式、電気、管、内装仕上、消防施設など29業種に分かれています。実際に請け負う工事の目的・施工方法・専門性から業種を判定します。屋内配線なら電気工事、給排水や空調配管なら管工事、火災報知設備や消火設備の設置なら消防施設工事業が関係することがありますが、名称だけで決めるのは危険です。見積書や契約書の工事項目を確認して判断します。

2. 経営業務の管理責任者等を確認する

個人事業主では、本人または支配人が建設業の経営に関する所定の経験を満たすかが中心になります。経験年数だけでなく、どの業種の工事を、どの立場で、どの期間経営していたかを資料で示す必要があります。法人の役員経験と個人事業主としての経験では、確認資料の組み合わせが異なる場合があります。

3. 営業所技術者の資格・実務経験を確認する

許可を受ける業種ごとに、営業所に常勤する技術者が必要です。国家資格、指定学科の卒業、一定年数の実務経験など、業種と一般・特定の区分に応じて要件が変わります。本人が経営業務の要件と営業所技術者の要件を兼ねられるケースもありますが、常勤性と職務内容の整理が必要です。

4. 営業所の実態を準備する

自宅を営業所にすることは一律に禁止されていませんが、事業所としての独立性、使用権原、電話・机などの設備、他の事業との区分を確認します。賃貸物件では、契約上の使用目的や貸主の承諾が問題になることがあります。バーチャルオフィスだけでは営業所の実態を説明できない可能性が高いため、契約前に確認しましょう。

5. 財産的基礎と納税を確認する

一般建設業では、自己資本または資金調達能力など、請負業務を安定して行える財産的基礎が確認されます。個人の場合は、所得税の納税証明書や預金残高、貸借対照表などの資料を使って確認することがあります。赤字や借入があるだけで直ちに不許可になるとは限りませんが、申請時点の資料で説明できる状態にしておくことが重要です。

6. 欠格要件・誠実性を確認する

一定の刑罰、許可取消し、暴力団関係などの欠格要件に該当すると許可を受けられません。本人だけでなく、法定代理人や支配人など確認対象が広がる場合もあります。過去の処分や行政手続がある場合は、隠さず事前相談で確認するのが安全です。

個人事業主の必要書類は「経験を証明する資料」が難所

東京都の建設業許可申請では、申請書本体だけでなく、申請者の属性、営業所、経営経験、技術者、財産的基礎を裏付ける書類を準備します。代表的なものは次のとおりです。

  • 建設業許可申請書、営業所一覧、工事経歴・役員等の各種書類
  • 個人事業主の確定申告書、所得税の納税証明書、住民票等
  • 経営業務の管理責任者等の経験を示す確定申告書、契約書、注文書、請求書、入金記録等
  • 営業所技術者の資格証、卒業証明書、実務経験証明書、常勤性を示す資料
  • 営業所の賃貸借契約書、写真、平面図、使用権原を示す資料
  • 預金残高証明書、貸借対照表、納税証明書など財産的基礎を示す資料

書類が一枚足りないというより、「その経験が本当に許可申請者の経験なのか」「申請する業種の経験なのか」を一連の資料で説明できるかが重要です。古い確定申告書しかない、元請との契約書が残っていない、屋号と本名の関係がわからない、といった場合でも、代替資料を含めて立証方法を検討できることがあります。

個人事業主の費用と期間の考え方

費用は、行政庁へ納める法定手数料、証明書の取得実費、行政書士報酬に分けて考えます。東京都知事許可の新規申請では、法定手数料は申請区分により定められており、一般的な新規申請は9万円が基本です。業種数、一般・特定、大臣・知事の区分、証明資料の難しさによって、報酬や準備期間は変わります。正確な金額は、東京都の建設業許可料金と、個別の資料確認を踏まえて見積もります。

準備期間を短くするポイントは、申請書を書く前に要件確認を終えることです。工事内容の判定、経営経験、技術者、営業所、財産的基礎の順で資料を確認し、不足資料を早期に特定します。申請後の審査期間だけでなく、証明資料の収集に時間がかかることを前提に計画してください。

法人成りすると個人の許可はどうなる?

個人事業主が株式会社などを設立して事業を続ける場合、個人名義の建設業許可が法人名義へ自動的に変更されることはありません。法人は個人とは別の申請者です。そのため、何も準備せずに個人の屋号から法人名義へ契約主体を切り替えると、許可のない法人が工事を請け負う状態になり得ます。

選択肢は大きく二つです。一つは、個人の許可を廃業し、法人として新規申請する方法です。もう一つは、建設業法上の事業承継の事前認可制度を検討する方法です。事前認可が適切に行われれば、許可の空白期間を避けられる可能性がありますが、承継の対象、許可要件、全業種の扱い、認可のタイミングを行政庁へ事前に確認しなければなりません。

法人成りの注意点
会社設立日、譲渡契約、事前認可申請、個人の廃業届、法人の営業開始日を先に並べて確認します。個人の許可を一部だけ法人へ移したい場合や、許可を受けていない業種を追加したい場合は、別の申請が必要になることがあります。設立登記を先に済ませる前に、許可行政庁と承継方法を確認してください。

個人で取るか、法人化してから取るかの判断基準

検討項目個人事業主で取得法人化して取得
すぐに許可が必要現在の事業実態を使って準備しやすい設立・営業所・法人資料の準備が必要
将来の承継法人成り時に承継・新規申請の設計が必要役員変更や株式・事業承継を見据えやすい
公共工事・取引先対応取引先の要望によっては個別説明が必要法人取引を前提とする発注者に対応しやすい
社会保険・税務個人事業主としての制度で判断法人化に伴う税務・社会保険の検討が必要

「個人の方が簡単」「法人の方が必ず有利」とは言い切れません。現在の受注予定、元請から求められている許可名義、従業員の採用、後継者、売上規模、税務・社会保険をまとめて判断します。建設業許可だけでなく、経営事項審査や入札参加資格を視野に入れる場合は、早めに法人化の時期を決めると手戻りが少なくなります。

東京都で申請する前に確認したい準備の順番

  1. 請け負う工事を見積書・契約書単位で整理し、必要業種を仮決定する。
  2. 本人の経営経験と技術者の資格・実務経験を、年ごとに一覧化する。
  3. 営業所の使用権原、独立性、写真、設備を確認する。
  4. 個人で申請するか、法人成り後に申請するかを決める。
  5. 不足資料と代替資料を洗い出し、東京都の最新手引に沿って申請書を作成する。

国土交通省も、許可要件として経営業務の管理、営業所技術者、誠実性、財産的基礎などを案内しています。東京都の取扱いや最新様式は更新されることがあるため、申請直前に関東地方整備局の建設業許可案内や東京都の手引を確認してください。

要件確認を先に行うと、受任後の手戻りを減らせます

当事務所では、個人事業主の建設業許可について、工事内容の業種判定、経営経験・技術者の証明資料、営業所、法人成りの時期を一緒に整理しています。資料が揃っていない段階でも、現在ある書類から取得可能性と次に集めるべき資料を確認できます。

無料の建設業許可・要件チェックで概要を確認した後、具体的な資料をお持ちの方は相談・見積依頼フォームからお問い合わせください。初回相談は無料です。

よくある質問

Q. 一人親方でも建設業許可を取得できますか?

A. 可能です。個人事業主として、経営経験、営業所技術者、営業所、財産的基礎などの要件を満たす必要があります。従業員がいないことだけで不許可になるわけではありません。

Q. 法人成りしたら個人の許可をそのまま使えますか?

A. そのまま使うことはできません。法人は別の申請者となるため、新規申請または事業承継の事前認可を検討します。法人名義で契約を開始する前に、許可行政庁へ確認してください。

Q. 個人事業主は建設業許可の費用が安くなりますか?

A. 法定手数料は申請区分で決まり、個人だから一律に安くなるわけではありません。証明資料の収集量や業種数で行政書士報酬が変わるため、資料確認後の見積りが必要です。

建設業許可の個人申請・法人成り相談は東京都の行政書士へ

個人事業主の建設業許可は、申請書を埋めるだけではなく、「誰が、どの業種を、どの資料で証明するか」を先に設計する手続です。法人成りの予定がある場合は、許可取得後ではなく、会社設立前に承継や新規申請の順番を確認することで、受注機会の損失や許可の空白を防ぎやすくなります。

相談前に用意すると判断が早い資料

正式な申請書類がすべて揃っていなくても、次の資料があると許可取得の可能性を判断しやすくなります。個人事業主の方は、資料を年度別のフォルダに分け、工事名・発注者・請負金額・契約日・入金日がわかるように整理してください。

  • 過去5~10年分の確定申告書、青色申告決算書または収支内訳書
  • 代表的な工事の契約書、注文書、請求書、通帳の入金記録
  • 取得したい業種と、実際に行う工事の見積書・仕様書
  • 技術者の資格証、卒業証明、職歴・実務経験がわかる資料
  • 営業所の所在地、賃貸借契約書、室内写真、法人化の予定時期

資料が不足している場合でも、すぐに申請を諦める必要はありません。行政庁が確認するポイントに沿って、別の公的資料や取引記録で補えるかを検討します。一方で、根拠が弱いまま申請を急ぐと、追加補正や不許可リスクにつながります。受注前、会社設立前、営業所の賃貸借契約前に一度確認するのが効率的です。

個人事業主の建設業許可・法人成りを無料相談
工事内容、経営経験、技術者、営業所、法人化の時期を確認して、取得までの道筋と必要資料を整理します。

参考:国土交通省「建設業の許可とは」国土交通省「許可の要件」国土交通省「許可申請の手続き」。法令・東京都の運用は更新されるため、申請時点の最新手引をご確認ください。